■真 音を超えて行こうよ
さて、ここらからは機体が音速を超えるまでに何が起きるかを考えましょう。
そして、越えた後の超音速飛行の世界も少しだけ、見て行きますが、
そこから先は、次回になります、はい(笑)。
最初に確認。
波と言うのは水の中に石を投げ込んだり、誰かが動いたり、
という外部からの作用がないと発生しません。
逆に言えば、水や空気に強い力が加えられると、そこから波が生じます。
で、普通のプールの中に立っていても何の力も受けませんが、
波のある海などでは当然、それに押される力を受けます。
つまり波は発生に力を必要とし、その受け手には力を及ぼす、という事ですから、
これは力を伝達するわけです。
力はエネルギーに変換できますから、波はエネルギーの伝播だ、とも考えられます。
この波は力とエネルギーを伝播する、というのは覚えておいてください。
水面上の波は、風さんやら水鳥ちゃんやらが、外部から力を加えない限り発生しません。
そしてそれは力とエネルギーの伝播となって広がってゆくわけです。
ちなみに、水面から見ると波は平面的な円形に広がってるわけですが、
水面下ではこれが半球状に広がっています。
これが水中なら、上半分も同様ですから、球体となって広がる事になるわけです。
この点も少し覚えておいてください。
ここでは説明が簡単になるように、その作動原理は不明ながら(笑)、
とにかく大気中に波(その一部が音)を起し続ける
ごく小さい点、という都合のいい存在を考えます。
これを音源と名づけておきます。
この音源が全く動かない場合は水面に石を投げ込んだのと同じで、
波紋は次々にその点を中心に音速で全方向に広がって行きます。
ちなみに、これには人間の耳に聞こえる音だけでなく、あらゆる空気の密度差が含まれます。
音速と言うのは、音を含めたあらゆる空気の密度差が伝わる限界速度だと思ってください。
高度0m付近での音速は秒速約342.3m、これをキリのいい秒速340mとして考えた場合、
波紋はこんな感じの速度で、全方向に対し正円形に広がります。
とりあえず、波紋は音速の二倍の直径を持つわけです。
ここら辺りまでは、なんとなく感覚的にわかりますね。
さて、次はこの音源が移動して行く場合を考えてみましょう。
以下の図では音源が画面左に向けて、音速の半分(左)と音速(右)で
移動した場合を表しています。
波紋はその発生した場所から常に正円形に広がり続けますから、
音源が移動した後も、各波紋の中心点は動かない、という点に注意してください。
左の図のように、音源が音速の半分の速度で動いた場合、
波紋が広がる間に音源は移動してしまうため、
全時点の波紋に対し、その半径の半分ほど音源の位置が常にずれます。
こうなると、進行方向とその反対側では波の間隔、波長が変わってしまい、
ドップラー効果などが思い出されますが、ここでは脱線しないで次に行きます(笑)。
で、とりあえず、ここまでは問題なし。
問題が始まるのは右の図、音源が音速で移動してしまった場合。
大気中の波紋は常に“発生地点から見て”音速で広がっており、
その中を音源が音速で移動するとなると、どうなるか、という事です。
これは、時速140kmのボールを投げたピッチャーが、
同じ時速140kmでバッターに向けて突進してゆくようなものですから(笑)、
両者の速度差はゼロ、ピッチャーの指の先にボールは張り付いたまま、
ホームベース上まで届けられる事になります。
…野球のルールに、球速と同じ速度でピッチャーは前進してはならない、とかありますかね(笑)。
アパッチ野球軍などの特殊例を除いて、
ピッチャーが投げれるボールは通常1個だけですが、音源は常に波紋を生じ続けますから
こうなると全ての時点の波紋が、進行方向では音源から脱出できなくなります。
よって、ここに波がぎゅっと詰め込まれ、
先にも書いたように波は力とエネルギーを伝播していますから、
それによって高温、高圧の空間が出来上がる事になるわけです。
通常、高温、高圧の空間は、あっという間に拡散してしまのうでのすが、
これが例の音速の限界と、後からやってくる次の波で押し留められ、
この場に維持されてしまうわけです。
そして、この高圧、高温部分の進行方向の面、
そこから先が音速、という場所にある面が衝撃波となります。
が、航空機の飛行で問題になるのは、むしろ衝撃波背面の高温、高圧部分なのです。
マッハ0.8辺りから、衝撃波裏の高圧部に徐々に突っ込んで行くかたちになり、
ここで劇的といっていいほど、機体に対する抵抗値の上昇が起こります。
人ごみの少ない道から、満員列車の中に突っ込むようなものですから、
当然、その速度は落ちます。
これを無理に突っ切ろうとしたら、
周りの人間を即座に押しのけまくるパワーが必要です。
だいたいマッハ0.9辺りからこの抵抗(抗力)の上昇が始まり、
マッハ1でマッハ0.6前後の2倍近い抵抗値になる、というデータもあります。
さらにこのマッハ1を超えて、衝撃波の壁を突破しても、
この後は常に超音速衝撃波(次回説明)の中に身を置く形になりますから、
マッハ1.2あたりまでその抗力の急上昇は続きます。
ちなみにこれはいわゆる空気抵抗とは別の、音速以上になる事で生じる抵抗であり、
衝撃波を生むことから造波抵抗(抗力)といった呼び方がされます。
アメリカの場合、F-100で水平超音速飛行に成功して以来、
力技、エンジンパワーでこの壁を突破して来たのですが、
これがF-102の段階でついに壁にぶつかります。
大型で、重量もある機体では、力技にも限度があったわけです。
そんなわけで1953年10月に初飛行した
F-102の試作機は音速の壁の突破に失敗してしまいます。
最高速度はマッハ0.9止まりだったのです。
が、ここで白馬に乗った王子様のように登場した救済手段がありました。
これが有名なエリアルールとなります。
アメリカンな力技解決の限界の壁にぶつかったF-102は、ダメ戦闘機一歩手前の危機を
エリアルールにて救われる事になるわけです。
詳しくはまた、後ほど。
ただし、これで優秀戦闘機に生まれ変わったか、といえばまた別問題(笑)。
ちなみに展示の機体はエリアルール適用済みの生産型。
NEXT