■グラハムさんの工場



中はこんな感じ。結構ここも広いのです。
実は現地に行くまで、この展示棟については、どんな展示内容か知らなかったのですが、
ご覧のように第一次大戦機の展示棟でした。
中には航空機以外もいろいろ展示されていて、
例によって高密度な展示空間となってます。

さらに、ここの機体の多くはオリジナルの機体でそうで、貴重なコレクションです。
意外に多くの博物館でこの時代の機体を見ることはできますが、
その多くがレプリカ(複製)だったりするのが実情だったりします。
(ただし、ここも一部レプリカの機体がある)

もっとも、この時代の機体は木造の骨組みに布を張りました、というようなものですから、
ホントにどこまでキチンとオリジナルのままなのかは判りませんが。
まあ、大正時代の木造建造物、と考えればある程度残っていても不思議はないのでしょう。

ついでに、アメリカ空軍博物館にも第一次大戦の機体コーナーはあるんですが、
あそこの機体はほとんどがレプリカで、この点ではRAF博物館の方が優れてます。

この建物の名前、グラハム・ホワイト工場といのうは、
現在、このRAF博物館が建っている旧ヘンドン航空基地の中にあった航空機工場で、
1911年、おそらくイギリスで初めての航空機生産工場として建設されたものだとか。
この展示棟に使われているのは、1918年に建てられた工場用の建物で、
元にあった場所から、ここまで移動し、展示棟として使っているようです。



では簡単に展示内容を見てゆきましょう。

入り口を入ってすぐの場所に展示されてるのはイギリスの万能傑作機、
さまざまな用途で使われた王立航空工場(Royal aircraft factroy)製のSE5a。
非常に角ばった機体ですね。

戦闘機としてはもちろん、偵察機、練習機などとしても使われてます。
ちなみにイギリス空軍における分類は戦闘観測機ですから、
前線では長距離砲撃の着弾観測、修正指示にも使われたのかもしれません。
(英語だとFighter scout)

この時代の機体はほとんど知らんないですが、
“a”といのうはSE5の改良型のようで、エンジンをパワーアップ、
それにともなう機体の改造を行ったタイプとのこと。

展示されてるのは1918年製の機体で、戦後、民間のskywriting 会社に払い下げられ、
後に倉庫に眠ってたのを1950年になって第一次大戦時の状態にレストア、
さらに1968年になってRAF博物館に持ち込まれ、本格レストアされたもの、となってます。

ちなみにskywritingってのはなんだ?と思ったら、
どうも飛行機を使ってスモークなどで空に字を書く業者のようです。
商店の広告や、個人のメッセージを空に書いたらしいのですが、
最高速度で200km/h出ない機体じゃ書いてる内に風で流れてしまうような。
そもそも、天候不順のイギリスで商売になるんでしょうか…。

で、この機体、主翼などを見る限り、ほとんど新造にちかい印象を受けるので、
どの程度がオリジナルなのかはわかりませんが、
イギリス人、自国の機体に関してはかなり正確なレストアをするので、
それなりに資料性は高いのではないでしょうか。



その奥にいた双発のデカイ機体はヴィッカース ヴァイミー 重爆撃機(Vickers VIMY)。
こんな機体、全然知らない(笑)。ちなみにこれはレプリカでした。

初飛行が1919年なので、第一次大戦には間に合ってないのですが、
1919年6月には大西洋無着陸横断飛行に成功。

さらには世界初のイギリスからオーストラリアまでの飛行を
11月12日から12月10日にかけて行い、
その上、翌1920年の2月4日から3月にかけて南アフリカまでの飛行に挑戦します。
最後の南アフリカ行きは参加した2機とも壊れてしまい、失敗に終わりますが、
(納得のいかなかったパイロットは別の機体を呼び寄せて南アフリカまで飛んだらしいが)
当時としては、優れた航続距離を誇る機体だったようです。

が、戦争に間に合わなかったこともあり、
その脚の長さを生かして、エジプトのカイロを中心とした郵便飛行に使われて終わったそうな。
爆撃機としては、悪くない人生と言う気もします。


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