■落穂ひろい1



こちらはエアバスA-320のホンモノのフライトシミュレータ。
ただし、ガラス張りの外から見るだけで、触る事はできません。

パイロットの離着陸訓練に使う装置で、写真では判りませんが、
ワシントンD.C.のロナルド・レーガン空港への着陸シーンが流れてました。
A-320は電子制御の本格的なフライ・バイ・ワイアの旅客機で、
F-16のようにコクピットの横にある操縦桿も特徴の一つです。

ちなみによく見ると座席の横に旅行カバンが二つ並んでるんですが、
訓練時にもこんなカバンを持ち込むもんなのでしょうか…。



こちらは年代の表記がなかったのですが、
どうも1950〜60年代のものらしい航空保険の自動販売機。

現在も成田や羽田には出発エリアに旅行保険の自販機があります。
こんなの日本以外では見たこと無いなあ、と思ってましたし、
実際、外人さんに、これってクレジットカードでお金おろせるの?
とATMと勘違いしてる質問をされた事があります。

が、どうもかつてはアメリカにも似たような機械があったんですね。
ただしこれ、あくまで航空保険、
飛行機が墜落したら保険が降りるよ、というものらしく、
旅行全般を保証する旅行保険とは別物みたいです。
1980年代以前、パカスカ旅客機が墜落してた時代の遺物なのかも知れません。

ちなみに掛け金25セントごとに最大7500ドルとかなり率のいい保険でしたが、
完全に掛け捨てですから、年に一機程度の墜落なら
保険会社も十分にやっていけたんでしょうか。



こちらのカット模型は、かつてのパンアメリカン航空の大型飛行艇、
太平洋航路に使われたマーティンM-130、通称クリッパーです。

クリッパー(Clipper)は本来、カティー・サーク号などに代表される
快速帆船のことですが、パンナムでは自社の旅客用飛行艇を
その名で呼んでおりました。
そりゃ空飛んじゃうんだから、船としては快速でしょう。

太平洋航路を飛んだ長距離飛行艇M-130は3機製造されて、
それぞれに名前があるのですが、
1号機のチャイナ・クリッパーが一番有名でしょうか。
パンナムの大型飛行艇は、なんでもかんでも
チャイナ・クリッパーと呼ばれてしまってるような感じですし。

ただし、チャイナ・クリッパーと言っても中国とは関係なく(笑)、
1936年から第二次大戦前まで、アメリカの西海岸、サンフランシスコから植民地である、
フィリピンのマニラまでを結んでいた機体でした。

ちなみに速度は出なかったM-130では(ヘタをすると新幹線より遅い)
到着まで5日前後かかったようです。

が、この模型の内部にベッドが無いな、と思ったら、
太平洋横断のクリッパーはミッドウェイ、ウェーキ、ハワイ、グアムなどに立ち寄り、
乗客は上陸してそこのホテルに宿泊したんだそうな。
…相当、高級な旅になりそうな感じですね。



最後はエンジン類の紹介もれを拾っておきます。

まずはプラット&ホイットニー R1830ツインワスプエンジン。
1930年代を代表する傑作エンジンですが、これは軍用の1830-92で、
DC-3の軍用型、C-47に搭載されていたものだとか。
当初は800馬力だったこのエンジンも最終的には1200馬力出ていたとのこと。

ただし、プロペラ部分、中央の可変ピッチ機構部とプロペラブレードは
上で見たM-130チャイナ・クリッパーで使われていたものだそうな。

ついでにR-1830ツインワスプの生産数は17万3000台に上るそうで、
これはあらゆる航空レシプロ・エンジン中最大なんだとか。



せっかくなのであまり見る事がない後ろから。
このR-1830、まともな過給器がついてないのですが、
元からそうなのか、展示にあたって取り外されてしまったのかはわかりませぬ。
本来は過給がある場所に二つチョコンと飛び出してるのは発電機でしょうか。

R-1830はシリンダーが一列7気筒ずつのドーナツ型に並べられて、
それが前後2段に重ねられてるゆえに“ツイン”ワスプらしいのですが、
オリジナルのワスプは9気筒で一列ですから、
厳密には“ツイン”のワスプではないような…。



お次は1920年代を代表するアメリカのエンジン。

まず左はライト J-5 ワールウィンドエンジン。
これは例のリンドバーグのスピリット オブ セントルイス号で
使われた事でも知られるエンジンです。

彼の自伝を読むと、このエンジンがどうしても欲しかった、
という様な事を書いてますから、
当時としては最先端のエンジンだったのでしょう。

ちなみにR-790という型番もあり、
こちらは1925年ごろ、国が割り当てたものだとされます。
どうもアメリカの空冷エンジンのRナンバーは
メーカーが付けるのではなく、
NASMか戦争省あたりがつけてたんでしょうかね。

ついでにエンジン中央部、減速装置の左右に
飛び出してるように見えるの黒い箱はどうも発電機で、
ここから各気筒のプラグに電線が繋がってます。
そういやプラット&ホイットニーのエンジンですがR-2800も
この辺りに発電機の出っ張りが付いてましたね。

右はそのライバル、プラット&ホイットニーのR-1340 ワスプ エンジン。
いわゆるワスプシリーズの始祖でこれも1925年に完成後、
さまざまな機体に採用されて行きました。

で、これはご覧のように9気筒の一段で単純にワスプ エンジン、
後に2段重ねになったのが(ただし上で書いたように7気筒×2列)
R-1830ツインワスプ エンジンとなり、
それがさらに9気筒×2列の18気筒として今度はホントに(笑)
“ダブル”ワスプのR-2800エンジンになって行くわけです。


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