■ロンドンの基礎知識

とりあえず、今回の旅行記も基礎知識編から入ります。

ロンドンはイギリス本土、つまりブリテン島に侵入してきたローマ人が
テームズ川の北岸に補給基地を築いたのが始まりとされます。
海からテームズ川をさかのぼってきて、最初に川幅が狭くなる、
つまり橋が架けられる場所、というのが選定のポイントだったようです。

ブリテン島南部に、テームズ以上の大河はありませんから、
ここを自由に渡河できる、ということはブリテン島南部を自由に行き来できる、
ということを意味するわけで、そこら辺が狙いだったのでしょう。
ちなみに、このローマ植民地時代に架けられたのが、
歌にもなってるロンドン橋(London bridge)の元祖でした。
(場所は現在のものとは異なる)



1973年に架け替えられた現在のロンドンブリッジ。
世界中のゲイバーのママが設計コンペに毎回参加してるのではないか、
というくらいド派手で個性的な橋が多い中で、
これだけは千葉の都川の橋じゃないのか、というくらい平凡な橋。

が、これこそがロンドンの歴史の中心にあり続けた橋だったのだ。
そもそも18世紀に入るまで、テムズの南岸に行くにはこの橋しかなかった。
ちなみに今回の旅行で初めて渡る事ができたが、やっぱり平凡な橋だった(笑)。

現在はロンドン南部へゆく橋だが、18世紀くらいまでのロンドン市街は
テムズの北岸に限られ南岸に市街部は存在しなかった。
なので、当時はロンドンからイングランド南部に向かう拠点のような存在だったが、
中世にいたるまで、あまりに多い通行量と意外に早いテムズの流れによって、
何度も橋が堕ちており、あのロンドン橋落ちた〜(London bridge is falling down Falling down)の
歌がつくられる事になる。


この周辺の開発は紀元50年前後から始まったと見られてますから、
中国で言ったら漢(後漢)の時代、
日本で言ったらフルチンでウンバウンバといいながら野山を駆け巡ってる時代です。
かなり歴史のある街と考えていいでしょう。
時期的に見て、後の第9代ローマ皇帝、ウェスパシアヌスが軍団長として参加していた
ブリテン島攻略戦の頃、前線の補給基地として造られたものかも知れません。

後に砦に進化し、さらに貿易港としても使われるようになり、
やがてローマの殖民都市へと発展しました。
このころ、ラテン語でロンディニウム(Londinium)という名が付けられ、
これがロンドンという地名の語源になっています(そもそもは原住民のケルト語で川岸の事らしい)。

後にブリテン島の現地部族の侵入、破壊などもあったのですが、
以後はローマ帝国によるブリテン島支配の中心地として発展してゆくことになります。
(島の名がブリテン(Britain)島、そのローマ植民地としての名がブリタニア(Britannia))

やがて紀元410年にローマはブリテン島の植民地経営から撤退し、
その後、当時暴れまくっていたヴァイキング/デーン人(Vikings and Danesで同じ連中を指す)
に一時占領されるなど、ロンドン周辺も、衰退し、荒廃して行くことになりました。
余談ながらヴァイキング(デーン人)というと海賊、と思いがちですが、
彼らは856年の進攻から騎馬兵力を持つようになり、後の蒙古のごとく、
その機動力と破壊力でブリテン島南部を席巻してしまいます。

が、886年にウェセックス王国(Wessex)がヴァイキング(デーン人)を破り、
この地を占領するとその首都として再興、そのウェセックス王国がイングランドを統一して、
イングランド王国となると、イングランド(ブリテン島南東部)全域の首都となるわけです。
その後1066年、フランスからやって来たノルマンディ公ウィリアム I世が
イングランドを征服した後も、引き続きロンドンを首都とします。

後にイングランドはウェールズを征服、17世紀にはスコットランドとの統合が始まり、
現在我々がイギリスと呼んでいるUnited kingdom of Great Britain (and Northern Ireland)、
すなわち大ブリテン島連合王国(と北アイルランド)、UKが完成、その首都ともなるのです。
(北アイルランドは1920年代になってから加わる)

ちなみにロンドンはノルマンディ公の征服後も自治を維持しており、
これに監視するために、ノルマンディ公が建設した城砦の一つがロンドン塔のようです。
この自治エリアが、現在のロンドンの中心、ロンドン市街区(The city of london)、
通称シティ(The city)と呼ばれるエリアとなりました。
ウォールストリートと並ぶ、現代の一大金融街、あのシティです。
(実際はノルマンディ公征服前、1013年以降ヴァイキング/デーン人の占領があるが今回はパス)

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