■そして最初の大戦へ



先ほどの写真で、下側に写っていたのがこの機体、
フォウラー・ゲイジ複葉機。
これまた、見た事も聞いたこともない機体ですが、
複葉機、までが正式な名前らしいです。

これは1912年製作のゲイジさんのお手製機だとか。
彼は飛行機がまだ珍しかった当時、この機体を持って各地を回り、
巡業展示飛行をしていた人物らしいです。
この時代にはこういった職業飛行家の人が結構いたみたいですね。

ゲイジさんはカリフォルニアを中心に活動してたようですが、
後にこの機体で、1913年にパナマ横断を成功させてます。

それが何だと思ってしまいますが、これは太平洋から大西洋まで
初めて飛んだ飛行記録になるんだとか。

…微妙な記録だなあ…。




さて、ここからは第一次大戦機の登場です。

時代からズレてしまったハプスブルグ家の崩壊に
なぜか知らぬが(ホントに合理的に説明できない)全ヨーロッパが巻き込まれ、
1914年に第一次世界大戦が始まり、ここで航空機が兵器として投入され始めます。

が、航空機が兵器として恐ろしいのは、
空からの十分な破壊力を持った攻撃が可能な時のみで、
この時代の機体にそれを期待するのは無理です。
あとは偵察、着弾観測ですが、たしかに有効なものの、
あくまで戦術レベルの運用であり、戦略レベルの影響力はまだ持ちません。

なので、この時代の航空機は、ちょっと気の効いたオモチャ、
といったレベルのもので、第二次大戦以降の戦争の感覚で
この時代の空の戦いを捉えると、根本的に見誤ります。

戦後、地上戦の凄惨さに比べると、なんだか騎士道精神とかあって
妙にカッコいいぜ、という形でこの時代の空の戦いが
大きく伝えられたため(ウーデットが妙な形でこれに貢献してる)、
なんだか当時の大空戦があったように思いますが、
正直、それほどのものではありません。

もっとも航空宇宙本館でも書いたように、すでに都市に対する爆撃は
始まっていましたが、イヤガラセレベル以上のものではなく、
戦争の行方には、全く影響がありませんでした。
そもそもハロルド・ジョージ登場以前の戦略爆撃なんて、
何ら注目すべき理論も運用思想もありません。

よって、私としては全く興味がない時代でして(笑)、
このため以後の説明は極めて簡略となりますから、ご容赦のほどを。

が、この戦争によって航空機は一気に進化するわけで、
そういった意味では極めて重要な出来事だったと言えるでしょう。
この辺りは第二次大戦もそうでして、
この二つの戦争がなければ、航空機はもっと異なる発展をしたはずです。
それがどんなものかは、私にも想像がつきませんが。



まずは一番手、フランスの機体、
1915年から配備が始まったコードン(caudron) のG.4。
ちなみにこれ、フランスの航空宇宙博物館にもありましたね。

ただしスミソニアンのものは、ご覧のように、
羽布までオリジナルで維持されてる貴重な機体となってます。

双発の大型機ですが、分類上は爆撃機と同時に偵察機であり、
さらには戦闘機でもあったようです(笑)。
1915年、まだまだ開戦初頭で、それほど恐ろしい敵戦闘機も居なかったから
こういった任務が可能だったのかもしれません。
さらに操縦が極めて簡単で、連合国側のパイロット養成のための
訓練機としても使われたそうな。

ついでに既に見たロッキードP38のご先祖さまのような構造ですが、
コクピットから尾翼に向けての胴体後部が無いのは、
この前の型、コードンIIIが推進式、エンジンとプロペラが
胴体後ろにある機体だったからです。
エンジンを前向きにしたのに機体構造はそのままだった結果ですが、
なぜそうしたのかは、全く不明です。



お次はドイツのハルバスタッド(Halberstadt)CL.IV(4)。
これまた聞いたこともない機体なんですが、
第一次大戦機では、もっとも優秀な攻撃機だったとされてるそうな。

1918年から西部戦線で使われたとされてますが、詳細は不明。
ただし、夜間戦闘機としても使われた、という説明もあり、
基本性能が優秀だったのでなんにでも使われた、というところでしょうか。

とりあえず、典型的なドイツ迷彩の主翼と、コクピットの上のラジエターに注目。
あんなところで冷えるのか、と思っていまいますが、
特に問題にはならなかったようです。
手前のラジエターにはフタがされてますが、地上駐機時のものか、
冬場の温度調整用のものか。

ちなみに20年くらい前の水冷50ccバイクなどは冬場は冷えすぎちゃうので、
ラジエターの半分を紙で(笑)覆って走っていたんですよ…。

ついでに胴体上の木の輪っかは機銃を取り付ける場所で、
二人乗りのこの機体ではあの後部座席に銃手が乗っていたのでした。



上からぶら下げられていたフランスのニューポール 28C.1。 
胴体のシルクハットから分かるかと思いますが、
これはアメリカ軍が使用した機体です。

アメリカが第一次大戦に参戦した段階では、すでに傑作機といっていい
スパッドS.VII(7)とその後継機XIII(13)が主力機となっており、
アメリカ陸軍もXIII(13)を導入する予定でした。
その機体は、航空宇宙本館で見ましたね。
ただし、これらが導入されたのはアメリカ参戦後、
しばらく経ってからでした。

当初はスパッドの数が揃わなかったのです。
よって、フランスがその引渡しを拒否、
当時余ってしまっていた、このニューポール28C.1を
アメリカ陸軍に押し付けてしまったようです。
この結果、これがアメリカが始めて本格運用した戦闘機となりました。

取り立てて優れた機体ではないようですが、クセが無い操縦性から
終戦後もアメリカに持ち帰って訓練などに運用されたそうな。
さらに一部は海軍にゆずられ、空母着艦試験などに使われたとされます。


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