ななめ後ろから。10m以下の距離からの撮影なので、空戦時なら必殺の間合いからの撮影となります。
キャノピー(天蓋)は外に膨らんだマルコムフードとなっており、あの左右の膨らみに頭を押し付けて左右後方を見ます。実戦配備後、その戦訓から採用されたもので初期の生産機ではもっと狭い、視界の狭いキャノピー(天蓋)でした。
この機体はかなり初期の生産型なので、おそらく事故破損後の修理時にこのマルコムフードに付け替えたか、あるいは基地で整備に入った時に付け替えたかだと思われます。



ほぼ真後ろから。奥にJu-87が見えてますが、この配置は狙ってやったもので、スピットにカモにされるJu-87といった解説が現地にありました。まあ、連合国側の展示ですからね(笑)。
よく見ると主翼、尾翼の動翼は、Ju-87を追尾するためにゆるやかな頭下げ右旋回の位置でちゃんと固定されており、変なところで芸が細かいな、この博物館。
その垂直尾翼の方向舵を動かす索(ロッド)は左側だけにあるもので、しかもこの下側の一か所だけ、油圧の補助などもありません。これで高速時でも動いたんだ、と思う部分です。



よりアップで。

手前の方向舵(ラダー)と昇降舵(エレベータ)は羽布張り、布に防水の固形剤であるドープ塗料(ワニス)を塗ったものなので、内部の桁が浮き出て見えるなど質感が違うの判るでしょうか。
水平尾翼の真ん中のV字形の切り欠きは垂直尾翼の方向舵が左右に動く空間を確保したもの。

ついでに方向舵(ラダー)は頭のてっぺんが、昇降舵(エレベータ)では左右の端が前方に出っ張る形になってるのも見て置いてください。油圧補助が入る前の機体ではよく見られた釣合昇降舵と呼ばれたものです。この出っ張り部分は舵を動かすと舵の本体部分とは逆側に出っ張る形になり正面から強い風を受けますから、その力を使って舵を押し、操作を少しでも軽くしようという工夫でした。

各舵に付いてる小さい動翼はタブで、飛行中にこれを少し上げ下げして固定する事で機体の姿勢を安定させるもの。

ついでに方向舵の上の方に見えてるテープ補修跡は弾痕である、ということらしいんですが、だとすると70年以上、この羽布張りは張り替えられてない事になります。個人的にはちょっと怪しい気がしますが…

  

やや下側から。
Mk.V(5)まで、スピットの主翼下下面の冷却装備は左右非対称でした。左翼下にある丸い筒がオイルクーラー、右翼下にある大きな箱が液冷用のラジエターです。改めて見ると、やや変な印象を受ける部分でもあります。
Mk.IX(9)以降は、2段2速過給機の中間冷却器が追加されたこともあり、冷却力不足から左右とも巨大な箱型とし、そこに全ての冷却系を詰め込んでしまいます。



NEXT