日常生活に身近なモノコック構造としては航空爆弾、そしてその元ネタとなった大型砲弾などがあります。
爆弾はご覧のように外殻でのみ形状を維持しており、骨格を持ちません(中心の棒は発火させるための信管関係のもので強度には貢献してない)。完全なモノコック構造ですね。



同じように航空用の増加燃料タンク、増槽なども骨組み無しで形状を維持してますからこれもモノコック。



それらに対して人の造りし骨組み構造の代表となるのが初期の航空機。
これは木の棒を骨組みした箱型の枠を造り、そこに表面を覆う布(羽布)を貼っただけでした。すなわち骨組(Frame/フレーム)構造そのものです。骨組みだけで構造を支え、外皮は一切、その強度維持に貢献していない、すなわち構造的にはモノコックとは正反対のものとなります。



が、中にはこんな機体もありました。ドゥペーデュサン モノコック(Deperdussin Monocoque)。

第一次大戦前の1912年に初飛行した木製レーサー機で、その名の通り木製モノコック構造であり、骨組みを持たない円錐型胴体となっています(おそらくべニアのような合板による)。重い金属の骨組みが無い分軽量化でき、一定の強度のある胴体に単葉という事もあって性能は良く、ゴードン・ベネット杯(Gordon Bennett Trophy)などのレースで優勝、さらに水上機に改造された機体が一部で有名な水上機レース、シュナイダー・トロフィーの第一回優勝機となってます。

が、やはり特殊な構造であり、以後こういった機体が主流になる事はありませんでした。後の第一次世界大戦でも普通に木製骨組みに羽布張りの飛行機が主力となっています。この構造だと、胴体のどこかに亀裂が入ったら、丸ごと造り直すしか修理の方法が無いなど、デメリットも多いですからね。



一方、木製の骨組みと外板を組み合わせた木製セミ・モノコック構造もあり、これは当時、胴体で着水する飛行艇に多く採用されてました。木製の骨組みに羽布張りでは沈んちゃうからですな。
余談ですが「紅の豚」のポルコの愛機、サボイア飛行艇、原作では木製モノコックと書かれてますが、実際は作者本人が描かれた絵でも判るように骨組みを持つセミ・モノコック構造です。



その後、第二次大戦前には航空機の骨組みは金属製に進化するのですが、その上から羽布を張る、という構造はしばらく変わらず、鋼管(のちにジュラルミン管)羽布張りという機体が登場します。が、その寿命はごく短く、第二次大戦前のごく一時期造られただけで、すぐに金属製セミ・モノコック構造に取って代わられるのです。

写真はその過渡期の機体、イギリスのグロスター グラディエーターで、機体前半は金属製セミ・モノコック、準外殻構造で、コクピットから後は金属管に羽布張りとなっています。同じイギリスのホーカー ハリケーンなども同じような構造を持ちます。



その後、第二次大戦直前からは金属の骨組みと同時に強度を担当する金属製の外板によるセミ・モノコックが主流になります。
展示の機体、F-86 では外板がはがされてしまってますが、この上に張られるアルミ合金製の外板も構造を支える部品になっており、よってこの骨組みのまま離陸すれば強度不足で空中分解します(その前に離陸中の加速で折れてしまうと思うが)。
現在飛んでるジェット機のほとんどは金属製セミモノコック構造と考えていいでしょう。



一方、21世紀以降、大型の旅客機にもカーボン複合材などの新素材が採用されるようになり、外殻だけでも強度を維持できるようになってきました。このため、ボーイング787のように最初から新素材で前後の筒状の胴体を造ってしまい、内部に骨組みを持たないモノコック構造の機体も登場しています。

ただし最も強い力が掛かる主翼と主脚がある胴体中央部、そして前脚の付くコクピット周りは、骨組み有りのセミ・モノコック構造となっているので、完全なモノコック構造ではありません。
このモノコック構造は強度と重量面で有利なので今後は新素材によるモノコック構造が増えて行く可能性が高いでしょう。


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