■銃器ファイナル

最後はそれ以外の国の機関銃なども見て置きましょう。

先に見たようにアメリカはブローニングのM1919機関銃を基に、
.30口径7.62mmと.50口径12.7mmのM2航空機関銃を作りました。
でもって、これは正規ライセンスでいくつもの国で採用され、
さらに日本のように無断でコピーしちゃう国が他にもあったりして、
第二次大戦の空はブローニングで溢れてる、という状況になります。
最初はそんな世界のブローニングを見て行きませう。

イタリアの12.7mm ブレダ SAFAT 1937型(上)
ベルギーの.303口径 7.7mm ブローニング N1939(中)
アメリカ製ですがイギリス向けの .303口径 7.7mm ブローニング Mk.II(下)



12.7mm ブレダ SAFAT機関銃(上)は
イタリアの主力航空機関銃の一つで、航空宇宙本館でみた
M.C.202に積まれていたのもこれです。
でもってこれも見た目どおり(笑)ブローニング機関銃のコピーですが、
M2 12.7mmではなく、元祖M1919機関銃の方を参考にしてるようですね。

お次はベルギーの.303口径 7.7mm ブローニング N1939(中)。
ベルギー軍が.303口径のブローニングを見て採用を決定、
より自国向けに改修して、FNH社が国内生産したのがこれらしいです。
そもそもオリジナルの.30口径 7.62mm M2航空機関銃も、
そのベルギーのFNH社がM1919機関銃から改造に関わっていたとされますから、
これの改修設計から生産までも、おそらくFNH社の手によるんじゃないでしょうか。
すぐ下のがオリジナルのM2とほぼ同じサイズのイギリス向けMk.IIですから、
これと比べるとかなり小型化(軽量化)がなされてるのがわかります。

ちなみにドイツに占領された後も生産は続いてたそうですが、
それらが何に搭載されていたのかは、不明。

最後、.303口径 7.7mm ブローニング Mk.II(下)は先に見た
アメリカの.30口径7.62mm M2航空機関銃を、
イギリスの7.7mm弾に合わて作り直したもの。
これの先端に付いてるラッパ状のモノは、消炎器(flash suppressor/flash hider)で、
まぶしい発射光でパイロットの視界を幻惑しないようにするため、
発射光を低減させる装置です。

ちなみに映画「紅の豚」に登場する主人公のライバル、
カーチスが機体に積んでたブローニングはアメリカ用の7.62mmではなく、
どうもこっちのイギリス用7.7mmのような感じがしますね。

で、これが第二次大戦初期のイギリス主力航空機関銃といえる存在となり、
ハリケーン、スピットファイア、さらには爆撃機の銃座にも使われています。
が、これもやがて威力不足が問題となり、徐々に20mm機関砲に置き換えられます。
ただし、爆撃機の銃座などは最後までこれだったようです。



お次はフランスの7.5mm シャテルロー(chatellerault) 1931型(上) と
オーストリア・ハンガリー帝国の8mm シュワーツローゼ(schwarzlose) MG 1912型。

7.5mm シャテルロー(chatellerault) 1931型(上)は
元々はフランス陸軍向けの機関銃として1926年に採用された機関銃で、
これを1934年に航空用機関銃にしたもの、と解説には書かれてました。
じゃあ1931って数字はどこから出てきたんだ(笑)…?

おそらくMACと呼ばれる一連の航空機関銃シリーズの一つだと思いますが、
それ以上はよくわかりませぬ…。
とりあえず、7.5mmという口径、そして横にドラム式マガジンをくっつける、
というのはフランス式機関銃の特徴です。

その下、オーストリア・ハンガリー帝国の
8mm シュワーツローゼ(schwarzlose) MG 1912型は
その名の通り、第一次大戦時代の銃で、設計したのはドイツ人らしいです。
盛大な消炎器が特徴的で、その後ろの銃身の筒部は水冷のままにも見えますが、
資料を見る限り、一応、空冷になっていたとのこと。

**追記**
掲示板でいただいた情報だと、これは機関銃としては珍しい、
ブローバック機構のものなのだとか。
そのため銃身が短くされ、燃焼が終わる前に銃弾が飛び出してしまう結果、
派手な発射炎が出るため、こういった消炎器がついたらしいです。


ただし航空用機銃としては、プロペラ同調装置との相性が悪く、
エンジンを特定の回転数にしないと発射できなかったそうな。
なのでオーストリア・ハンガリー帝国の第一次大戦時の戦闘機には、
射撃用のエンジン回転数計(タコメーター)があり、
これでエンジン回転数を調整しながら戦ってたのだとか。
…ストレス貯まりそうだなあ、それ…。


さて、これにて機関銃編最後となる次の3丁は

ソ連製唯一の展示品、12.7mm ベリジーナ(Березина/発音は適当…) UB(上)
フランスの8mm オチキス M1914(中)
イギリスの.303口径 7.7mm オチキス 携帯用機関銃 Mk.I(下)



ソ連の 12.7mm UB ベリジーナ(上)は
第二次大戦期のソ連空軍主力機関銃となったもの。

最初にも書きましたが、ソ連は基本的に
第二次大戦前からアメリカ式の口径を採用していました。
この12.7mm航空機関銃はほぼ自主開発のものらしく、
ドイツがワーッと攻めてくる独ソ戦開戦直前に完成していたようです。

ちなみに、主翼搭載型がUB-K、機首でプロペラ同調させるのがUB-S、
そして爆撃機の銃座などに積まれるのがUB-Tとあらゆる機銃を
これ一つで統一しており、ソ連もアメリカ同様、機能的な兵器採用となっています。
ちなみに展示のものはUB-Sらしいです。

お次はオチキス(Hotchkiss)と言っても文房具ではなく機関銃の方、
フランスの8mm オチキス M1914型(中)。

フランスの機関銃もよくわからんのですが、
これも基は陸上用の口径6.5mm機関銃というのがあり、
それが威力不足で、後のフランス標準8mmに拡大され、
さらにそれを航空機用にしたのがこれ、という感じらしいです。
ただしブローニングのように航空機関銃にするにあたって
30%近い軽量化を実現、といったような面は全く無かったそうな。
よって、航空機用としては重すぎてデカ過ぎ、となり
それほど採用が無く終わってるらしいです。

最後は第一次大戦期のオチキス携帯用機関銃 を
イギリスが自国の.303口径7.7mmに改造して採用したMK.I 機関銃。

携帯用の名からわかるように本来はこれも地上用なんですが、
比較的軽い、という事で航空用に採用されたみたいです。
ただし、十分な航空用機関銃を持っていたはずのイギリスが、
一体どこでこれを使ったのかイマイチよくわかりませぬ…。


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