■スピット フォアイヤー!だよ全員集合



ロンドン帝国戦争博物館に展示されているスピットファイアMk.I。
すべてはここから始まった。
そんでもってなかなか終わらなかった(笑)。

ちなみに左上にはP51Dがいて、見えにくいですが右主翼下の奥に例の「ロンドン零戦」がいます。
その左、画面左端に見えるのは88mmFlak。…夢のような画像だな、これ(笑)。


スピットファイア戦闘機。
1938年の量産開始から、1948年の生産終了まで足掛け10年、約20000機以上が生産されたと見られている。
その間、エンジン出力は1030馬力程度から2350馬力まで跳ね上がり、
580km程度だった最高速度も720km超えた。
最初は固定2枚、しかも木製のノンキなプロペラだったのが、最後は
2重反転6枚ペラまで行ってしまう。
さあ、皆さん、ご一緒に。
「それって、もはや別の機体やろー」


その型番はMk.24まであって、事実上、その間に欠番はない。
海軍型のシーファイアなどもあるので、実際に開発されたタイプはもっと多い。
ざっと40近いはずだ。
多すぎる(笑)。よって、大戦機の中でもっとも有名な機体の一つながら、
もっともよく理解されていない機体の一つにもなってしまっている。
A、B(C)、Dだけ、あとはヒマだったらK&Hも思い出してあげてね、
などというP51ムスタングなどとはワケがちがう。
それだけに、この全タイプをきっちり説明した資料はほとんど無い。
なので作ることにした。

問題は、スピットのマークナンバーの命名の法則が結構やっかいということ。

どういうことか。
スピットファイアには通常の戦闘機型の他に、海軍型のシーファイア、
さらにPRナンバーを持つ偵察型が存在する。
これらの3タイプは全く別々に進化し、それぞれ勝手にナンバーを付けられていたのだが、
Mk.X(10)以降、これを通常のスピットのラインナップと統合してしまった。

具体的には、一桁台のマークナンバー、IからIX(9)までは、
通常のスピットファイアも、偵察型も、シーファイアも、それぞれ存在する。
たとえばMk.IやIIといわれても、それが戦闘機型のスピットなのか、
偵察型なのか、あるいは海軍のシーファイアなのか、区別できない。
だが、10番台以降の各スピットには同じナンバーが振られた機体はなく、
Mk.XII(12)といえば通常のスピットファイアだし、XIII(13)なら偵察型、
XV(15)なら、それはシーファイアなのだ。

どうも、空軍省(Air Ministry)が似たような名前の機体ばかりでまずいと思ったらしい。
1964年までイギリスに存在したこの省は、主に空軍を取りしきったが、
その機体配備の権限は海軍航空隊(FAA/Fleat air arm)もその管轄対象としていたのである。

が、全種類をあわせたら、それこそ4ヶ月足らずに1機の新型機が登場していた
スピットファイア、途中でどうも管理が面倒になったようで(笑)
シーファイアのナンバーを、スピットファイアの開発を見越していきなり17から45に跳ばしてしまった。
だが、実際にはスピットファイア、偵察型は19、戦闘機型も24で打ち止めとなってしまった。
このため、30番代は1機もない、という変なラインナップとなっている。

ちなみに、その偵察型、これが分類の上で実にやっかいなのだ。
途中でネーミングをいっせいに変更したので、
同じ機体が別のマークナンバーを持っていたりする。
ほとんどの資料でも、この点は混乱が見られる。
可能な限り正確を期するが、この点に関してのみは、若干、不安が残るのはご容赦願いたい。



RAF博物館に展示されている「最後のスピットファイア」Mk.24。
キャノピーは水滴型に、プロペラは5枚に…というかMk.Iとの共通部分を探す方が難しい。
思えば遠くに来たもんだ。



マーリンエンジン搭載のマーリンスピットとグリフォンエンジン搭載のグリフォンスピットがあるのは
知ってる人も多いと思うが、それ以外にも用途によって以下のように分かれる。

1. 空軍向けのスピットファイアと海軍向けのシーファイア。
基本的には同じ機体だが、エンジン、主翼の構造、着艦装置の有無等が一部異なる。
むろん、空軍のスピットファイアのほうが主流だ。

2.戦闘機型と偵察型
スピットの特徴として、異常なまでの偵察型のバリエーションの多さがあり、
実はほとんど使い道の無かったグリフォンスピットのMk.XIV(14)なんて、
全生産数の半数以上の機体が、偵察装備も積めるように造られていた。
いわゆるFRナンバーの機体である(FR.Mk.XIV。RはReconnaissance/偵察、の頭文字)

戦闘機として認識されているスピットだが、偵察機としても極めて優秀で、
大戦中の歴史的作戦の影で、かなりの活躍を見せている。
アメリカはより大型のP38ライトニング双発戦闘機を偵察用途に使っており、
公平に見て、こちらの方が優秀だったが(冬季は除く)、イギリス空軍はスピットをかなり有効に使いこなし、
その活躍は決して見劣りしないのである。

で、偵察型は独自のナンバーを持っていてPR Mk.I(1)からMk.XIX(19)まで存在する。
PR Mk.Iと通常のMk.Iでは全く別の機体なので注意が必要だ。
X(10)以降は、先に述べた理由によって、その混乱はない。

また、当初、偵察型はスピットファイア A型、B型といった呼び方がされていて、
F型まで行った段階、1941年の秋ごろ、改めてPR Mk.のナンバーに変更された。
(G型まで行った、とする資料もある)
このため、PR Mk.I(I)からMk.VI(6)までは、スピットファイアA型、あるいはPR Mk.Iという、
二つの名前を持ってしまっていて、ややこしい。
さらに初期のA、Bあたりはこの段階では引退してしまっており、
運用中にはPRナンバーで呼ばれたことは無かった。ホント、ややこしいのだ。

えらく長くなってしまったが、前口上はここまで。
次ページで、いよいよ完全無欠(自称)、日本初(超自称)スピットファイア完全一覧表の登場です。


NEXT