■フォッケ-ウルフ Fw-190 D9
FOCKE WULF Fw-190 D9

「高度6000m以下で」という結構致命的な条件つきながら、
世界最強クラス戦闘機の一つとして君臨していたドイツのフォッケウルフ Fw-190。

この戦闘機は空冷のBMW801シリーズエンジンを搭載していたのですが、
なぜかこれを水冷にしちゃおう、と思いつき、やってしまったのがこのFw-190D9ですね。
搭載されたのはユモ213型エンジン。
ちなみに液冷エンジン搭載のD型は、いきなりこの「9」からナンバリングがスタートします。
D1とD2のナンバーはテスト機に使われたらしいですが、D3からD7というのは存在しないはず。

で、このエンジン換装、結構謎な部分が多いんですね。
ユモ213は空冷のBMW801シリーズに比べて特にパワフルってわけでもないし、
最高出力は高度6000mで1600hp前後、
さらに水メタ噴射を使って2000hp しぼり出した(自称)のが高度3500mというから、
高高度性能も全く改善されておらず、たいした過給器が詰まれてないのも明白。
日本軍相手ならともかく、とてもじゃないが英米の機体相手にどうこうなる数字ではないですね。
どうも設計者のタンク博士が「ほかの戦闘機みたく液冷エンジンが使いたかった」
だけではないか、という気がしなくもなく…。

ちなみにユモ21Xシリーズ、エンジン単体で見ると、倒立型でエンジン(過給器)の吸気は横から、
というDB601系エンジンと同じような、というかほとんど同じレイアウト。
何か同じ元ネタでもあったんでしょうかね。

ドイツ最強戦闘機、という説明もチラホラ見ますが、この機体、
英米軍はあまり真剣にテストしておらず、実は性能データがよくわらかなかったりします。
じゃあ、ドイツ空軍の公称データを…というと、ドイツは機体データを「メーカー自らが計測する」
という恐ろしい国なので、言うまでも無くその数字は信用できないんですね。
特にフォッケウルフ社の場合、Fw190A3で大幅な水増しデータを提出してる、
という明快な前科があるので、全く信用できません(笑)。

まあ、「フフフ、その性能は秘密のベールに包まれたままなのさ、ハニー」
としておくのがベストかなあ、と思うのです。
が、連合軍側のそっけない態度からして、正直、たいした性能、出てなかったんじゃないかなあ、
と思ってはおります(笑)。

■2008年 アメリカ空軍博物館にて撮影



まともなコンディションの機体は、世界中で2機しか現存してないD9、そのウチの1機です。
終戦後に捕獲されたもので、本来はスミソニアンの所有機。
2008年現在は、アメリカ空軍博物館が借り出して展示中。

ドーナツ状の奥行きの無い空冷エンジンから、箱状で奥行きのある液冷エンジンに換装したので、
D9はA型に比べ、機首部が約1m20cmほど延長されています。
ここから、長鼻のドーラ(D型のDを使った女性愛称)というニックネームが生まれます。

が、飛行機は主翼(の揚力発生中心点)を支点として前後のバランスをとってますから、
前方だけに長さが延長されてしまうと、これが崩れ、水平を保っての飛行ができなくなります。
その対策として、尾翼の前あたりに筒状の延長パーツをかまして胴体後部も長くしてるのです。
この結果、機体全体が前後に引き伸ばされています。
写真などで見ると、なんだか間延びした戦闘機、という印象しかなかったのですが、
実機を見てみたら、意外や意外、結構カッコよかったです(笑)。わからんもんだなあ。



反対側から。キャノピー上部が少し上に膨らんでるのもD9の特徴。
視界の向上をねらった改修でしょう。

機首横から出てる煙突みたいのはエンジンの吸気口。
ドイツの液冷エンジンはベンツのDB601シリーズといい、なんでこう、
横から吸気するってのが好きなんでしょうね(笑)。
空気抵抗的には一方的に損をすることになると思うんですが…。



真正面から。
さて、問題です。ラジエターとオイルクーラーはどこでしょう(笑)。

ご存知の方も多いかと思いますが、ユモ21X シリーズは
ドーナツ状の円形ラジエターをエンジンの前方にはめ込む、という珍しいレイアウトになってます。
このため、他の液冷エンジンと違って正面から見ると円形断面となります。
空冷エンジン搭載で、胴体の断面形が円形のFw190にとっては、
ユモ213エンジンは非常に都合のいい液冷エンジンだったわけです。
DB60X系エンジンではこうはいかなかったでしょう。
(エンジンだけを取り出せば普通に箱型ですが、ラジエターと事実上セットなのだ)

よって、一見空冷エンジンのような機首前面が開いたデザインになるんですね。
このカウルとプロペラスピナの隙間の奥に、ラジエターとオイルクーラーが入ってます。

このデザインだとラジエターという、機体の外に出っ張らせると、最大の空気抵抗になるパーツが、
非常にスマートに機内に納められることにもなるので、一粒で二度おいしいわけでもあります。

…でもなあ、このラジエターで、ちゃんとエンジン冷えたのかなあ…



ちなみにこれはユモ211を積んでるユンカースJu-88。
これも水冷エンジンながら、前面ラジエターのため、ごらんのように
丸いエンジンポッドとなっています。実は私、長年空冷エンジンだと思ってました…。
こちらはガバッと前面が開口してるので、冷却は大丈夫そうですが…。

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