■流れて揺れて飛んでゆけ
超音速飛行を理解するには、衝撃波による造波抵抗、
という現象をどうしても理解する必要があります。
なので以後、ちょっと長い説明が続きますがよろしくお付き合いの程を。
ちなみに、今回は基礎の話だけで、実際の衝撃波による
造波抵抗の話は次回となります(笑)。
さて、飛行機というのは大気の中をエンジンさんの力でガンガンに前進し、
主翼を使って、その運動エネルギーを上向きの力こと揚力に変換、
楽しく空に浮かんでるわけです。
運動エネルギーを主翼という装置で揚力に変換する時、
これを媒介するのは、言うまでも無く大気です。
つまり、空気があるから飛行機さんは愉快に空を飛べるわけですが、
この空気と言うのはいくつかの特徴を持ちます。
でもって水平飛行をしている時、航空機の前進を妨害する要素、
抵抗値となるものは、全てこの空気が原因です。
(上昇飛行の時のみ、ここに重力が加わる)
その空気の特性の中で、飛行機の抵抗にとって重要な点は二つだけです。
それをここでは考えましょう。
まずは流れる。
そして、波が起きる。
これだけです。
前者が流れの抵抗(圧力抵抗、摩擦抵抗、干渉抵抗、誘導抵抗)の原因となり、
後者が造波抵抗(圧縮波&衝撃波)の原因となります。
つまり、流れの中の物体に働く抵抗は、
●流れによる抵抗
●波による抵抗
の大きく二つに分けられるのだ、という事です。
この辺りをちょっと詳しく見てみましょう。
飛行機の開発段階では、機体の方を台に固定して、これを気流の中に置き、
その性能を確かめる実験を行います。
問題になるのは気流と飛行機の相対速度差だけだからです。
ここでは、その考え方を利用して、橋ゲタと川の流れから、
ここら辺りの関係を考えてゆきますよ。
上の写真では画面右から左に向けて川が流れます。
最初は単に、何もない川の流れだけを考えましょう。
当たり前ですが、これは流れてるだけで、何も起こりません。おしまいです。
が、流れの中にモノが置かれるとどうなるか。
つまり、飛行機が空気の中を飛ぶと何が起こるのか。
これは二つの面に分けて考える必要があります。
一つには、橋ゲタによって曲げられて流れが変わります。
もう一つは、そこに波が発生します。
流れが曲がるのは判りますね。
橋ゲタを避けるために川の流れが変わるわけです。
まず、流れが橋ゲタにぶつかる事の反作用でその向きが変えられます。
が、この時、橋ゲタの形にそってキレイに曲がるわけではなく、
大きく外側に膨らんだり、渦になったりするのです。
上の写真でも、橋ゲタ周辺の流れが、全く一定してないのがわかると思います。
特に物体の後ろ側では乱流になりやすいのも重要な点でしょう。
乱流は渦を生むのですが、それがどういった意味を持つかは後で説明します。
これが一つ目のポイント。
もう一つは、流れが何かにぶつかると、波が起こります。
上の写真では、橋ゲタの右側、流れが最初にぶつかるところで波が起きて、
これが流れによって後ろに移動して行ってるのが見てとれます。
よく見るとその後ろ、橋ゲタの途中まで波が発生し続けています。
これが二つ目のポイントです。
繰り返しますが、流れの中にモノが置かれると、
流れに変化がおきて、そして波が起きる。
ここで、川の流れを気流に、橋ゲタを飛行機に置き換えて考えてみましょう。
飛行機の場合は自らが高速で前進してるのですが、
先に書いたように、両者は同じ事とみなせます。
ここで飛行機と、その抵抗源という点から見ると、
●飛行機が前進すると、前方の空気は機体によって押しのけられ、
機体の周りを迂回する形で後方に流れて行く。
押しのける以上、その反作用として抵抗(圧力抵抗)が生じ、
さらに機体後方にできる乱流が渦を生み、渦は周囲の大気を吸い込むから、
機体を後ろ向に引っ張る力、干渉抵抗が生じる。
かてて加えて、機体表面と流れの間に摩擦抵抗も起きる。
(誘導抵抗は全く別の原理で発生するので、これは今回は触れません)
●飛行機が飛ぶと、必ず波が起きる。
それは気流によって後方へと流されてゆく。
といったところでしょうか。
こうして見ると、航空機の飛行を妨げる抵抗は、流れが生むもので、
波によるものが全く無い、という事になります。
実際は、波を生むにもエネルギーが必要ですから、
(上の写真では川の流れの運動エネルギーが使われてる)
この結果、機体のもつ運動エネルギーが奪われます。
これが造波抵抗、と呼ばれるものです。
が、通常、密度も粘性も低い大気が相手だと、これはあまり問題になりません。
実際、プロペラ機やジェット旅客機で
造波抵抗を考慮してる機体なんて聞いたことないはずです。
しかし超音速飛行となると、そうはいかないのです。
高速移動のため、今までは全く考える必要が無かった波による抵抗、
という要素が出てくるのが音速周辺の世界だ、となります。
この点を考えるには、まず造波抵抗について知る必要があります。
それには船が前進する場合の抵抗を考えるのが近道です。
水の上を進む艦船では通常、流れによる抵抗(粘性抵抗&摩擦抵抗)だけでなく、
波による抵抗(造波抵抗)にも配慮する必要があるからです。
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