■萌芽期の終わりに



こちらは1908年に陸軍が初めて採用した航空用エンジン、カーチス製水冷4気筒エンジン。
上の黒い筒が恐らく燃料タンクで、25馬力出たそうな。

ただしこれは飛行機ではなく、気球用のものでした。
当時、細長い気球の下にエンジン付きのフレームをぶら下げて、
高速(と言っても時速19.6マイル、時速31.4qだが)で飛ぶバルドウィン式飛行船というのがあったのです。
後に飛行機の開発にも乗り出してくるバルドウィンですが、当初は高速気球が彼の十八番でした。
これを陸軍の信号部隊が試験的に採用した時のエンジンがこれです。



こちらは1916年版、第一次大戦中からライト兄弟が使用していた実験風洞で、
ここデイトンで彼らが使っていたものです。
すでに完全に時代遅れとなっていた兄弟の機体ですが、その開発手法はキチンと
風洞実験で主翼の性能を確かめて行く、という極めて正統派のものだったのです。
この点は今から見ても立派ではありました。

ちなみにこれは兄の(といっても三男だけど)オリバーによる設計。
風速は最大時速160マイル、時速256qまで出たらしいので、
第一次大戦当時の機体の最高速度を上回る速度が出たわけです。

といってもこの大きさですから、小型模型で、レイノルズ数を揃えて実験するしかなく、
そうすると気流の速度を上げるしかないので、限界は意外に低かった気もします。
左右がラッパ状態なのは気流の加減速のためだと思われ、
だとすると1901年の風洞に比べ、大幅に流体力学の知識が取り入れられている事になります。
(おそらくレイノルズ数も知ってたのではないか)
ちみに右側についてるのがファンを回す部分で電気モーターにも見えますが、
ガソリンエンジンからのベルト駆動じゃないかなあ。

といった辺りが「軍事航空の創設期」の展示の主なものとなります。
今回の本編はここまで、次回は第一次大戦に入って行きますぜ。


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