■あ、ショックウェーブ

と、ここまで書いてから、その例外について見ておきましょう。

デルタ翼にはさまざまな形状があり、
乱暴に言ってしまえば、現代の戦闘機のほぼ全てが、何らかの形でデルタ翼を採用してます。
今後のこともあるので、そういったデルタ(三角)翼なんだけど、
ちゃんと水平尾翼まである機体について説明しておきます。



初期の尾翼ありデルタ翼の例、ソ連を代表するジェット戦闘機、Mig21。
ご覧のように、主翼は三角形ですが、これを胴体後部まで伸ばしてはおらず、
水平尾翼はちゃんと別にあります。
こういった翼面積の大きなデルタ翼の採用が、この機体の高性能の一因となっており、
ベトナム戦争では、F-4ファントムII、海軍のF-8両機以外の戦闘機からは、
1機も撃墜されてない、という記録を残すことになります。

逆に言えば、レーダー誘導のスパローミサイルなしで、
このMig21を落としてるのはF8だけということで、やっぱりスゴイ戦闘機なんですね(笑)。



さて、どうしてMig21などは、こんな主翼のデザインに?というと、
超音速飛行において、三角形の主翼はイロイロと都合がよかったからです。
なんで?と言うのを理解するには、主翼で発生する衝撃波と後退角の意味を理解する必要があります。
まあ、ここまで来たのだ、せっかくだからやっちゃいましょう(笑)。

ちなみにマッハ1=音速、音の速度ですが、
音速は大気温度と大気に含まれる気体の種類で時速が変わるため、
その速度は一定ではない事に注意が要ります。
(普通に飛行機が飛ぶ高度では、だいたい時速1000〜1200Km/hくらい)

その音速を超えて飛ぶのが超音速飛行機なわけですが、
超音速飛行で常に問題になるのが、圧縮されて強いエネルギーを持つ波、衝撃波です。
超音速飛行では、常に衝撃波が発生するため、
その造波抵抗、という問題が出てくることになります。

衝撃波(Shock wave)、と言われるとなんだかスゴイ破壊力、という印象ですが、
航空機と音速の関係で出てくる衝撃波は、
単に密度の高い空気の壁、と考えてもらえればいいでしょう。
ただし、壁と行っても空気の衝撃波の厚さは、マイクロメートル(μm)以下の世界のはずなので、
実際は、面として考えた方が実態に近いでしょう。
(その両側で圧力、温度などが大きく異なる、量的に連続しない接触面、不連続面)
むしろ衝撃波本体より、その後ろ側に出来る高圧部分が壁、という感じになりますね。



さて、ここで“波”の特性について理解しておきませう。
まず、波の発生源が移動して無い場合。
これは、水面に石を投げ込んだのと同様、
発生点を中心に、同心円状に波は広がって行きます。

ホンマ?と言う人はお母さんに見つからないようにお風呂に石を落っことして、
その波紋を観察してちょうだいな。
ただし、もしお母さんに見つかっても、私の名前は出さないでね。
この間も、抗議の電話を友人の奥さんからもらったばかりなんだから。



が、波の発生源が移動してる場合、船の航跡のように、これは“く”の字型に広がって行きます。
これは波が広がる前に発生源が進んでしまうからです。

そして、ここで重要なのは、進行方向の波。
進行方向では波の発生源(ここでは水鳥)が波が十分に拡散する前に後から追いついてしまい、
この結果、波はギュッと圧縮される形になり、高密度になってゆきます。
これは衝撃波とは別の圧縮波と呼ばれるものですが、
機体の速度が波の速度に追いついた瞬間、これが衝撃波になります。

そこから音速を超えると、また話が変わってくるのですが、そこら辺りはまた後ほど。




ちなみに、不忍池の水鳥で、この波を突破して(笑)泳いでる鳥を見たことがありませんが、
この点、人類は大したもので、動力船ならば、大抵、自らが発生する波より速く先に前に進んでしまうため、
ご覧のように進行方向に圧縮された波は形成されません。

ああ、人類ブラボー!人類に生まれてよかった!
ちなみに、その分のエネルギーが横方向の波を大きくしてると思うんですが、
ここまで来ると私の知識の限界を超えるので、断言はできませぬ(手抜)。




さて、飛行機が超音速飛行をするには、造波抵抗、という問題が出てくるのですが、
それについては、後ほどエリアルールのトコで説明します。
とりあえず、現在は音速の限界によって波が集積されて、
衝撃波&背後の空気高密度部分が作られてしまう事になるのだ、
と言う点を理解してください。

で、この機体が音の壁を越える、という問題とは全く別に、
主翼においては音速飛行に入る前から独自の衝撃波が生じてしまうのです。
これが失速、さらに空気抵抗の増大、という影響を及ぼしてくるため、
音速を超えて飛行するのは極めて困難となります。
つまり、音速の手前の段階で、主翼周辺には衝撃波の問題が発生します。

その解決策が後退翼であり、その進化形がデルタ翼なのです。

なので、主翼における衝撃波の問題は、いわゆる音の壁を超える、
という点とはまったく別なのだ、という点にご注意あれ。
いわゆる造波抵抗もあるにはあるんですが、
そこら辺りはエンジンパワーでねじ伏せる事は不可能ではなく(限度はありますが)、
より重大な問題は衝撃波が生じる事による失速、揚力の発生点の移動、
という部分になります。

まずは、なんで音速によって密度の高い波、衝撃波が主翼表面に発生し、
そして、それによって失速したり、抵抗が増えたりするのか、を見てみましょう。


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