■大型機編 その3



全人類が大好き、重点的に私大好き、コンソリデーテッド の水上機、PBYカタリナ。
ただし陸軍バージョンはOA-10の名を持ち、そのA型…という事になってますが、
展示の機体はブラジル軍が戦後1981年(!)まで現役で使用していたPBYの寄贈を受け、
1984年にOA-10のA型としてレストアされたもの。
基になった機体がはっきりしないのですが、おそらくPBY-5でしょう。
(ちなみに陸軍が採用していた機体の一部でもPBYの名前のまま運用されてたのがあったらしい)

水上機なのに主翼下のフロート、浮舟が無く、これ着水したら横転しちゃうじゃん、と心配になる所ですが、
主翼の翼端が下に折れ曲がり、支柱によってそのまま下に伸びてフロートになる、
という超絶ステキ装置が搭載されていて、横転を防いでます。
展示機は車輪出して地上に上がってしまった状態なので、これを畳んでしまってますけどね。

なんでまた陸軍が水上機のカタリナを使ってるの、というと太平洋、地中海、英仏海峡と、
世界で一番海を越えまくった陸軍航空軍がそのパイロット救助機を必要としたから。
このためヨーロッパ太平洋を合わせると380機前後のカタリナが陸軍によって運用されておりました。

ただし救難用の機体をこれだけ配備していたのは別に人道的な配慮ではなく、
パイロットや爆撃機の搭乗員を育てるには膨大な時間と費用が掛かるため、
簡単に死なれては割に合わない、という合理的な理由からです。

ちなみに太平洋戦線では海軍のパイロットは潜水艦からも救助を受けたのですが、
どうも陸軍のパイロットもその恩恵にあずかっていたようです。
さらに言えばイギリス空軍は第二次大戦時から冷戦終結の1991年まで
自前の救難用高速艇を持っており、これをイギリス沿岸で待機させ、
救難要請が出たら出動させてました(魚雷艇に近い船でロンドン空軍博物館に展示あり)。




アメリカが大戦末期、1944年7月から実戦投入して来たレーダー付き夜戦専用戦闘機、
ノースロップP-61C ブラックウィドウ。
それ以前のアメリカ陸軍は既に見たようにイギリスのボーファイター、攻撃機のA-20などを改造して使用しました。

最初から夜間戦闘専門の機体として開発された世界初の戦闘機でもあります。
これも現存機に恵まれない機体で、まともな状態なのは、
スミソニアンのウドヴァーハジーにあったのとここのこれだけでしょう。
さらにスミソニアンのは戦後、機体上の銃座が外されてしまってるので、まともな状態で見れるのは
世界中でこの機体だけ、となります。
(ただしオリジナルの状況を維持してる、という点ではスミソニアンの機体の方が上)

ちなみにドイツや日本の夜間戦闘機は連合軍の夜間爆撃が相手だったので、
夜戦と聞くと迎撃戦闘機と思ってしまいがちですが(私だけ?)、
アメリカ陸軍はそんな使い方をする気はさらさらなく(笑)、ヨーロッパ戦線では
獲物を求めてガンガンと自らドイツ領空に飛んで行ってます。

ちなみに展示の機体は最終量産型のCなんですが(D以降の機体は製造済みの機体の改造)、
これは実戦投入されてないため、実戦で活躍したB型のとして塗装されてしまってます。
C型、40機前後しか作られてない貴重な機体なんだけどなあ…

さらにこの機体、オハイオ州スプリングフィールド(博物館の近所に同じ名前の土地があるからそこか?)
のボーイスカウト団体から1958年に寄贈された、とされるんですが、
ブラックウィドウを空軍博物館に寄贈するボーイスカウト団って…




AN-M26パラシュート付照明弾。
意外に大型で、1m以上の長さがありました。
主に夜間偵察の撮影用に使われたそうで、投下後、3分間は十分な光量を維持できたそうな。



ちょっと暗いですが、M29クラスター爆弾。
415ポンド、約188sの収束爆弾で、
中には対人用の榴弾(爆発で破片を吹き飛ばして殺傷する)がぎっしり詰まっているもの。
塹壕とか逃げる場所が無いところで上からこれを落されたら、
数百の手榴弾を一度にばら撒かれるようなもので、逃げようが無いでしょう。



ちょっと珍しい陸軍が使用した航空魚雷 Mk.XIII(13)。
海軍が使っていたものと同じ航空魚雷ですが、陸軍でも双発爆撃機などから使っていたんだとか。
これは知りませんでした。
ちなみにここの解説によると、ミッドウェイ海戦の時、ミドウェイ島から出撃したB-26は、
この魚雷を積んでいて、雷撃任務についていたんだとか。
それも初めて知りました。
ただし、私が知る限りでは大戦全期を通じて、実戦の戦果はゼロのはず(涙)。


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