■お次は外だ



さて、お次は屋外展示へ。
この博物館の屋外展示は大きく2箇所、裏庭のハンガー周辺と、
表の1号館(仮称)&2号館(仮称)の前に分かれます。

どちらも雨が多くて多湿の熱帯地帯ゆえ、
屋外展示の機体コンディションはかなり厳しいのが
やや悲しいところですが…。

とりあえず、最初は裏庭の方から見てゆくことにしましょうか。



まずはタイ空軍では1971年から2004年まで現役だった
ロックウェル社のOV-10ブロンコのC型。
といっても中身はほぼA型で、単にタイ空軍用ということでCとされただけです。
でもって、これも1機が1987年の国境紛争でラオス軍に撃墜されています。

ちなみに退役後のOV-10は、ほとんどをフィリピン空軍に売ってしまったようで、
国内にはほとんど機体が残ってないみたい。

当初は1971年に16機だけを購入してるのですが、
73年になってからさらに16機追加購入しており、
よほど気に入ったのか、あるいは予算確保の都合で分割購入になったのか詳細は不明。
後で見るように、この機体の劣化コピーみたいな国産機をタイは開発してますので、
それなりに気に入ってはいたようですが…。

ただしガスタービン(ターボプロップ)双発エンジンのプロペラ機、
OV-10もよくわからん機体、という部分があります。
いわゆるCOIN機と呼ばれる機体のひとつで、COunter-INsurgency(対反乱軍)、
でCOINだんそうですが、なんだそれってな名前でございます(笑)。

私の知る限り、1960年代の初頭ごろからアメリカが使い始めた言葉ですが、
これもアメリカ軍らしいダジャレでしょう。
COINにはスラングでやられたらやり返す、といったニュアンスがあります。
(Pay back in his own coin)
ついでに、アメリカの言う反乱軍はジェダイの騎士に率いられた連中ではなく、
当然、当時の発展途上国における共産党ゲリラの事でございます。

COIN機が標的とするのは非正規軍、まともな航空兵器を持ってない軍隊であり、
つまり制空権(航空優勢)を一方的に取れる相手に投入される機体となります。
とりあえずそんな相手なら、こんな低速な機体でも、
十分、戦力になると判断されたのでしょう。

が、十分な航空機がない共産ゲリラでも
中国製、ソ連製の対空兵器は持っているのが普通です。
でもって低空進入する航空機にとって
もっとも恐ろしいものがこの地上の対空兵器でした。

地上に濃密に配備された対空兵器網の中に
こんな低速機で突入するのは単なる自殺行為でしょう。
結局、その用途はきわめて限られてしまい
だったら攻撃ヘリで十分ジャン、ということになってゆきます。

実際、アメリカ空軍がベトナムに送り込んだ機体は、攻撃任務には投入されず、
FAC機、すなわち他の攻撃機への目標誘導と事前の偵察任務機として使われてます。
いや、そんなの既存の機体で十分ジャン、と私などは思うのですが…。



せっかくだからUSSRでも撮影しておきますか。
極めて背が低いのは、前線の基地でハシゴなどなしでも機体に乗り込めるように、
といった配慮のためでしょう。
ついでに地上での整備も楽になりますし。

胴体横、主翼下で横に飛び出してるのは武装用のスポンソンでして、
7.62mm機銃が左右で2門づつ入ってます。
このあたりの武装の微妙な中途半端さが、この機体の特徴かもしれませぬ。

ちなみに外観だけを見ると、二人乗りの小型プロペラ機ですが、
コクピット後ろには貨物室があり、
武装した兵員5名が搭乗できた、とされます。
相当なギュウギュウ詰めだと思いますが…。

その貨物室のドアは機体の後ろ側にあり、
一応、ここから空挺隊員の降下も可能となってます。
ただし、実は飛行中にはドアを開けれないため
離陸前にドアを取りはずし、そのまま離陸する必要がありました…。

どうも中途半端な万能機、という印象がありますね、ブロンコ…。



お次は、ここにもあったF-86L。
これもUSSRでの撮影。
こちらは先に解説済みですから、もういいですね(手抜き)。



なんの解説もなしに展示されてましたが、おそらく政府専用機のB-737。
こういった機体が空軍の運用なのは、バンコク、否、万国共通のようです。
ただしこの機体、エンジン無し状態でして、主翼下にぶら下がっている物体の正体は不明(笑)。
単なるハリボテにしては出来がいいですし、かといって間違っても737用のエンジンではありません。
初期のターボジェットにも見えなくはないですが、どう見ても短すぎますし。
…なんだこれ。

ちなみに、現在はA310がタイの政府専用機だったはずなので、先代の機体でしょう。
ここらあたり、タイ空軍の露骨なまでのアメリカ離れがなんとなく感じられます。


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