■スペースシャトルの実績

さて、そんなスペースシャトルの要となる軌道船は引退までに最終的に6機造られました。
(宇宙飛行できない1号機、エンタープライズを含む)
NASAではこれを往還機飛行団などと呼んでます。
(shuttle fleet/このfleetは艦隊ではなく特定の乗用機の集団の意味)

最低2名、通常7名、最大8名が乗れる前代未聞の大型宇宙船である
シャトルの軌道船はその135回の飛行任務で、延べ852人、
16か国にもわたる人たちを地球周回軌道に運びました。
さすがに新時代の宇宙船というか、21世紀の宇宙計画でも、
これだけ大型のものは当面、登場しない予定になってますから、
いかにスゴイか、というのがわかります。

ただし、これ延べ人数で実際は複数回飛んでる宇宙飛行士も多く、
実際の宇宙に行った人数は狙ってやったのか(笑)356人ほどのようです。
ちなみにその内49名が女性で、アメリカ初の女性宇宙飛行士、
サリー・ライド(Sally Ride )もスペースシャトルによる飛行でした。
(厳密にはチャレンジャー最後の飛行となったSTS-51Lの7人は宇宙に到達してないので、
上の数字から7人引く必要があるが…)

ついでに、最大の飛行回数を記録したのは、ジェリー・ロス(Jerry Ross )と
初のヒスパニック系宇宙飛行士だったチャン-ディアズ(Franklin Chang-Diaz)
で7回もシャトルで宇宙まで行ってます。

この軌道船にはそれぞれ名前があるのはご存知の通りで、
ここでは、機体の完成順に並べ、
全部で135回の飛行任務における主な実績を合わせて記載しておきましょう。

この内、6番機のエンデヴァーは当初の計画には無かった機体で、
1986年1月のチャレンジャー号爆発喪失事故を受け、
計画通りの機体数を再度そろえるために急きょ建造されたものとなります。

 OV-101 エンタープライズ  大気圏内テストのみ
 OV-102 コロンビア 
2003年2月大気圏突入後、熱による機体破砕により損失)
 飛行回数 28回 総宇宙滞在300日+約18時間
 OV-099 チャレンジャー 
(1986年1月打ち上げ直後、SRBの破損により損失)
 飛行回数 10回 総宇宙滞在62日+約8時間
 OV-103 ディスカヴァリー  飛行回数 39回 総宇宙滞在364日+約22時間
 OV-104 アトランティス   飛行回数 33回 総宇宙滞在306日+約14時間
 OV-105 エンデヴァー   飛行回数 25回 総宇宙滞在296日+約3時間

これを見ると判る通り、6機の内、2機が事故損失で失われており、
実際に大気圏外飛行を行った5機で考えると全機数の40%が失われた、
恐るべき宇宙船、というか運送機関でもあります。

宇宙船という特殊な環境を考慮しても、あまり褒められたものでは無く、
システムの根本部に欠陥があった、と見るほかないでしょう。
ある意味、よくこれを31年間も飛ばしたな、とも言えます。

ちなみにシャトルの飛行任務は前にも書いたように全135回でしたから、
2回の事故は全飛行の1.5%に過ぎない、とも言えます。
が、旅客機などでこの事故率だとしたら、
毎日世界のどこかで墜落事故が起きてる計算になってしまうのです。

例えばボーイングの767旅客機は1981年の製造開始から、
既に1000機を超える機体が造られてます。
その7割が今でも現役、内2割程度の機体が常に整備に回されてるとしても、
(平均飛行時間4500時間以上で1週間の整備に回されるはず)
毎日500機以上の機体が世界中で飛んでる事になります。

となると、飛行事故率1.5%では毎日平均7.5機もの767が
世界中のどこかで墜落してる事になるのです。

そもそも従来のロケットより頻繁に何度も宇宙と往復する前提で
造られた輸送機関ですから、宇宙船という特殊条件を考慮しても、
この事故率では実用に耐えない、という部分があります。
安全性という面から見ると、限りなく欠陥機に近い輸送機関、と考えざるを得ません。

ただし2回の事故は発射直後、および大気圏内突入後、
すなわち全て大気圏内の事故で、宇宙空間では一度も事故は起こしてません。
もう一つのNASAの宇宙飛行士死亡事故であるアポロ1号は、
先にも書いたように発射台の上での事故でしたから、
NASAはいまだに宇宙空間では死亡事故を起こしてないのです。
この辺り、離着陸の事故が一番多い、旅客機と何か似てる部分がありますね。

ついでに、シャトルの飛行任務には全てSTS番号が振られてるのですが、
これが意外に法則性が無い、というのもここで触れて置きます。



この1981年の最初の打ち上げの飛行任務番号がSTS-1であり、
2011年に大なわれた135回目となる最後の打ち上げの任務番号がSTS-135でした。
これだけを見ると打ち上げ順に任務番号が振られてるように思ってしまいますが、
実際はそんなに単純では無かったりするのです(笑)。




とりあえず一桁台の飛行任務番号、すなわちSTS番号と、
打ち上げ順は完全に一致してますから、ここは問題なし。
例えば飛行任務STS-1が最初の打ち上げで、STS-9は9回目の打ち上げです。

ところが10回目の打ち上げからいろいろ怪しくなってきます。
飛行任務番号STS-10から25はなぜか欠番で存在せず、
次の飛行任務番号は、いきなりSTS-26Rまで飛んでしまいます。
さらに数字の最後にアルファベットが付いてるのですが
これの意味もよくわかりませぬ。

さらに打ち上げ準も滅茶苦茶で、10回目の打ち上げは
任務番号だとなんとSTS-41Bまで順番が飛んでしまってます。
この辺りの理由はどうもよくわかりませぬ。
ちなみにチャレンジャーが事故で失われた時の飛行任務番号はSTS-51Lですが、
これもシャトルの打ち上げの回数で言ったらまだ25回目の飛行でした。
(チャレンジャーとしては10回目の飛行)

さらに同じ番号を何度も使ってたりすることがあり、
例えばSTS-41、STS-41B、STS-41C、STS-41D、STS-41Gと、
41の番号が付く飛行任務は全部で5つもあったりします。
でもって、これらの任務内容はそれぞれ全く別々で、
なんで同じ番号を使ってるのか、よくわかりませぬ。

ただしNASA自身もワケがわからん、と思ったのか、
1996年2月の75回目の打ち上げで、任務番号を打ち上げ回数と同じSTS-75に戻し、
以後は多少数字が前後する事があっても、
基本的に打ち上げ回数と飛行任務の番号は大きく乖離しなくなります。

もう一つ、シャトルの軍事利用も少しだけ触れて置きましょう。
シャトルの運用の内、最初の10年ほどはまだソ連との冷戦時代でした。
このため1982年6月のコロンビアによるSTS-4(4度目の飛行)から
冷戦終了後の1992年12月のSTS-53まで、
少なくとも10回以上の国防省からの委託による打ち上げが行わてます。
(いわゆるDoD任務。DoDはDepartment of Defense、国防省の略称)

その多くはスパイ衛星の打ち上げだったようですが、
いくつかの飛行は極秘扱いの任務で、未だにその内容は公開されてません。
この辺りは、いつか情報公開が行われるまで、詳細不明のままでしょう。


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