■よくまあ詰め込んだものだ



そしてイギリスの博物館ですから、当然あります、スピットファイア。
これもMk.Iでして、ほんとに多いな、スピットのMk.I 現存機。
シリアルナンバーP9444で、どうもオリジナル塗装ではないか、という気がします。

この機体はバトル オブ ブリテンが始まる直前、1940年6月に部隊配備されたもの。
で、配備直後の1940年7月3日、酸素切れのまま高度を上げてしまったため、
パイロットが失神、高度300mあたりまで一気に降下したところで意識がもどり
あわてて機体を立て直したものの、付近の飛行場への着陸時にクラッシュしてしまい、
これも修理送りとなったものだとか。

どうも一度クラッシュした再生機は、安全性の問題からか前線では使用されないようで、
連絡用途などに使われた後、これも例の記念用保存機として保管が決まったものらしいです。

なので、事故機あがりとはいえ、ほぼ新品みたいな機体だったりします、これ。



まわりに全然、お客さん居ませんが(笑)、ここの目玉がこれ。
1920年代を中心に、欧米で熱狂的なレースが繰り広げられた、
水上機によるシュナイダー杯レース。
そのトロフィーの永久保有権をイギリスにもたらした水上レース機、スーパーマリンのS.6Bです。

後にスピットファイアを世に送り出す設計者、ミッシェル(R. J. Mitchell)が生み出した水上レーサーで、
1929年に造られたS.6の改良型として造られたのがこのS.6Bです。
前回紹介したRエンジンを搭載、いろんなドラマを乗り越えて1931年のレースに参加するのですが、
イタリアのマッキをはじめ、大恐慌の影響もあり、ライバルは誰も出場できませんでした。
なので、自動的に優勝が決定(笑)。

とはいえ、その時の飛行で、時速547.3kmの大会新記録を出してますから、
優勝する資格は十分にあった機体、と言えるでしょう。

で、このレースのライバルだった、イタリアのマッキ社で設計をやってたのが、
カストルディで、彼も第二次大戦期の戦闘機の設計を行う事になります。



で、どうもこれオリジナルの状態のまま、保存されてるようですね。
レストアされてない、ともいえますが、むしろこの方がありがたいと思います。

横から見ると、当時の機体としては異常に薄い主翼なのがわかります。
この主翼を薄くして空気抵抗を落す、という設計思想は、
そのままスピットファイアにも持ち込まれる事になるわけです。

さて、ここで問題です。前回、Rエンジンは見ましたよね?
あの巨大な液冷エンジンを冷やす必要があるわけですが…
さあ、この機体、ラジエターはどこでしょう。

正解は、下にぶらさがってるフロートが丸ごと冷却機になっている&主翼の一部もね、でした。
なんとも無茶ですが、少しでも空気抵抗を減らすため、機体の表面を利用して
ラジエーター液の冷却を行ったのでした。

これはシュナイダートロフィーの参加機体では意外に多く取り入れられた構造で、
イタリア機なんてより効率よく熱を逃がそうとしたため、フロート、さらにその支柱や
主翼の一部を、熱の伝導性が良い銅板にしてしまっています。

この手の高速機で一番困るのは、飛ぶ前、低速で移動してるときで、
弱い風しかラジエターに当たらないので、あっという間にオーバーヒートとなります。
が、水上機ならフロートは常に水中ですから、冷却は問題なし、
飛んでしまえばこれだけの表面積に風が当たるんだから何とかなるわな、
という考え方なんでしょうね。
レース後、着水時には相当な高温になってるはずで、すさまじい水蒸気が
上がったんじゃないかと思います。

ちなみにS.6Bは2機製造され、ここに展示されてるのは1号機のS1595です。
2号機のS1596は現在行方不明(スクラップにされた可能性高し)となってます。

ついでに、その前のレースで使われたS.6(A)のうち、シリアルN248
(これも31年のレースに予備機として持ち込まれたがトラブルで飛べず)
がイギリスの南部、サウサンプトンの博物館に残ってたはずです。



イギリス陸軍が使用していた初期のヘリコプター、
ウェストランドのスキーター(Skeeter)Mk.12。
スキーターって何?と思ったら、どうもそういった射撃競技があるようです。

が、いろいろ調べて見たんですが、イマイチ素性がよくわからない機体。
戦後間もなく陸軍が採用したヘリコプターらしい、としかわからず…。



ここにもありました、ヴィッカースのヴィミー。

RAF博物館のロンドンにあったのはレプリカでしたが、これはホンモノ。
でもってホンモノどころか、これはどうも、
1919年、例の航空機による最初の大西洋横断をやった機体そのものらしいです。
つまり、コスフォードに居たあの黒猫のマスコット、Twinkle Toesが乗ってた機体ですね(笑)。

この機体、最後にアイルランドに着陸する時にクラッシュ、
機体前半部は潰れてしまうのうのですが、
約半年かけてヴィッカースとロールス・ロイスが修復を行い、
この博物館に寄贈したものだとか。

…これ、もう少し、目立つ場所に展示してあげてもいいような気がするのですが…。


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