■撃ちしてゲルマン

さて、お次はドイツの航空機関銃編に入りましょう。
まずは第一次大戦期のものから。

手前が7.92mmマキシム L.MG08/15型、奥が7.92mmパラベラム L.MG14。



ただし、歴代旅行記をご覧になった方は既にご存知のように、
マキシムはイギリスの兵器会社ですから、ドイツの機関銃を作るわけがない。

これはドイツで量産されたマキシム機関銃で、いわゆるシュパンダウ機関銃ですね。
一応、キチンとしたライセンスを買っての生産だったようですが、
どうも勝手に改良型を造りまくったようで、まず軽量化されたMG08/15が造られ、
さらに航空機に搭載するため、当時は水冷が普通だった銃身を空冷化した
この“L”.MG08/15が造られたようです。
でもって、この機関銃はプロペラ同調機銃としても使えたため、
第一次大戦時におけるドイツの多くの機体に搭載されています。

ちなみにドイツ機関銃の名前のアタマに
“L”が付くと空冷(luftgekühlte)を意味します。
空冷にしたのはフォッカー社が自社の機体に積もうとしたためで、
常に高速で動く航空機なら空冷で冷やせるはず、と考えたみたいですね。
で、それまでツェッペリン飛行船に搭載されてた水冷型のMG08/15を
軽くて扱いが簡単な空冷に改造したのが、この機関銃だとか。

で、その上の7.92mm パラベラムMG14は、
そのマキシム機関銃を基により軽量型の機関銃として造られたもので、
大幅な改良が加えられて1916年から導入が始まってます。
というか、普通に見る限り完全に別物でしょう、これ。
この機関銃は基本は後部銃座用、旋回銃として使われたみたいです。

で、以下余談(笑)。
宮崎駿監督の「紅の豚」の主人公の愛機につまれていた機関銃ですが、
モデルグラフィクスに掲載された原作での説明だと、
シュパンダウ機関銃と書かれてますから、写真の下の機関銃ですね。
ただし、アニメ版を見ると微妙に形状が異なるので、断言はしません(笑)。
もっともこの写真のは銃座用、手で撃つタイプのものなので、
後部に段差があったりして機内搭載用のものとは形が異なります。




お次は、第二次大戦期のドイツの機関銃を。
まずは、ラインメタル社謹製の機関銃軍団。
手前が7.92mmのMG15、同じく中央がMG17、一番奥は13mmのMG131です。

MG15(下)は後部銃座などの旋回銃であり、
MG17(中)が戦闘機などで機首や主翼に内蔵するタイプ、というのが
7.92mm機銃における住み分けだったようです。

ところがイヤンてなくらないタフなアメリカ機を相手だと7.92mmのMG17では
破壊力不足とされ、その後継として開発されたのが13mmのMG131(上)です。
MG17(中)はMe109&110、さらにはFw190などに搭載され、
大戦初期のドイツ戦闘機の主力機関銃となっていたのですが、
大戦中盤以降、13mm機関銃MG131(上)に置き換えられて行く事になったのでした。



お次は銃座用の新型機関銃、7.92mm マウザーMG 81(Z)。
上写真のMG15(下)の後継機銃ですね。

この機関銃は単体の場合MG81、箱の中のように
2丁で1セットとした場合はMG81Zと名前が変わります。
(Zはドイツ語の双子Zwillingの頭文字)
ちなみに、この展示の箱もオリジナルの輸送用梱包箱だそうな。

最初から2門1セットで使う設計になっていた唯一のドイツの機関銃だそうで、
これによって秒間3200発の発射速度になったとか。
これは先に見たミニガンより2割少ないだけ、という機関銃としては、
かなりの発射速度のようです。

ただし、もともとは当時の歩兵用機関銃、MG34からの派生型だそうで、
さすがに1940年以降のヨーロッパの空で戦うには少々貧弱な印象があります…。
それで2丁セットにしたんでしょうが、それでも
よほど接近しないと致命傷を与える事は無理でしょう。
そもそもMG81単体での採用例がほとんど見つからないので、
やはり火力が貧弱という問題があり、その対策として2丁化したんじゃないかと。

でもって、ここでまたも余談。
Mauzerの日本語表記は二種類あり、
マウザー、モーゼルとまるで違うものになってます。

英語読みではマウザーでいいとして、ドイツ語読みだとマーツァ、
フランス語読みだとモージーといった感じで、モーゼルなる読みが
どこから出てきたのか、どうもよくわかりません(笑)。
とりあえず、今までの記事ではモーゼルと表記して来ましたが、
今回からは英語でもドイツ語でも通じる、マウザーに変更します。
(古発音(いわゆる舞台ドイツ語)に近いとの指摘もあり、ひょっとして鴎外が犯人か?)


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