■レツゴー ウルフ



FW 190 F-8/R1  931884番機。

Fw190は大きく分けて三つのタイプがある。
空冷エンジン搭載型がまず二つ、純粋な戦闘機のA型、
A型を改造して戦闘爆撃機にしたF型(短距離向け)/G型(長距離向け)。
そんでもって目的があるような無いようなよくわからん動機で、
エンジンを水冷に積み替えた後期戦闘機タイプのD型(長鼻のドーラ)、だ。

今回は空冷エンジンの機体を見ていこう。写真は戦闘爆撃機型のF。
東部戦線にいた機体なんですが、終戦間際にソ連につかまったらオシマイざます、
とアメリカ軍の占領地域まで飛んで来て降伏した機体らしい。
よって、鹵獲時のコンディションは完璧です。いいなあ。
ちなみにこれ、アメリカ到着後は試験等には使われておらず、
1949年にはスミソニアンのコレクションに加わっていたようなんで、
いろんな意味で理想的なコンディションでしょう。

このF型は1943年末に戦闘機型のA7として完成したのを、後に改造してF-8としたもの。
もちろん、ドイツ閣下オリジナル改造で、スミソニアンが勝手にいじったわけではないです。
具体的には主翼を爆弾搭載可能なものに丸ごと交換(同時に主翼の機関砲の数も半分に)、
防護用の装甲板をコクピット周りに追加してます。
機体下の爆弾懸架装置は、A型にも取り付けられたような感じですね。
ここら辺、スピットファイアなどもそうですが、造った後に改造でサブタイプが変わる、
という機体はヨーロッパじゃ珍しくありません。
ここら辺が分類のややこしさの一因でして、Me109の後期生産型などは、
これのおかげで、悪夢のようなバリエーション展開となり、未だによくわかない部分が多いのです。

さて、戦闘機に爆弾積んで意味あるの?というのは誰でも考えます。
これの意味、メリットは二つあるのです。
一つ目はもともと高速な戦闘機ですから、それを活かして敵地に侵入できること、
二つ目は、従来の機体の改造ですから、一から高速爆撃機を造るより簡単なこと、ですね。
そして、高空性能がまるでダメ、というFw190ですが、中低空でなら、
最後まで一流の性能を維持してました。
よって、その空域が主戦場の戦闘爆撃機にはうってつけ、だったわけです。

私の秘密研究によれば航空機に搭載された爆弾の99.7%までは敵に落っことすものらしいので、
(残りは支払いの溜まった飲み屋に落とす)当然、敵の制圧地上空を飛ぶ必要があり、
それは敵の戦闘機が元気に活動してるエリアである可能性が高い。
なんで、とにかく高速でなければ猫の前にヒキガエルが腹を出して飛び出すようなもんで、
自殺行為以外に適切な日本語が存在しない世界となります。
このため、爆撃機といえど、高速性はとても重要でして、
ドイツの開戦時の主力急降下爆撃機、Ju87あたりじゃ戦争中盤以降では
カモ以外の何者でもない、という状況になってゆくのです。

もっとも、戦闘機だからと言っても爆弾積んでスピットやサンダーボルトに喧嘩を売ったら、
それは事実上、3キロのダンベルを縛り付けたハムスターが、
腹を上向きに猫の前に飛び出して行くようなもの。
爆弾は空気抵抗のカタマリですし、そもそも重量増によって
その運動性は劇的に低下しますから、爆弾投下後でなければ勝負になりません。




機体正面から。
機体先端部、プロペラスピナーに描かれたグルグル巻きはドイツ機の特徴の一つですね。
真正面から見て、あの機体はなんですか?という質問は難易度が高く、
ましてや戦争中で、空の上となると、その難易度は一段と高くなります。

よって、
あの必要以上に元気にこっちに向かってくる機体は、オレを撃ち落とそうとしてるヤンキーのムスタングか、
それとも仲間を見つけてうれしくてしょうがない友軍のMe109か、どっちやねん、
まあ、とりあえず撃ち落としておくかー…あー、残念、友軍のMe109でした、
という悲劇を避けるため、敵味方識別用に渦巻きがスピナーに塗られた、というのが通説。



主脚の収納とフラップは電動なんですが、大戦期の単発戦闘機では唯一の採用例かも。
(三菱の雷電も電動だ、との指摘をもらいました。なので、唯一ではないですね)
戦闘爆撃型の特権、翼面下に搭載された50kg爆弾。
片翼に2発ずつ、計4発搭載できるほか、胴体下に250kg爆弾も一発積めますから、
計450kgの爆弾が搭載でき、Ju-87スツーカの初期型並の搭載量を持ちます。
となれば、低速で被害ばかりが増えて行ったスツーカを使う理由は何もなく、
地上部隊の支援に使われる機体はFw190に順次切りかえれらて行く事になります。

主翼と爆弾の間にある投下装置(?)、よく見ると短いコードで主翼に接続されてますんで、これも電動なんでしょうか。
主脚カバーにあるのは、脚緩衝部の沈み込みによって、重量オーバーしてないか見るための目盛り。
あと、胴体後部下面に機位確認用のループアンテナがあるのもFw190の特徴の一つ。



こちらは胴体下面の爆弾。おそらく250kg爆弾。
ああ、ドイツの爆弾はkg表示でわかりやすくていいねえ。ポンドとかは何度聞いてもピンときません。
横から延びてる細い支えは、おそらく飛行中の振動防止用で、
これで爆弾を支えてるわけではないはず。懸架装置、意外に複雑な形状をしてます。

手前左側の主翼下面の穴は、多分、20mm機関砲の排莢孔。
空冷式のFw190の戦闘機型と戦闘爆撃機型の最大の違いが、
この主翼に搭載された20mm機関砲の数で、
戦闘機型の片翼2門×2の計4門という強力な火力に対し、
戦闘爆撃型は半分の片翼1門×2の計2門となっています。

重量物である機関砲を半分に減らしており、機首部に7.92mm機関銃2門があるとはいえ、
その火力はゼロ戦並みにまで低下しています。
爆弾を積んでも高速性を確保したい、でも最低限の武装は残したいしー、
というジレンマの妥協点がこのアタリだったんでしょうね。
ちなみにA-7以降、機首の機銃が13mmのMG131に強化されてます。
この機体はA-7からの改造ですから、13mmになってますね。

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