■100番台の続き

さて、今回も冷戦の館の続きです。早速行ってみましょうか。



全天候型迎撃戦闘機コンベアF-102Aデルタダガー。
F-89スコーピオンの迷走がまだ続いてた(涙)1953年10月に初飛行、1956年には配備が始まっています。

迷走を重ねた全天候型迎撃戦闘機三姉妹の跡を継ぎ、その決定版となるべく開発されたものの、
こちらも見事に迷走していろいろ微妙な存在となってしまった機体。
当初の機体の空力設計が甘く、さらに重くなりすぎて試作機では音速突破に失敗、
それ以外にも搭載を予定してたエンジンが完成せず別のエンジンに切りかえるハメになる、
ヒューズ社の火器管制装置(FCS)の開発も迷走する、などなど散々な状況で生み出された機体です。

さらに試作機の開発と量産準備を平行する、という妙な製作体制を取ってしまったため、
上記のようなトラブルに対応するたびに、工場の設備から全て造り直しとなり、
莫大な費用の無駄使いとなってしまった、というオマケが付きます。
(通常なら試作機の変更だけで済み、それらの問題が全て解決してから量産機の準備に入る。
が、先にも見たように対戦略核爆撃機について時間の余裕がなかった空軍のあせりが、
この問題の多い開発体制を採用させ、そして大失敗に終わる事になった)
まあ、この時代のアメリカ空軍に失敗作で無い機体は無いので(笑)、驚くほどの事はないですが。

それでも全米のレーダーシステムをネットワークでつないだ対空レーダーシステム、
SAGEシステムに初めて本格的に対応、途中からは赤外線シーカーも搭載、
そして誘導ミサイル ファルコンの本格運用開始など、新時代の機体ではあったのですが。
(ただしSAGEへの対応、ファルコンの運用はF-86D、F-89などでも既に一部行われていた)

最終的に1000機近くが生産されたものの、これ以上の改良は無駄、
となって最初の改良型になる予定だったB型は、新たにF-106として大幅に変更を加えて
生産に移される事になってしまいます(F-106は後でまた登場)。
このためこの機体、練習用の複座TF-102Aを別にすると、A型しかない、
という近代戦闘機には珍しい機体となってしまいました。

ちなみにアメリカ本土防衛用の機体なのに、なぜかベトナム戦にも投入されてます。
当時、北ベトナムがソ連製の戦略爆撃機を配備した、という情報があり、
これらから南ベトナム、タイの空軍基地を守るための配備だったのですが、
北ベトナムにはそんなところまで攻撃に行く意思はなく、ほぼ無駄に終わります。
最後はやることが無くなって、赤外線シーカーを使ってベトコンの夜間移動を
見つけて地上攻撃をしてこい、というレーシングカーで宅配便の配送をやらせるような
無茶苦茶な任務にまで投入してます。
この時代のアメリカ空軍はホントに底抜けのマヌケ、という他ありませぬ。



上から見ると判るように、コンベア社お得意の無尾翼デルタ翼、B-58と同じラインなのが判ります。
そしてこちらも主翼の幅が広くなるにつれて、胴体中央部が絞り込まれて行く
エリアルール一号が適用されてるのが見て取れます。
ただし、これ、最初の試作機では普通のずん胴で、音速突破に失敗した後、
ほぼ再設計をしなおして、この形にしたもの。
B-58はこの経験を生かしたんでしょう。
F-102の場合は、せいぜいマッハ1.2ですからエリアルール1号でも十分効果はあったでしょうが、
この変更のため、すでに量産準備が進んでいた工場の設備なども全て造りなおしになってしまいました。

ちなみに右後ろに見えてるのが、後継機となるF-106。



でもってこの機体のデルタ翼も、翼端に向けて下に緩やかに曲げられたワープ翼になってます。
おそらくこの構造は、コンベア社がこの機体で初めて採用したものだと思われます。
若干、構造は異なりますが、コンコルド、さらにはユーロファイターなどでもこの構造が採用されてるので、
無尾翼デルタには重要な構造なのだと思われるのですが、
前回説明したように、その目的はやや不明ではありまする…まあ、空気抵抗削減目的なのはほぼ間違いないと思いますが。



当初は音速突破に失敗する、後に成功してもせいぜいマッハ1.2、というF-102でしたが、
変な所で空気抵抗の軽減に努めており、兵装は全て、胴体内の格納式武器庫に入ってました。
通常はフタが閉じられており、武装は見えなくなっています。
発射時にパカっとフタが開き、中からミサイルがニュッと出て来るのです。
ここで見えてるのは側面の武器庫ですが、実は胴体下にももう一つあり、計3つの武器庫が装備されてます。
ちなみにF-22やF-35でも同じような武器庫システムを採用してますが、あっちはステルス対策で目的が違います。

搭載されてるのは誘導ミサイル、AIM-4ファルコン。
火器管制装置を開発していたヒューズ社が開発したもので、レーダー誘導式と赤外線探知式の二種類がありました。
この展示では右の弾頭部までオレンジのがレーダー誘導式、左の白いのが赤外線探知式ですね。
ちなみにこのファルコンミサイルが妙にずんぐりむっくりなのは、
このF-102の武器庫に収まるサイズにする必要があったかららしいです

ついでにこの武器庫のフタ、ただのフタでは無くて、胴体内側の分厚いドアは
中にロケットランチャーが入ってるというビックリドッキリメカとなっており(笑)、
白いファルコンの弾頭のすぐ横に見えてるのは、その発射装置のもの。
(ロケット弾の装填部だと思うが断言できず。ドアごとに3発ずつ搭載出来た。
左右の武器庫の胴体側フタで計6発、胴体下の武器庫は左右共にこれなので計6発、
すなわち全部で12発のマイティーマウスロケット弾が搭載可能)

さらについでに、オレンジのレーダー誘導ファルコンの奥、胴体下の武器庫の中にもミサイルが見えてますが、
あれはAIM-26核弾頭対空ミサイル。ファルコンから改造された核弾頭対空ミサイルです。
先に見た、そして今回も後で登場するジーニーが対空核弾頭ミサイルとしては有名ですが、
あれだけじゃないんですよ、アメリカ空軍の対空核弾頭ミサイル…
ちなみにジーニーも、これも妙に短いのはこれまた、この機体の武器庫に収めるためだったらしいです。

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