■後部のRCS周りなど

さて、ここでもう一度、同じ写真を。



コクピット後ろから、機体後部のエンジン手前まで、
胴体横に黒いシールのようなものが点々と見えてますが、あれが貨物室のヒンジ部。
前部、後部でヒンジの大きさが異なるんですが、理由は不明。
ここから貨物室の扉が手前に開き、上から見ると左右に観音開きで開くのです。

となるとシャトル軌道船の機体背中部分に
なんら貫通する支柱は無く、機体が折れないようにする全体の強度は
機体下部だけで維持されてる事になります。
よくまあそれでこれだけ巨大な機体の構造を維持できるなあ、と思いますが、
軌道船の場合、主翼は短いし(重量負担が小さい)、
派手な機動をするわけでもない、
という条件ですから、なんとかなるんでしょうかね。

この中の巨大な貨物室がシャトル軌道船の最大の特徴で、
国際宇宙ステーションあたり、高度400q前後までなら、
機体ごとの差があるものの20〜24トンの貨物を積んで飛ぶことができました。
(コロンビアが最も少ないのだが、正確な数字がわからない。それでも20tは積めたらしい)
前にも書いたように、ロケットエンジンの燃料を外部タンクに移した結果、
これだけの貨物室が確保されたわけです。

もっともアポロ計画で使われたサターンV(5)などは最大搭載量100tを超えてますんで、
それに比べれば、ずっと小さいんですけどね。

で、機体の最後尾の上、
垂直尾翼の横に飛び出してる箱状の部分が、
後部の姿勢制御装置(RCS)設備(Module)です。
ただし後部のはOMS、軌道上操縦装置エンジンも
(Orbital Maneuvering System (OMS) engines)
一緒に組み込まれてるため、この分離可能な箱状部をOMS/RCSポッドと呼ぶようです。
せっかくなので尾部の構造を少し詳しく見て置きましょうか。



まず1番から。
この胴体から飛び出した箱状の部分がOMS/RCSポッドで、左右に2個、これがあります。
姿勢制御装置(RCS)の噴射孔は最後部に飛び出した小さな箱状部分に全てが集められてます。

で、2番の数字の先、やや小さ目なノズルが軌道上操縦装置エンジン(OMS)のもの。
当然、これも左右で2個あります。



下から見たOMS/RCSポッド部分。
この機体最後部の小さな箱状部にジェット噴射孔を全て集めてあり、
写真では見えてませんが上側の噴射孔もここにあります。

後部には重量物のエンジンなどがあるため、前部が1基だけだったのに対し、
外付け形式の構造(Module)として左右に2基付いてるようです。

その奥のポッド本体の中には宇宙空間で使用されるOMS、
すなわち軌道上操縦装置エンジン(Orbital Maneuvering System (OMS) engines)の
ロケットエンジンと、その燃料タンクも収容されており、
これが宇宙空間におけるシャトル軌道船の動きを
制御する心臓部となってます。

左側に見えてるやや小さなロケットノズルがそのOMSエンジンのもので、
これは宇宙空間に出た後に使われるロケットエンジンであり、
高度変更のための加速と減速がその主要目的になってます。

何度も書いてるようにメインエンジンの燃料は外部タンクを切り離した後、
供給が無くなってしまうので、以後はこの小型ロケットで
必要な軌道に乗るまでの加速、逆に軌道を低下させるための減速を行います。
(軌道船が落下せず地球周回軌道を飛べるのは、引力と釣り合う遠心力を
周回速度で生み出してるからだ。そして高度によって引力が異なる以上、
軌道船の飛行高度の変更するのは、速度調整による)

ちなみに加速はこのまま点火すればいいだけですが、減速はちょっと面倒で、
姿勢制御装置(RCS)の噴射で機体を180度くるっと回転させ、
尾部を前に飛んでゆく飛行姿勢にした後、このロケットエンジンに点火します。
ちなみに大気圏再突入の減速時も同じような手順を踏みます。
一度、180度回転して減速を行った後、
再度くるりと回転して通常の姿勢に戻り、機首を少し上に向けて突入するのです。
ついでに、OMSは打ち上げ時の姿勢制御にも使われてる、という話もあるんですが、
映像を見る限りでは確認できませんでした。

ちなみにこれも液体燃料ロケットエンジン(モーター)なんですが、
ヒドラジンを主燃料にしてるものらしいです。
その燃料もOMS/RCSポッドの内部に積まれてます。

さて、ここでもう一度同じ写真を。
残りの3と4も説明してしまいましょう。

 

次の3番の矢印、なんだか不思議な孔がたくさん開いてるパネル部は、
動力供給線接合部(Umbilical panel)。

Umbilical は直訳すると、へその緒で繋がれたような密接な関係の、という意味ですが
宇宙用語(?)では  宇宙船や、船外活動中の宇宙飛行士に電力、あるいは
燃料、空気などを供給する電線、配管を指す形容詞として使います(Umbilical cableなど)。

ちなみにシャトル軌道船の電力供給は酸素と水素の融合で発電する、
宇宙船では毎度おなじみの燃料電池を使ってます。
(発電の結果、水ができるので飲料水の確保にもなる)
が、発射後になるまで使えないのか、あるいは燃料を節約するためなのか、
発射台の上に置かれた状態のシャトルではこのパネルに
電源コードを接続して、電力供給を行っているのです。

発射時にこれが切り離されて、以後は船内電源に切り替えられますが、
この辺りは、アポロを打ち上げた時のサターンV(5)ロケットでも
同じような電力の動力供給線を使ってましたから、
何かロケットの構造上、発射まで船内の燃料電源が使えない理由があるのかも。
さらに電源以外にもコクピットと会話できる有線電話の線なども
ここで接続してるみたいですが、詳細は不明。

とりあえず、この接続部がむき出し状態で宇宙まで行って、
さらに大気圏に突入して戻って来てしまうんですから、
ある意味スゴイな、とも思いますね。



■Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)

例によって美しいNASAの写真ですが、注目は尾翼横、OMS/RCSポッドの下の
パネルに接続されてる赤やら灰色やらの配線です。
これが動力供給線(Umbilical cable)で、発射の時に自動的に切断されるまで、
上で見た接合部に繋がれ、軌道船に電力の供給などを行ってます。

で、その供給を担当してるらしいのが、左右の灰色の箱。

これは組み立て工場から発射台に向かう時の写真ですが、
この左右の箱は、この段階で軌道船と一緒に組み立てられ、
このまま発射台にまで持ち込まれるてるようです。
どういったものなのかは、資料が無く、よくわかりませんが。



で、最後は4番。
垂直尾翼下の切込み部分ですが、実はここにドラッグ シュート、
着陸後に開く落下傘が収容されてます。
よくこんな小さなところに入れたものだ、と思いますね。

ついでにメインエンジンの取り付け部にも注目。
ここは可動するので、ボールジョイントみたいな、
ちょっと変わった取り付けになってます。

といった感じで、機体前後の姿勢制御、宇宙空間での動力を見て置きました。
とりあえず、今回はここまで。


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