■空軍の幽霊たち



マクダネルダグラスF-4ファントムII G型。

垂直尾翼に薄っすらとWWの文字が見える事から判るように、ベトナム編で見た対ミサイル部隊、
あのワイルドウィーゼル部隊専用に開発されたファントムIIです。
展示の機体は1991年の湾岸戦争時に対空ミサイル狩任務に投入されていた機体だとの事。

海軍から押し付けられた機体として、当初はあまり気に入って無かったアメリカ空軍ですが、
こういった細かい展開も含めて、海軍よりも多くのファントムIIを運用していく事になりました。
このためこの博物館では全部で3機ものファントムIIの展示があります。
ただしなぜかその決定版とも言えるE型は無いんですけども、そのE型の機首下のヴァルカン砲を外し、
対レーダー用電子装置を取り付けたのがこのG型で、160機前後がE型から改造されたようです。

ファントムIIがワイルドウィーゼルに投入されたのは1975年からなのでベトナムでは利用されておらず、
湾岸戦争が初の本格的な実戦デビューでした。
その後、1996年まで運用された後、F-16にその座を譲って退役となったようです。

ちなみにこういった薄いグレーの低視認性、いわゆるロービジ塗装はおそらく空での視認性の低下を狙ったもので、
従来の地上で駐機中に目立たなくする、というのとは対極にある考え方です。
アメリカ空軍の基地にまで飛んでくる敵機は居ない、というのが大前提ですからね。



3機目のファントムIIがこれ、RF-4CファントムII。

Rの字から判るように、こちらは偵察型で、
ベトナム編で見たRF-101の後継機として開発されたジェット戦術偵察機でした。
この偵察型だけでも500機近い生産数となってますので、いかに空軍がファントムIIを活用したかが判るかと。
機首部にカメラを積んでるため固定武装は無しですが、サイドワインダーは搭載可能で、
自衛には十分な武装を積んで飛んで行ける偵察機でもありました。

1965年から部隊配備が始まってるので、RF-101と同じくベトナムの空にも投入されてます。
展示の機体はベトナム戦、さらに湾岸戦争でも実戦投入された機体だとの事。
ちなみに基地は不明ですが日本に配備されていた事もあった機体だそうで、
その総飛行時間は7300時間を超え、これは全RF-4Cの中でも最長となってるようです。



ノースアメリカンAGM-28ハウンドドッグ。

空対地「核弾頭」ミサイルですが、その目標は都市や敵の戦車部隊では無く、
対空ミサイルや対空砲を並べた対空陣地を吹っ飛ばすための豪快な対地“核弾頭”ミサイルです。
1959年、アメリカ空軍が一番狂ってた時代に配備が開始されましたが、
当然、一度も実戦投入されずに終わりました。
ちなみに運用はカーチス ルメイ率いる戦略航空司令部、SACの管轄だったので、
分類上は戦略核兵器になるのか、これ?

ミサイル本体の上に付いてるのはB-52爆撃機の主翼下にぶら下げるための懸架装置。
大型のB-52(専用の改造機が必要)から発射する以上、発射後のまともな回避運動は期待できないため、
最大600マイル、約720qの遠距離から撃ちっぱなしで離脱が可能でした。

…いや、せいぜい数百メートル単位の対空陣地にこの時代の誘導技術で720q先から当てられるの?
と思ってしまう所ですが、核弾頭なら1〜2qくらいの弾着誤差はなんとかなる、
という感じだったんでしょうか…

ちなみにターボジェットエンジンで飛ぶ巡航ミサイルでもあり、
エンジンポッドと同じようなぶら下げ方のため、補助エンジンとしても使えてしまったそうな…
離陸時などは補助動力として活用されたらしいです。妙なミサイルだなあ…
ついでにそこで使ったミサイル内の燃料はB-52の燃料タンクから再度補給が可能だったみたいですね。



ベル ボーイング CV-22Bオズプレイ。

言わずと知れたチルトローター機ですね。
離陸時と着陸時はプロペラを上に向けて垂直飛行し、
飛行時はこれを水平にして前に進む、ヘリコプターと通常の航空機のあいの子のような機体です。
この手の機体では垂直飛行時から水平飛行に移る時、またその逆の時の操縦が極めて難しく
僅かなミスでもすぐに揚力を失って墜落します。
オズプレイも物理的な特性としてその性格は持っているはずで、
これを克服できる操縦システム、フライバイワイアが開発されたから実用化できた機体、とも言えます。

前回来た時も見たはずですが、すっかり忘れており、あれ空軍でも使ってたのか、と驚く。
海兵隊や陸軍なら判りますが、空軍が何に使うんだよ、と思わなくも無くも無く。
輸送型のMV-22ではなく、レーダーなどが強化されたCV-22なのは通常の輸送任務では無く、
特殊部隊の展開を前提にしてるはずで、どうもそういった任務用に導入したようです。

展示の機体は海軍用に造られた試作機だったのを空軍用のCV-22Bを開発するにあたり改造したもの。
空軍で各種試験をした後、この博物館に寄贈されたようです。


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