そんなわけで普天間基地、基地祭の見学開始。当初は霧雨、という感じだったんですが、この後、雨脚は強まって行きます…



日本でもアメリカでも海兵隊の基地に入ったのは初めて、となると見るべきものはまずこれでしょう。
MV-22オズプレイ。空軍向けのCV-22は試験機を空軍博物館で見ましたが、海兵隊のMV-22は初めてです。ただし外見からはその違いはよく判らず。

空中でブレーキを掛けるのは極めて難しいので、巨大なエアブレーキにもなる主翼後部のフラップが目立ちます。というかこれ、二分割されてない、フラップとエルロンが一体化した一種のフラッペロンなんですが、F-16やF-35のように前縁フラップはなく、これでもなんとかなるんでしょうかね。

21世紀におけるアメリカ軍の主力垂直離着陸機、という印象ですが2019年現在までの総生産数は2018年内で空軍、海兵隊、両方合わせても300機前後と、意外に少なかったりします。
ただし、最終的には海兵隊だけで360機、空軍が51機(2019年度中に配備完了)、さらに海軍型(HV-22)が48機の調達を予定してるので460機前後が造られる予定です。ちなみに陸軍は調達予定なし。日本では陸上自衛隊が運用するそうですがね…。
3軍が共通採用してるこの手の機体としてはやや少ない気がしますが、これはその価格がベラボーだからでしょう。

この海兵隊バージョンのMV-22の調達価格(Unit cost)は2015年段階で機約7130万ドル(約75億円)。ちなみに空軍型はもっと高くて9000万ドル(約95億円 恐らく2017年度価格)します。でもって空軍向けの F-35Aの2019年度以降の調達価格(Unit cost)は8920万ドル(約94億円)ですから、実は空軍型CV-22とF-35Aはほぼ同価格、それどころかオズプレイの方がわずかに高額なのです(ただしF-35の2018年以前の初期生産分は9430万ドルなのでこっち方が高いが)。
まあ、軽く狂ってますな(笑)。すなわち戦場でF-35A一機失うのと、CV-22一機失うのとでは経済的な損失はほぼ同じです。というか、こんな高価な機体、怖くて最前線では使えん、という気すらします。
私なら、徹底的にオズプレイを狙いに行って、アメリカ軍の輸送手段を断ちますね。損失機の補給はほぼ不可能ですから。

海兵隊向けの垂直離着陸可能なF-35Bは1155万ドル(約155億円)ですから、さすがにこちらの方が高額で、オズプレイは約半額となっています。それでもベラボーな金額ではあり、戦争は金が掛かるとはいえ、コスト意識の微塵もない今の海兵隊相手の通常戦なら結構簡単に勝てるんじゃないかという気がします。これとF-35Bをセットで買うらしい自衛隊は…ねえ…
(金額の数字は国防省、空軍、海兵隊の各公式サイトによる)



垂直離着陸状態、上に向けて固定されたエンジン部。デカいです。
この状態のまま上空で前進、後退もやるのでプロペラは通常の航空機と違って、ヘリコプターのローターと同じ固定方式を取ってるはずですがすみません、調べるの面倒なのでよく判らんとします。
エンジンポッド後部のケツにはターボプロップエンジンからの排気を流す噴出口があるんですがよく見ると写真のように下向きの穴もありました。

これ、なんらかのノズルとかではなく、ほぼ単なる穴で、上から見ると、ケツの排気口とそのままつながってます。おそらく垂直離陸から水平飛行に移る時、ここからもエンジン排気を流してバランスとってるんじゃないかと思うんですが、ターボシャフトの排気にそこまで推力は無い気もしますので、正確なところは判りません。あえてエネルギーを残して排気してる可能性もありますが、もっとも推力の要る離陸時にそんなことやるかなあ、とも思いますし。

ついでに上の方、プロペラ直下に目のような左右の穴が二つあるの判るでしょうか。垂直離着陸時とポッドを上向きにしたまま飛ぶ時はこの穴が開くので、おそらく真上をむいちゃって十分な空気がエンジンに取り入れられないのを、ここの穴で補ってるんだと思います。ただしキチンとした資料を見た事が無いので詳細は不明(ローターから後方気流で一定の空気は上から押し込まれるからこの程度で十分だと思われるが、さすがにちょっと小さい気もするので冷却用の可能性もあり)。



機首部。ベラボーに高価な機体ですが、意外にセンサー類は少なめ。
向って右端、横に飛び出してる三本のヒゲのような棒は、一番下の斜めになってるのが迎え角センサーで、上の二本は両方ともピトー管。速度計測系を二重系統にするなら、同時に死なないようにもう少し別の場所に置きそうなものですが…。ちなみに全く同じものが反対側にもあるので、ピトー管が4本ある機体となってます。

前輪の前にあるのは海兵隊の機体ではお馴染み、夜間、悪天候飛行時に使う前方視界赤外線カメラ(FLIR)、向って右にある出っ張りと丸い窓は恐らくミサイル追尾レーダーのセンサー。

向って左にある機首横の太い筒は空中給油用の給油口ですね。米軍では垂直離着陸機でも空中給油が前提です。一番燃料を食う離陸時の燃料減らせば、それだけ荷物を余計に積めるわけですから。この点日本の自衛隊は……まあ、この話はまたいずれ。

 
 
尾翼部。
昇降舵(エレベータ)は巨大な一枚板なのに、方向舵(ラダー)はかなり小さく、機体を左右に振る(ヨー)のはプロペラ推力の調整が主なんでしょうか。



中はこんな感じで、機体の大きさと比べると意外に狭いです。
座席数は向かい合わせで20席ほど。ガタイのいい海兵隊の皆さんが座るとかなり狭い上、幅はそれほど無いのでパラシュートに最低限の武装を持ちこむのが限界でしょう。
空中給油が可能なため、数千キロの飛行ができるんですが、ここに何時間も閉じ込められたら、エコノミー症候群になるんじゃないかなあ。あんまり褒められた機体には見えないなあ…

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