■音をめぐる戦い
さて、とりあえず、今回で超音速大脱線を終わらせますぜ。
なので、ここまでに見てきた超音速飛行に関する問題と対策を一度まとめてみましょう。
音速突破前と、突破後に分けると、以下のような感じになります。
■音速飛行以前(マッハ1まで) 問題点 2つ
●問題 その1 翼面上衝撃波●
まずマッハ0.7(厚翼)〜0.8(薄翼)辺りから、気流が加速される翼面上で
音速以上の流れが発生、これが翼の上で垂直衝撃波を生む。
その結果、主翼の失速が発生する上、水平尾翼もコントロールを喪失、
さらには造波抵抗&空気抵抗源となる、といった事になってしまう。
つまり、まともに飛べない状態に。
▲対策▲
翼の上の気流の加速を抑えるため、気流がより長い距離を移動する事になる
後退翼(前進翼)、その進化型ともいえるデルタ翼を採用する。
逆に言えば後退翼(前進翼)やデルタ翼は、翼面上衝撃波の対策であり、
音速突破そのもののとは関係ない。
なので、音速以下の飛行が前提のジェット旅客機などにも
後退翼は広く採用されている。
●問題 その2 機体の造波抵抗●
空気中で波を発生させた結果、エネルギーを奪われる現象、
造波抵抗が、機体が高速になってくるに連れて無視できなくなってしまう。
マッハ0.9辺りからは明確にその抵抗が増加しはじめ、マッハ0.9から1の間、
わずかマッハ0.1の加速中に1.6倍前後もの抵抗急増になるケースも存在する。
なので、これをどうやって突破するかは大問題となった。
ちなみに、先にも書いたが、これはいわゆる“空気抵抗”とは
全く異なる原理の抵抗であり、空気抵抗は別に存在しているので要注意。
▲対策▲
とにかくエンジンパワーを上げる。
その上で、エリアルールに乗っ取り、
造波抵抗を最も起しにくい形状であるシアーズ・ハック体に近づくよう、
機体の断面積の設計を工夫する。
エリアルール1号(仮称)をキチンと適用できれば、
音速前後の造波抵抗を2〜3割は低下させる事が可能。

今となっては、アチコチの国で造られちゃったりして、それほど特別な印象がない超音速機。
が、1950年代前半まで、エンジンパワーもなければ、エリアルールもまだ登場していなかった時代においては、
この音速手前、マッハ0.9辺りから生じるベラボーな推力増加は強力な壁となりました。
写真の実験機、ダグラスのX-3なんて、超音速飛行専用にわざわざ設計された実験機なのに、
結局、水平飛行で音速を超えられないまま、実験終了を迎えてます…(涙)。
ただエンジンパワーがあれば何とかなる世界なので、音速を超えるだけなら、手は残ってます。
地球上最強の無敵ステキエネルギー、引力を利用するわけです。
実際、このX-3も急降下飛行でなら、音速を超えているのでした。
■音速突破の後(マッハ1.0…01以上) 問題点 3つ
●問題 その1 衝撃波による造波抵抗の増加●
音速を突破してしまえば、周囲の空気の波が消え、造波抵抗が下がるように思えるが、
今度は機体に超音速気流がぶつかるだけで、衝撃波が発生してしまい、
むしろ造波抵抗はさらに強くなる傾向が出てくる。
ただし限界はあり、マッハ1.1前後をピークに、やや減少に転じるが、
それでも音速以下のレベルまで抵抗値が下がる事は無い。
(注:ただし私の手持ちデータはマッハ1.4までしかないので、その先は不明です…)
とりあえず、1952年にその対策として、エリアルール1号(仮称)が登場、
マッハ1.1あたりまでの抵抗急造には対応できたが、
それ以上速度を上げようとすると、効果が薄れる、
あるいは逆に抵抗が増えてしまうケースが出てきた。
▲対策▲
エリアルール2号(仮称)を使うのだ、ルーク。
●問題 その2 超音速気流の中では通常の主翼では飛べない●
この問題は、未だに未解決。
というわけで、今回はこの問題を見て行きますよ。
ちなみに、
●問題 その3 超音速気流をそのまま
エンジンのタービンブレードにぶつけると、衝撃波でエンジンが壊れる
という、これまた致命的な問題もあったりします。
この問題は、いろいろ面倒なんですが、主翼の揚力の問題を見たあとで、
最後に少しだけ説明する予定。
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