■戦争は贅沢だ
Uボートってドイツの映画を見たことあるかい?
「なんか薄暗い潜水艦の中でひたすら暗い話が続くやつ?」
それだ。
まあ第二次大戦の潜水艦戦、というと、どうしてもあのイメージが付きまとうね。
「そうかあ?」
毎日食事はジャガイモ、暗くて狭い艦内、風呂なんてまちがってもない
服なんて何ヶ月も着たまんまだ。
「まあ、そうなんだろうねえ」
というわけで、パンパニトの船内をもう一度チェックしてみよう。
「はあ」

「なんだこれ?洗面所」
いや、洗濯室だ。
「洗濯室?マジで?狭くてしかたない潜水艦の中だろう?」
マジでマジで。
奥の丸いフタのが電気洗濯機。上のはローラー式脱水装置。
「うへー」
日本じゃ電気洗濯機なんて普及したのが戦後の昭和30年代だぜ。
が、アメリカでは戦争中から潜水艦にすら積んであったわけだ。
「ほへー」
この船は戦争直後にモスボール保存されてしまってたから
間違いなく、第二次大戦当時の装備だぜ。
まあ、真水は貴重品だったので、毎日洗濯、とはいかないだろうが、
少なくとも、一度航海に出たら、最後まで着たきりスズメというわけではなかった。
「たいしたもんだね」
たいしたもんだよ。
戦争に直接関係しない部分の充実、というのは
その軍隊の余力の表れに他ならないから、これはほんとに驚いた。

「ええと、これは?」
シャワー室。
「シャワー浴びれたんだ!」
浴びれたんだよ。戦争中に。潜水艦で(笑)。
「なんか潜水艦勤務ってと髭ぼうぼうの垢まみれ、って印象だったけど」
まあ、基本的には間違ってない。
実際、一般の水兵は10日一度しか浴びれなかった。
それでも、無いよりはるかにましだし、
士官兵はもっと頻繁に使用でき、
一種のストレス解消用の役目もあったらしい。
「すごいねえ」
いや、ほんとすごいんだよ。
この時代にこんな潜水艦が、132隻も量産されてるんだよ。
「…絶句だねえ」
こんな潜水艦と戦争する気になるかい?
「やだねえ。命を懸ける相手がこんな余裕しゃくしゃくじゃあ」
しかも、まだこれは序の口なんだ。
「マジで?」
マジでマジで。

「これは?」
食堂の横にあるキッチン。
「…なあ」
気がついたかい?
手間にあるのは電動攪拌機。
真ん中あたりに見えるのは多分電機式のオーブンレンジ。
その上は鉄板プレートになっている。
さらに奥にあるのは、自動皿洗い機だ。
「…いやはや。軍隊の船のキッチンだろ」
しかも手狭な潜水艦のだ。
「自動皿洗い機なんて、日本じゃまだない家庭のほうが多いだろ」
かもね。それが戦争中の潜水艦にある。
で、この写真ではわからないが、実は床下には電気冷蔵庫が入っていて、
出港時には新鮮な野菜を積み込んでいた。
「…Uボートの映画じゃみんなジャガイモかじってたぜ」
こういうのが戦争に勝つ国、ってことさ。
「勝てっこないねえ、こんな国に」
しかも、まだあるんだよ(笑)。
「まだあるんだ…」
NEXT