■おフランスは戦勝国ザンス



さて、屋外展示はほぼ片付いたので、次は別館の方を片付けてしまいましょう。

別館その1は、一見すると、ただの倉庫みたいなこの建物。
これが第二次大戦機の展示コーナーです。

大抵の航空博物館では、この時代の展示がメインになるのですが、
フランスの第二次世界大戦は、宣戦布告から8ヶ月たった1940年5月に事実上の開戦を迎え、
そのわずか1月半後の6月25日にドイツにゴメンなさいしてしまったので、展示もこんな感じ。

展示しようにも、何もしないうちに負けちゃったので、展示するものが無いのでしょう…。
あれだけの規模の軍隊を持ち、それなりの面積の国土もあって、
あの時間で負ける、というのはある意味で世界記録かもしれません。



さっそく、その中に。
そんな事情があるので、終戦後“戦勝国”として(笑)ドイツから巻き上げた機体、
国外脱出したパイロット達がソ連、イギリス等で義勇軍として活動した時代に
使っていた機体、といったあたりがメインとなってます。

画面の右側に見えてるDC-3(軍用なのでC-47だが)が
例の内部見学は別料金機体その2です。
つーか、博物館での表記はダコタ(Dakota)になっていたので、
てっきりイギリス空軍が使った機体だと思ってたんですが、
これ、国籍表記はアメリカ軍になってますね。
アメリカだと、愛称はスカイトレインなんですが、まあ、フランス人の場合、
そこら辺、あまり気にしないのでしょうか。

でもって、ここでフランスにおける最大ガッカリな事態に直面するのですが、
それが手前に張られてる紅白のおめでたそうなロープ。
どうも一部の展示入れ替えをやっていたようで、ここの目玉展示とも言える
ソ連のヤコヴレフのYak-3戦闘機は分解状態、
さらには画面左手に見えてるFw-190Aにも近づく事ができず。

わざわざフランスまで来てこれか、というか最大の目的であったYak-3がこれでは…
トホホ…。
まあ、気を取り直して行きますか。



最初にあるのが、ドイツのビュッカー(Bücker)社によるBu-181。

1939年に初飛行した木製の練習、連絡機です。
正直言って、よう知りません…。
ドイツで木製機(エンジンとコクピットのある胴体前半は金属製)は珍しいんですが、
これ、3400機も造られてた、との話でちょっと驚く。
ただし、戦後も各国に残されていた生産設備を使ってビュッカー社に無断で(笑)
生産が続いてたそうで、そこら辺も含んだ数字らしいですが。



これが、本来なら今回の訪問の主要目的であったはずのソ連機、Yak-3。
第二次大戦期を代表する戦闘機、ヤコヴレフ戦闘機の最終型である機体です。

で、ソ連の戦闘機の命名もわかりずらく、Yak-1、Yak-7、Yak-9と来てから、
Yak-3が登場する事になります。
さらにこの機体が登場した後も、Yak-9の生産は続いてたりするので、
あまり深くは突っ込まないでおきましょう…。

エンジンとコクピット周り、後は主翼の骨組みだけがジュラルミンによる金属製で、
それ以外の部分は全て木製という、ソ連機らしい構造を持つ戦闘機ですが、
おそらく、戦中のソ連の機体の中では、最高性能を持っていたのではないでしょうか。

ただし、これはあくまでソ連の、であって、この国はハイオクガソリンはもちろん、
まともな過給器を持ってませんから、英米の機体相手では勝負にならないでしょう。
相手がドイツでホントによかった、という所でもあります。
実際、フランスはアメリカのP-47,P-51も戦後運用するのですが、
これらは1950年代まで現役でした。
1947年、最初に引退させられたのがYak-3というのは、まあ、そういう事なのでしょう。

でもって、この機体に限らず、ソ連の第二大戦期における現存機体というのは
貴重でして、私がこれまで見てきた中ではダックスフォードでI-15を見たくらい。
なので、かなり期待して行っただけに、これはガッカリでヤンス…。

敗戦後、ソ連に渡ったパイロット達によって運用された義勇軍パイロット部隊、
ノルマンディ ニーメン(Normandie-Niemen)が1944年から終戦まで
その主力機として運用していたのが、このYak-3でした。
終戦後、彼らはこれをフランスに持ち込んで、戦後の1947年4月まで、
フランス空軍機として運用していたようです。
その中の1機がこの機体で、1947年の運用終了直後に博物館預かりになった、
との事ですので、最もオリジナルな状態を残してるYak-3かもしれません。

が、ごらんの状態(涙)。
来年、2012年にかけてレストアして、この適当なソ連機塗装も、
ノルマンディ ニーメン塗装に塗りなおすから待っててね!てな説明が書いてありました。
(フランス語なので大筋で、ですが)
あれま。余計なことを(笑)…



その代わり、普段は見れないようなトコが見えたので引き分けとしますか。

エンジン周り、周囲を肋骨のような金属骨組みが取り囲んでます。
機体本体が木製なので、ここら辺にも補強が必要だったのか、という気もしますが、
これは整備の時、結構邪魔な気が。まあ、取り外しできるのでしょうが。

ついでに、エンジンマウント、エンジンを機体に固定する支柱類が見えず、
どうやって機体とエンジンを繫いでいたのかもよくわからず。
そこら辺も考えて、機体の剛性はあまり高くないように見えます。

ついでに下に置いてあるのが主翼部で、プラモデルのように、
左右を繫いだ一体構造、その上の金具で機体に固定してる、というのがわかります。


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