
「って、またイキナリなんだよ、これ!」
いや、そろそろ皆あきてきたころかなあ、と思って。
「なんら根本的な解決になってねえだろ。つーか、前回とキャラ違うじゃん」
今回からキャラクターデザイナーが変わったんだ。
「最初からあんただろ!」
まあ、落ち着け、とにかくまとめに入ったらどうだ、ペロ君。
「いや、それもあんたの仕事だって」
えーと、で?
「いや、だからあんたがまとめるんだって」
別にこのままほったらかしにして逃げてもええんとちゃう?
「人として問題あるだろ、それ」
そうかあ。
じゃあ端的に結論から言うと、ゼロ戦は二流機だろうね。
「おいおい」
デビュー時の段階で、すでにスペック的には見劣りするんだよ。
最初に書いたように、エンジン出力、速度、さらには実用となる高度ともにごく平凡な数値でしかない。
唯一ズバ抜けてるのはその軽量ぶりだ。ラジエター類のいらない空冷エンジンとは言え、
異常ともいえる軽さで、事実、異常だった。ヒラリと飛んで、ヒラリと闘う、という機体なんだろう。
その結果としての、防弾装備の無さは有名だが、より致命的なのは機体の強度、剛性だ。
よく知られるようにゼロ戦は急降下に弱かった。
あまり高速に耐えられないし、この重量ではダイブにはいっても加速にえらく時間がかかったろう。
「それって問題なの?」
問題なんだ。
グルグル旋廻しながら相手を追い掛け回す格闘戦においては、
ゼロ戦、最後まで世界最高のレベルだった。
なんで、この状態に持ち込むのが理想なんだが、
敵機としては、こうなっても急降下に移ればすぐに逃げ切れることを意味するんだ。
特に、ゼロ戦はロール性能、ぐるりと機体を回転させる能力も弱かったから、
不意打ちでもない限り、相手は一旦直線飛行に逃げて、そのまロールで横に動いて機体をひっくり返し、
半円を描くように後方にダイブしてしまえば、ほぼ確実に逃げれた。
特に米軍機はF4Fの段階から重い機体ばかりだったから、
一度ダイブに入ってしまえば、かなりの確率で逃げ切れたはずだ。
余談だが、米軍機の基本的な戦法の一つである、このひっくり返ってダイブで逃げる機体を見て
「やった!撃墜!」と勘違いしたゼロ戦パイロットは少なくないだろうね。
もちろん、逆にゼロ戦は一度後につかれると、これから逃げ切るには
相当な技量差が必要となることを意味する。
あせってダイブに入ってしまったら、待っているのは確実な死だ。
「そんなに不利なの?」
無論、技量差もあるし、空戦に入った高度によってはダイブは使えないこともある。
まあでも、一般的にはそんな感じだろう。
ゼロ戦そのものは見ないで、敵であるアメリカの機体を見てもいい。
例えばよく言われるようにF6Fはきわめて平凡な機体だ。

アメリカの青いデブ、ことF6F
スペックだけを見れば何のための2000馬力エンジンだ、という機体だね。
だが、これにゼロ戦はケチョンケチョンにやられる。
それは、F6Fが優れていた、というより、ゼロ戦が劣っていたと考えるべきだろう。
「F6Fってそんなにダメなの?」
ダメというより、きわめて平凡なんだ。
実際、この機体、1943年8月にデビューして、戦争直後の1946年7月には完全引退している。
米海軍を代表する機体のような印象があるが、その運用期間はわずか3年未満と、
米海軍機の中でもかなり短い方に入る。
アメリカも決してこのF6Fに満足してたわけではないんだね。
日本機相手なら十分だが、それ以外には使い道のない機体だったんだろう。
ただ、グラマンの名誉のために言っておくと、
この機体の本当の価値は、そのサバイバビリティーにある。
「サイババがリハビリ?」
生存性、のことだよ。
とにかく頑丈で、故障も少ないこの機体、それによって命を救われたパイロットは少なくない。
第二次大戦で、どの国も初めて大規模な航空戦を経験し、
その戦い方は完全に手探りだった。
でもって、航空戦において、もっとも重要な兵器はなんだったと思う?
「飛行機だろ、そりゃ」
違う。パイロットなんだ。
これはコスト面から考えて見ればわかるが、実戦で生き残れ、あまつさえ勝てるパイロットを
育てあげるのには間違いなく年の単位で時間がかかる。
あらゆる量産兵器の中で、製造に年の単位がかかるものなんて、
他には軍艦ぐらいなものだから、これはすごいことなんだよ。
そしてその育成に必要な航空機、燃料代まで考えれば、
第二次大戦時の戦闘機なんて、何機撃墜されても、タダみたいなもんなんだ。
だから、何十機空戦で撃墜されようが、パイロットさえ生還すればリカバリーは可能だが、
機体と一緒にパイロットも失われたら、たった1日の戦闘の損害を回復するのに、
何年もの年月が必要になる。
特に海上戦の場合、撃墜されてしまったら、パラシュートで脱出したところで、生存回収の可能性は低い。
人類60万年の歴史で、太平洋クラスのだだっぴろい海で戦略レベルの空戦をやったのは
未だに日本とアメリカだけだが、この点の考え方が違っていた。
F6Fは結果的にそうなった、という部分もあるのだが、その頑丈さ、とにかく生きて帰れる機体だった、
というのは「数字には現れない優秀さ」だったりするんだよ。
ついでにアメリカが潜水艦まで動員してパイロットの回収にあたっていたのは、
人道的な面もあろうが、なによりその兵器としての「コストの高さ」を認識してたんだろうね。
いや、ハルゼーとかハルゼーとか、認識してなかったぽいのもいるけどね(笑)。
とりあえず、ゼロ戦、大戦に参戦した国の中で、技術的にはトップグループからは2年は遅れていたろう。
ゼロ戦が初飛行した1939年には、ドイツじゃすでに世界初のターボジェット機、
He178が初飛行に成功してるし、アメリカじゃとっくにB17にターボチャージャーを積んで量産に入ってた。
イギリス人が本機を評して
「開戦時の太平洋戦線ではあらゆる機体より優れた性能を誇った」
と書いたりするのは、言外に「田舎のお山の大将」というのを読み取れなくもない。
あの連中の言うことを素直に受けとるのは危険だと思うぞ。
まあ、ツボにはまれば、びっくりするくらい強さを発揮する機体だったのも事実だ。
特に相手があきらかに経験、技量で劣ってる場合ならまず負けない。
今回取り上げた「ポート(笑)」ダーウィンでの空戦、
日米ともに手探りだった珊瑚海海戦などでは、けっこう立派な戦果を挙げている。
とはいえ、その「強さ」が発揮できる機会はきわめて限られていたのも事実で、
米軍が実戦経験を積んでくると、そう簡単には勝てなくなってくる。
当時の日本の技術では限界だったのだろうし、よくやったなあ、と思うのだが、
結果が全ての戦争に使うにはちょっとショボかった、というのも事実だ。
あと50年くらいして、もう第二次世界大戦が「完全に教科書で習う歴史的事実」になれば、
いろいろ冷静な分析は出てくるのかもしれない。
まあ、今回はとりあえず、ここまでとします。
「終わりなの?」
うん、おしまい。またね。
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