■ハインケルHe162A フォルクス イェガー(ザラマンダー)
Heinkel He 162A Volksjager (Salamander) !注意 フォントの関係で正確なドイツ語の綴りではありません。
ドイツの「国民戦闘機」ことHe162A。
戦争末期に「パーっとつくれて取り扱いは簡単で、メチャ強い飛行機が欲しいの」
というドイツ空軍ことルフトバッフェによる「あなた様はアホウですか」的要望に応えて開発された単発ジェット戦闘機。
この空軍の断末魔的ヒステリーにうっかり返事してしまったのが、今まで散々冷や飯食らわされてきたハインケル社。
それまでいい思いをしてきたメッサーシュミットやフォッケウルフは、この計画からさっさと逃げ出します。
両者にとって悲劇に終わる点も含め、リア王と三女の関係みたいなもんですかね(笑)。
ちなみに162って名前はMe262の弟分って感じですが関係あるのかしらん?
戦争終了前に完成したものの、事実上、戦局への影響はゼロ(涙)。
実戦配備についたのが1945年4月10日ごろとみられてますから、もうドイツ降伏まであと一歩ですからねえ…。
この機体に乗ったパイロットから、ミーがテンペストを撃墜したザンス!と最低でも2回申請が出てるようですが、
全ての撃墜申請は認定を却下されており、公式撃墜記録はゼロです。
英軍の記録を追うと、このころテンペストが1機だけ該当空域で行方不明となってるそうなんで、
かぎりなく撃墜の可能性がある、ということでしょうか。
他にも、捕虜のイギリス人パイロットが単発ジェット機に撃ち落とされた、と証言してたりするらしいんですが、
これを撃墜したと思われる肝心のドイツ人パイロットも同じ空戦中に撃ち落とされてしまい、
結局その真相は不明になっちゃった、という話もあり。
ついでに、ニックネームにも混乱があり、日本じゃ通りのいいザラマンダー(ザだよ)ですが、
これは本来、このめちゃくちゃワヤヤな機体製造プロジェクトへのネーミング。
空軍省はフォルクス イェガーと命名し、ハインケルはスパッツ(Spatz/すずめ)と
えらくまた控えめなネーミングをしています。
ただ、機体本体もザラマンダーと呼称していた、との話もあり、私の知識では、
どれが正解なのかはよくわかりません(無責任)。
ドイツ語の資料、嫁ない、否、読めないし。
客観的に見てドイツ軍の公式名称はフォルクスイェガーだったように思いますが…。
いずれにせよ、ドイツの戦闘機としては珍しい、正式なニックネーム付きの機体であったのは間違いありません。
ちなみにこの機体、現存機は6-7機とその生産数(200機程度)
のわりには多くの機体が生き残ってます。
■2002年5月 アメリカ プレーンズ オブ フェイムにて撮影

プレーンズ オブ フェイムのA-2型。ナンバー120077機。
小さいよなあ。ジェット機界の50ccスクーターってな感じでしょうか。
まあ、小さければ使用する資材も少なくてすむわけですが。
He162は、背中にジェットエンジンポッドを背負ってる、という極めて珍しい形態なのですが、
エンジンポッドの形状は単純な円柱ではなく、その前部などはけっこういびつな形です。
コクピットは一応全周を見回せる水滴型ですが、エンジンがあの位置では後方視界はどうだったのかなあ…。
風防とエンジンポッドの間にくぼみを造ってしまうような形状ですから、空力的にはマイナスのような気も。
また、この配置のため、通常の脱出では飛び出した直後に背後のエンジンに直撃され即死の可能性大、
なので、ハインケルお得意の射出式脱出シートを備えてます。
あの時期にパイロットの生存性の向上まで気を配っていたのは評価すべき点でしょう。
ただし、現存機を見る限り、シートなんていうレベルのものではなく、
あれで機外に高速で打ち出されるってのは結構恐怖ですな。
まあ実戦で射出脱出に、ちゃんと成功してるそうですが。
ちなみにタミヤの1/48キットのパイロット、ヘルメットもどき(?)をかぶってますが、
あれは射出前にキャノピーの投棄に失敗した時、ドタマでキャノピーをぶち破るためのものでしょうね。
まともなパイロットの写ってる写真を未見なので、断言できませんが。
(最初、「世界初の射出座席搭載機」と書いてしまいましたが間違えです。
訂正しておきました。詳しくはルッサーの話で)

ジェットエンジンの排気がありますので、尾翼は左右二つにわかれます。
ここの展示のエンジンはノズルが引っ込んだ状態。
ただし、多分、あれはレプリカパーツです。
後で出てくる帝国戦争博物館は、飛行中の飛び出た状態になってます。
とんがった尻尾がちょっとラブリー。
ご覧のように車高(?)は極めて低く、ラダーもなんにもなしでヒョイと乗れそうです。
この機体、経験の浅いパイロットでも使える、という点も要求されていたのですが、
ジェット化により、地上での視界がいい前輪式にできたのは、扱いやすさに大きく貢献したように思います。
しかし主脚の位置、えらく前だな。これ、地上での重心、かなり不安定だったのでは…。
ちなみに主翼のフラップの上げ下げは、4号戦車の末期型砲塔同様、完全人力式だったとの資料あり(確認はとってない)。
ホントだとたら、そりゃあんまりだ…。

コクピットを横から。
風防(コクピット前面の〔有機〕)ガラス部分)が1枚の板を丸く整形しただけのモノなのに注意。
他の機体の写真を見てもらえればわかりますが、普通は照準用視界確保の意味と、厚みのある防弾ガラスを入れるため、
正面は板ガラス、その横に別のガラスを組み合わせ箱型にする、というのが一般的。
(言葉では説明しにくいので、この写真
を見てください)
これ、むしろ最近の最新戦闘機などと似た造りではあるのですが、さすがに時代を先取り過ぎ(笑)。
生産性を上げるための工夫の一つだったのでしょうが、これでは、前方の景色が歪んでしまい、
照準をつけるのさえ苦労したんじゃないかなあ。
NEXT