■イギリスのイギリスによるイギリスのための飛行機



ここら辺は英国づくし、という感じの展示になっております。

まずは先にもちょこっと登場したスピットファイアのMk.V(5)。

右側にケーブルで繋がってるのは電源車ではなく、電池そのものに車輪をつけたもの。
直流電源で給電してるようですが、エンジンスターターの電動モーター用とかでしょうかね。

Mk.V(5)は最も多く造られたスピットの型で、
元々はドイツの新型戦闘機、Fw190に対抗するため場つなぎ的に開発されたものでした。
なので、エンジンは1段1速過給機(スーパーチャージャー)しかついておらず、
この後で登場するスピットのMk.IX(9)(串刺し&壁に貼付けになってたアレ)
と比べると、性能的には二段くらい落ちます。

よって緊急デビューした1941年4月ごろからMk.IX(9)登場の1942年夏くらいまで、
けっこう短い期間だけの主力戦闘機だったわけですが、最も戦闘が過酷だった時期でもあり、
応急処置の機体だったはずが、それなりの数が作られる事になったのでした。

ちなみに、これの後の主力、Mk.IX(9)にはエンジンがちょっと違う(アメリカ製造分を搭載)
Mk.XVI(16)というのがあり、両者を併せると、こちらが生産数で上を行きます。

さて、とりあえずMk.V(5)はあっという間に時代遅れになってしまったのですが、
なにせ数があり、余ってしまった分は国内で練習機にしたり、
アジア&太平洋方面に大量に送りつけたようです。

その結果、Mk.V(5)は送り込まれた
オーストラリのダーウィン上空において(なぜかポートダーウィンと書かれる事が多いが)
1943年の3月以降、日本のゼロ戦相手に、あまり例を見ないほどの惨敗をする事になります。

まあ、1943年じゃ完全にカタオチの旧式機でして、英語圏の本などでは
敗北の理由の一つにそれを上げてる事が多いのですが(無視されるのが一番多いが)、
そうは言っても相手のゼロ戦だって、それなりにヒドイ機体なんだから(笑)、
あれはパイロットの技量による、と考えるのが自然じゃないでしょうか。

ヨーロッパ戦線の感覚のまま、スピットで格闘戦に入った
オーストラリアのパイロットのミスでしょうね。
空飛ぶ直線番長のMe109相手ならスピットの戦い方はそれで正解ですが、
ゼロ戦相手にそれをやったら、そりゃいいカモでしょう。
プロのボクサーが柔道家相手に寝技勝負に行くようなもんです。




イギリス最初の量産型ジェット戦闘機、グロスターのミーティア。

ドイツに比べるとかなり出遅れていたイギリスのジェット戦闘機開発ですが、
始まってしまえば一気に進んでしまい、
部隊配備の時期では、ドイツのMe262とほぼ変わりらない事になりました。

ただし、ドイツのMe262が一応、実戦兵器として運用されたのに比べると、
配備された数も極めて少なく、終戦まで実験部隊のレベルを
出ない状態に近かったのも事実です。

この博物館の機体はミーティアのF8で、戦後に大幅に改修された後のタイプ。
戦時中のものとはちょっと形状が異なります。

で、ミーティアは朝鮮戦争で実戦に投入されるものの、
MIgの敵ではない、と判断されることになるのですが、
持ち込んだのはオーストラリア空軍で、実はイギリスのミーティアは朝鮮に行ってません。

ついでながら、なぜかミーティアは前脚の緩衝部の油圧が抜けてる機体展示が多く、
この博物館のも前脚の油圧が抜けてお辞儀状態になってます。



イギリスのジェット機その2、デ・ハビラントのヴァンパイア F3。
開発そのものは大戦中に終わっていたのですが、なんだかんだで配備は
1946年の夏になった機体です。

ちなみにこれ、ジェット機なんですが、胴体の前半部、
写真だとNの字あたりから前は木製のボディとなっています。
モスキート造ってた会社なので、まあ、やっちゃった、という感じでしょうか。

しかしミーティア(流星)の次がヴァンパイア(吸血鬼)ってのはどういう命名基準なんでしょ。
さらに当初の名前はspider crab(タカアシガニ)だったそうで、
そこからどうしてヴァンパイアに…。

ついでに第二次大戦位までは、各機体の名前と生産会社の頭文字を揃える、
という風習(?)がイギリスにはあり、スーパーマリンのSでスピットファイア、
グロスターのGでグラディエーター、ホーカーのHでハリケーン、という感じになります。
が、必ずしも守られてるわけではなく、気分、なんでしょうかね(笑)。

中にはホーカー社のように、ハリケーンのあとはタイフーン、テンペスト、フューリーと
ルール無視に走ったくせに後にハンター、ハリアーとまたHに戻してる例もあります。



開発はアメリカによるF-4ファントムIIですが、
イギリス空軍のファントムは自国のロールス・ロイスエンジンに載せ変えてしまった事もあり、
他の国のファントムとは機体後部の形状を始め、微妙に異なったものになってます。
(後に追加配備になった機体はアメリカ海軍の中古だったのでエンジンもGE製のままだったが)

さらにイギリスには2種類のファントムがあり、
迎撃機のFG1、そして攻撃機と戦術偵察機を兼務するFGR2、となります。
機体の外見から両者を見分けるのは少なくとも私には無理で、
おそらくFCS(射撃管制装置)を始めとする電子機器の違いなんでしょうかね。

ちなみに迎撃機型のFG1は海軍でも使っていたようです。


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