■ロンドン RAF博物館編

まず最初はロンドンにあるRAF博物館で展示されてる機体から。
RAF博物館の展示はイギリスでもトップクラスの状態の機体が多いのですが、
Me262に関してはちょっと微妙と言うか、最低限のレベル、という機体で、
あまり資料性という面では期待ができませぬ。

その代わり、明るくて広い空間に置かれてるため、撮影条件は良く、
機体の全体像を把握するには最良の展示でしょう。
とりあえず、そういった感じのものだ、と割り切って見て下さい。

この機体、ドイツでの製造番号はW/NR.112372、
イギリスで散々テスト飛行に使われたため、
イギリス空軍のシリアルナンバーも持っていて、それが VK893。
よって、VK893でフォルクスやくざ号と個人的には呼んでます。
でもって最初に見たRAEによるテストデータも、
どうもこの機体によるテストの可能性が高いです。

1944年12月製造の日付が機体内部で見つかってる、との事で、
さらに最初のMe262戦闘機部隊、
ノヴォトニー戦闘団(JG7)に1945年3月に配備された記録があるとか。
(この段階では既にノヴォトニーは戦死してるが)
最終的に1945年の5月8日にソ連占領地域を逃れ、
イギリス空軍に投降するため飛来した6機前後のMe262の中のひとつ、とされてます。

ただし、どうもキチンとここら辺の情報を管理してなかったようで、
実は別の機体ではないか、という話もあるようです。
そもそもこの機体、複数の機体のパーツを寄せ集めてる、という話もありますし…。

1947年には各種試験も終わって展示用にされたらしいのですが、
その後、各地をたらいまわしにされ、屋外保存の期間も長く、
74年の段階で既に、計器類や備品は全部失われていた(盗まれた?)そうで、
まあ、そういう経緯からも、オリジリティは期待できないわけです。
さらになぜかRAF博物館、この機体に関してはあまり熱心にレストアした形跡がないんですよ…。



おそらくこの角度が一番カッコいいんじゃないか、と思われる全体像の写真から。
ドイツ機の特徴(笑)として、見る角度によってはイヤンてなくらいダサイ、というのはMe262もあり、
この点はまた後で見て行きます。

いきなり手前の翼端灯が失われているのがわかりますが、
まあ、全体的にこんな感じの機体なのです。

現地の解説板ではA-2aとなっていましたが、A-2aには二門しか積まれてないはずの
機首の30mmの銃口が4つありますし(笑)、いくつかの資料ではA1-aとされているので、
この記事でも1-aとしておきます。
どうも製造番号W/NR.112372はA-2aだった、という事らしいですが…

ここら辺り、先に書いたような理由で、機首部だけA1-aのパーツで全体はA-2aという可能性もありますし、
そもそもドイツ軍自身がパーツの共食いで稼動機を確保していたので、
ここら辺りはどうも微妙なところがあります。
いずれにせよ機首の機関砲以外で両者の判別は難しいので、私には判断がつきませぬ。 



ほぼ主翼の高さから見た、反対側。
こうして見ると主翼が薄いのも判ります。なるほど、高速機だ。
水平尾翼が垂直尾翼の途中から飛び出してるのはBf-108以来の伝統ですかね。

エンジンナセルが意外に前のほうにあるのもこの機体の特徴で、
コクピットより前(キャノピー後端部より前)に重量物である燃料タンクと武装が集中してるため、
重心位置が結構前の方になるみたいです。

この機体の主翼が後退翼になった理由が重心の調整だったことはよく知られてますが、
アメリカ陸軍の飛行マニュアルにも重心位置の丁寧な説明があり、
飛行中の重心調整もデリケートだったんでしょうか。

手前の黒人のお兄さんは博物館の職員で、とても親切な人なんですが、
写真を撮ってると、どこから来たの?こんなのより、あっちの飛行機の方が珍しいぜ、
などなどいろいろ話しかけて来て、ちょっと落ち着きませんでした(笑)。
途中で学生の集団が来たので、そっちに注意が移ってくれて救われましたが…。



残念ながら真正面から写真が撮れないので、とりあえずこの角度から。
ロッキードがイギリス空軍にプレゼントした余計な模型が左手にあってとても邪魔。
おのれロッキード。

この写真でも前輪のブレーキパイプが全く無い、
両エンジンコーン(円錐部)の穴に金属片がな無い(後述)など
まあ欠損部品だらけだ、というのが見て取れます。
ついでに前輪の横側カバーも形状が変で、これも後から適当に補修したものでしょう。

うーん、どうしちゃったんだ、RAF博物館…
まあ、雰囲気を楽しむ機体、と割り切りましょうか。

ちなみに戦争末期の機体であるMe262は木製パーツ部がいくつかあり、
車輪のカバー類はほとんどが木製(合板)製です。



少し高い位置から。 
…おのれロッキード。

機首先端部の小さな丸窓はガンカメラ、
射撃のときに作動して撃墜判定などに使うカメラのもの。
ただし窓は開けたものの、実際に1945年のドイツ空軍が
そんな装備を積んで飛んでいただろうか、という疑問はありますが…。

でもって機首に4つの銃口が開いてるのがバッチリわかるかと(笑)。
機首下で、斜めに開いてる四角い穴は薬莢排出用のもの。


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