■初飛行は遅かった

さて、お次は各国の主な戦闘機と、
ムスタング各型の初飛行のタイミングを比較してみましょう。
比較機体の選択基準は、戦況に一定の影響を与えた戦闘機、という点。

ちなみに、初飛行で判明した問題点を解決し、工場設備を用意するまで、
さらに各部隊の訓練期間を含むと、
初飛行から実戦投入まで半年から1年後かかるのが普通です。

ただ、その機体に取り込まれてる技術レベルはほぼ初飛行の段階のままなのが普通で、
このため、性能比較を考えた場合、これがもっとも妥当な比較手段となります。
この時代、3年あれば完全に新世代戦闘機になってしまってますからね。
例えば1934年9月に複葉で一部羽布張り戦闘機のグラディエーターを初飛行させてた
グロスター社なんて、8年半後の1943年3月には既にジェット戦闘機の
ミーティアを初飛行させてたわけです。
航空自衛隊が8年前に使っていた機体と現在使ってる機体の差を考えると、
この時代の進化の速さがわかると思います。

ついでにこの年表に登場しない、すなわち第二次大戦開始以前に飛んでた
スピットファイアやMe109の初期型、
さらにはP39、P-40、F4Fなどは、既に一世代古い機体になっていた、
と考えてほぼ問題ありません。

この内、エンジンのパワーアップで大戦途中の1941年ごろまで
一線級の性能を維持したのがMe109、さらに終戦時まで一線級の性能を維持したのが
スピットファイアだ、という事になります。
エンジン性能ってホントに重要なんですよ。




まず注目はヨーロッパにおける第二次大戦開戦の年、
1939年の段階で初飛行した機体の多さ。
双胴の戦闘機P-38、日本の代表選手ゼロ戦、
そしてドイツの主力戦闘機2号 Fw190がその前半に一斉に初飛行してます。
この辺りは、すでに世界がキナ臭くなっていた時代の反映でしょうね。

ムスタングの初飛行はその翌年、40年の10月ですが、
これは海軍のF4Uから半年遅れ、そしてMe109シリーズで最も成功した、
というかほぼ唯一、連合軍側の戦闘機を圧倒してしまった機体、
Me109 F型の登場とほぼ同時です。
(以後のG型以降のMe109は、ひたすらジリ貧となる)

ムスタングの後から初飛行した主な機体は、P-47、F6F、疾風(はやて)と
そこそこありますから、ちょうど中間世代、という感じでしょうか。
ついでに今さらですが、日本では戦争後半に登場した新鋭機、
という印象が強いムスタングながら、
年表を見ればわかるように、すでに日米開戦前に初飛行してます。

さらに言うと、ヨーロッパ戦線ではP-47の爆撃機護衛任務を
P-51B型以降が引き継いだため、P-51の方が新型、という印象がありますが、
実際はP-51の方が約半年ほど早く飛んでるのです。

もう一点の注目は2段過給のマーリン60シリーズを搭載した
スピットファイアMk.IX(9)の登場時期と、XP-51Bの初飛行の時間関係で、
スピットにおける2段過給マーリンの成功が、ムスタングに影響してる、
というのがよく判る時間関係になってます。

ついでに初飛行から2年近く、ほぼ大きな動きが無かったのに、
41年12月の日米開戦、そして42年末ごろからの対ドイツ長距離爆撃
の本格化に伴って、一気に開発が進む様子も見て取れると思います。

この辺り、戦闘機の開発において、在るべき時に、在るべき場所にある、
という点が非常に重要な点なのだ、というのがよくわかるかと。


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