■微妙な展示を含む



この博物館における最初のヘリコプターの展示、シコルスキーのH-19B(後にUH-19Bに改称)。
といっても、私はヘリコプターはさっぱりわかりませんが。

空軍では1951年から採用され、その後、朝鮮戦争にも救難用として持ち込まれてます。
ちなみにヘリコプターで最初に大西洋横断をやった機体だそうで、
1952年に二機のH-19Aがアメリカ側からイギリスまで、5回の着陸を経てこれに成功した、との事。
どうも展示の機体の塗装はその再現らしいです。

この時代、まだ小型で高出力なガスタービンエンジン(ジェットの排気の力を全て軸回転運動に回す小型ジェットエンジン)
なんてありませんから、機首部に巨大な星型エンジンを積んでおり、
この結果、コクピットがあんな高い位置にあるわけです。



その横に投げやりな感じで置かれてるB-29の胴体部。
B-29は朝鮮戦争にも投入されており、約5年間の戦争で、
21000出撃(Sorties/1機が1回爆撃に行くと1出撃/Sorieと数える)をこなし、
16万7千トンの爆弾を落としてまいました。
これは出撃数でこそ対日本戦に劣るものの、実は投下した爆弾の総量では上回っているのです。

戦闘損失はわずかに30機未満で、ほぼ無かったようなものと言ってよかったのですが、
(出撃回数との比だと、0.14%の損失でしかない)
鉄道も水運も重要産業もほとんどない北朝鮮相手に戦略爆撃やっても効果は無いに等しく、
その投下爆弾量に比べるとパッとしない戦果でした。
ちなみにMig-15に撃墜されたと見られるのはそのうち16機だけとされ、
一部で言われてるほど、その脅威は無かったようです。
(ただしレーダーとミグの迎撃を警戒した結果、夜間爆撃が主となった。機体下が黒いのはそのための塗装)

ついでに、よく見ると胴体横にCOMMAND DECISION と描かれてますから、
これは朝鮮戦争中に5機のMig-15を撃墜申請して認められた機体、
世界で唯一、ジェット戦闘機相手にエースの称号に値する5機撃墜を記録した爆撃機とされるB-29ですね。
ただしこれは実機ではなく、その塗装を再現した別の機体です。
(COMMAND DECISION は直訳すると「司令部の決定」で、意味が判らんが、
1948年にクラーク・ゲーブル主演の同名映画が公開されてるのでそれから取った?)

朝鮮戦争中のB-29によるミグ撃墜は結構あって、16機前後が正式に撃墜認可されたようです。
まあ、当サイトでは何度も書いてるように、この手の記録は実際は半分以下、と考えるべきで、
さらに夜間戦闘ばかりだったはずなので、より怪しいんですが、
それでもちょっとした数であり、B-29すげえな、という感じではあります。
ちなみにこの機体の5機撃墜は総数121回の出撃の中での達成だったそうな。



B-29の内部が見れる、といってもこんな感じに通路をぶった切って、
ガラス張りにしてしまったもので、観光用であり、資料性はほとんど無いと思っていいです。
ちょっと残念。



正面の爆撃手席は切断されてしまってますが、左右の操縦席は残ってます。
これは左側の操縦士席。操縦桿の真ん中にB-29と入った円盤が埋め込まれてます。



エンジンの面倒を見る、機関士席。
747辺りのジェット旅客機までは操縦士、副操縦士、機関士がセットだったのですが、
今では機関士はほぼ見られない乗務員になってしまいましたね。

この席は右側の副操縦士と背中合わせに乗るようになってます。
ついでに機関士の席にまで窓があるとはサービスが良いな、と思う所ですが、あれは緊急脱出用の窓です。
与圧キャビンのため開放窓が無く、さらに前輪収容部から乗り降りするので
飛行中は出口が開かない機体構造のため、 レバーを引けばあの窓が外れるようになってます。

しかし、あの大きさの窓からパラシュート付けたアメリカ人が飛び出せたのか、といつも思いますが、
実際のところはどうだったんでしょうね…。
最悪の場合、与圧ドアを蹴破って、爆弾庫開けて逃げる、という手もあるにはあるんですが。


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