■さあ戦いの始まりだ



今日もそれなりの人数が入り口で待ってる状態。
でもって繰り返しますが、白人系の人がメイン、あとはアジア系がチラホラ、という感じで、
黒人系の人はやはり一人も居ないのです。



という感じで、本日の見学開始でございます。



とりあえず他の見学者を置き去りにして第三ハンガーの冷戦時代の展示へまっしぐら。
あれ、朝一で、誰にも追い越されずにここに来たのに、画面中央、水爆の展示前に誰かいる! 
イヤーン、心霊現象!と思ったら、ここの解説員のボランティアの方でした…

館内の係員に老人の方が多いのは皆、ベテラン(退役兵)だからで、技術的な話はともかく、
当時の現場の様子とか、結構、興味深い話を教えてくれる人が多いです。



ちなみに普段は入り口横の机に座ってます。
ただ、ここの展示は照明を落としてるため、ここだけ妙に明るく浮き上がっており、
たまたまここを振り返って見た時に、こっちを見てニヤリと笑ったら怖いなあ、などと思っておりました。



入り口を入ってすぐの展示がこれ。
マーク41 水爆で、B-41という名称も持ちます。

21世紀の現在に至るまで、アメリカが製造した中で最大の破壊力を持つ爆弾であり、
1961年に配備が始まり、1976年まで現役でした。
25メガトン(核出力の膨張エネルギーを表す単位。同等のエネルギーを放出するTNT火薬の質量で示す)とされます。
すなわちかなり大きな1トン爆弾を25000万発集めた破壊力、という事ですから、
水爆の破壊力の凄さが判りますが、同時に何に使うの、そんな爆弾、という感じですね…。

ただし実際の核爆発の出力を測定するのはかなり難しいので、
こういった数値は常にある程度の誤差を持つのに注意が要ります。
一般にその出力を求める式として使われるテイラーの方程式では、
核反応の時間、爆発半径、大気密度の三つのデータが必要なのですが、
爆発半径の正確な計測はかなり困難で、しかもこの数値を5乗して使うため、わずかな誤差でも大きな影響が出ます。

この辺り、実験無しでいきなり実戦投入された
広島型原爆(リトルボーイ)などは正確な数値を得る術はないので、
世の中に出回ってる数値は全て推測値なのに注意が要るところです。
未だにそして今後も、誰も正確な数値はわからないままでしょう。
ちなみに長崎型原爆(ファットマン)はより複雑なプルトニウム原爆だったため、
技術的な問題を確認する目的で、事前に爆発テストが行われてますが、これも全く同じものでは無いので、
その爆発エネルギーの数値はかなり推測を含んでいます。

参考までに広島型原爆、原始的と言っていい
ウラニウムのガンバレル式原爆の破壊力が12キロトン以上20キロトン以下、
より高度なプルトニウム式の長崎型原爆、ファットマンが18キロトン以上25キロトン以下と見られています。
そして、それぞれの推定最大出力を取ったとしても、展示の水爆、
マーク41の1/1000以下のエネルギーでしかないのに注意してください。
(1キロトン=TNT火薬1000t分 1メガトン=同100万t分)
つまりこの爆弾一つで、広島や長崎の1000倍のエネルギーを持つのです。
…そんな巨大な破壊力をどこで使うのだ、という感じですね。
宇宙戦争でもやる気だったんでしょうか。
この時代のアメリカ軍が何を考えていたのか、理解に苦しむ部分です。

ちなみに核兵器というのは原子の質量をエネルギーに変換する兵器を意味しますが、
(E=mCC つまり m=E/CC m:質量 E:エネルギー C光速度であり、質量はエネルギーの集積である)
原爆はウラニウム、プルトニウムという重い元素(崩壊しやすい元素)の分裂時の質量損失を利用するのに対し、
水爆は極めて軽い重水素が融合するときに捨て去る質量を利用してます。
(そういった意味で核分裂型爆弾を原子力爆弾と呼ぶのは誤解されやすい部分だろう。
核分裂も核融合も、どちらも原子の質量から変換されたエネルギーなのだ。
本来なら原爆を核分裂爆弾、水爆を核融合爆弾と呼ぶべきではある)

どちらも質量のエネルギー変換ではあるのですが、その仕組みは全く異なるので注意してください。
本来なら大きなエネルギーが得れる核融合、すなわち水爆の方が有利なんですが、
核融合には膨大な熱と圧力が必要で、これを得るために起爆装置に原爆を使う、というスゴイ爆弾になっています。
このため、大型化してしまう傾向があり、このマーク41がやけにデカいのはそのためでもあります。
ちなみに重水素による核融合は、太陽の燃焼と同じものなので、水爆は小型の太陽、と言う事もできます。
(原爆は核分裂だからそうではない)

ついでにこの爆弾、実際の運用では高高度からパラシュートを付けて投下、という事になってましたが、
あまりの破壊力のため、XB-70(実験機編で登場)で投下して、
超音速で逃げないと安全ではない、という話もあったそうな。
が、XB-70は結局採用されなかったので、B-47とB-52で運用していたとの事ですが、
もし実戦投入された場合、果たして逃げ切れたのかなあ…。

広島型の1000倍だとすると、高高度でも少なくとも百qは逃げないと安全圏とは言い難いので、
(熱や放射線を避けれても、衝撃波が来る)
B-47やB-52がわずか数分で、そこまで逃げれたのかは微妙だと思いますが…
まあ、高度を稼いで衝撃波を緩和する、という手もあるのですが、
むしろそっちの方が時間がかかるので、果たしてどうでしょうね。


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