■それは罠のことや!
「さて、ペロ君、ではフラップの仕組みを再確認だ」
さっき聞いたじゃん。
「いや、一口にフラップと言っても、その原理はいくつかにに分かれる。
最初に説明したプレーン フラップの他、主翼下面と上面につながる孔、隙間を開け、
主翼表面の気流の流速を変えることで、空気の流れの剥離を防ぐスリットタイプ、主翼の後ろ端についていて、
作動時には後ろに延びて翼面積を拡大してしまうタイプ、などだ。実際はこれらが複合的に用いられる」
その説明、聞かなきゃだめ?
「ははは、大丈夫、説明する方も面倒だと思ってるくらいだから、すぐ終わるんだよ」

通常型、Plane
flap。先にも書いたように、エルロンから半自動的に導き出される設計で、
エルロンに毛が生えて反抗期になって隠れてタバコ吸ってたりするようなフラップである。
イギリスでは、第一次世界大戦時にすでに実用化されていた。
が、イマイチ注目されずに終わる(涙)。
ただし、構造が簡単なだけに、その後も結構採用例があります。

進化したんだか退化したんだか微妙な気もする分離型、Split
flap。
翼後部の下半分だけが、パカっと開きます。
もう難しい事は一切考えず、主翼下面の空気を、ドンガバチョとワシヅカミにして、
揚力稼いでます、という設計ですな。
ベストセラーDC-3に搭載されたほか、大戦機の単発機に結構見られるフラップ。
ゼロ戦もこのタイプです。
見て想像つくと思いますが、これは事実上、エアブレーキみたいなもんですから空気抵抗も巨大で、
実際にそのメリットの一つに減速効果が挙げられたりもしてます。
実は、後で述べるキャンバー理論にはこれをどう当てはめたもんだか、未だによくわからない。
まあ、理論なんてしょせん理論だよね。
ちなみに、このフラップは1920年、あのライト兄弟の下の方こと四男であるオービル ライトと
彼の研究施設にいたJ.M.H.ヤコブスの共同発明だったりする。
ライトブラザース、意外なとこでも活躍してたのでした。
よって、ゼロ戦のフラップのルーツはライト兄弟です(笑)。
そういやオービルは1948年、昭和23年まで存命だったんですよね。
陸軍航空隊の開発基地にして、現空軍博物館の所在地、オハイオ州デイトンで、
この年に心臓麻痺で亡くなってます。ジェット機見てからの大往生。
わかりやすい写真がこれしかなかったので、98式直協機のスプリットフラップ。
翼の下半分だけ、開いてるがわかるでしょうか。

最後に、現代のフラップの元祖とも言えるファウラー式フラップ(Fowler
Flaps)。
ファウラーって何だ?とずっと思ってたんですが、実は開発者の名前でした(笑)。
これは主翼の下部分がスーっと後ろにせり出し、翼面積そのものを拡大、
その上、下に曲がって、上のフラップと同じ効果を発生させ、
されにその上、フラップと主翼の間に隙間を作って速さの異なる気流を導き、
気流の主翼表面からの剥離を遅らせる、という「いいとこ取り」だらけのフラップです。
1924年にアメリカのエンジニア(一説にはカリフォルニアでセールスマンをやってた、との話あり)、
ヘイレン・D・ファウラー(Harlan.D.Fowler)がなんと個人で開発をスタート、1930年代に入ってからNACAに泣きついて予算をもらい、
1932年ごろにほぼ実用化されていたようです。
意外に知られてませんが、このおかげで、アメリカ軍の戦闘機は離着陸速度において、
大きなアドヴァンテージを持って大戦に突入できました。
排気タービンとならんで、アメリカの「秘密兵器」の一つでしょう。
まあ、日本とかもちゃっかりパクってますが。これ、特許関係はどうなってたんだ?
時期からして、大戦時はまだ特許、生きてたのでは?
P47サンダーボルトのファウラーフラップ。後ろにせり出してるのがわかる。
主翼との間に隙間も開いてますね。
米軍戦闘機の多くがこれを装備できたのは、重くてデカイ機体ばかりだけに、ラッキーだったと言えます。
「さて。飛行機を浮かしてる力は揚力なわけだが、高速を出す飛行機が低速で飛べない、
すなわち速度が落ちるとすぐに揚力を失ってしまうのはなぜだと思う?」
呪い?
「さすがは、ペロ君」
え?そうなの。適当だったんだけど、言ってみるもんだ。
「ハズレだ」
なんですとー!
「揚力は速度の2乗、揚力係数、翼面積、飛行高度の大気密度を掛けた積を1/2すると求めることができる」
はあ、さいで。
「大気密度は人間がどうこうできる要素ではないからあきらめるとしても、
残りの速度、揚力係数、翼面積は変更可能だ。これを大きくすればするほど、揚力はどんどん大きくなっていくのさ」
すればいいじゃん。
「全くだ。だが、発生する揚力より機体重量が重いと飛行機は飛べない訳だから、
そんなに大きくて重い主翼はつけれない。
空気抵抗の問題もあるしね。だから、翼面積は限界がある。
揚力係数は機体(主翼断面形)と仰角によって変わる数字だが、
基本的に主翼が取れる向かえ角、仰角を意味すると思っていい。
となると、これが90度(揚力係数は角度では表されないが)とかになったら、機体は垂直真上を向いてしまうわけで、
主翼の揚力はもはや上方向に向いてないし、それ以前の角度で失速してしまうだろう。
よって、これにも一定限度がある」
さいですか。
「当然、速度だって、地球の上を飛ぶ限り、空気抵抗は避けられないから、限度がある」
だから?
「これらのバランスを取って、主翼を設計する必要があるのさ」
で?
「そう思ってもう一度考えると、あれ、速度にだけは2乗に比例してるじゃん、と気がつく。倍々ゲームだ」
つくかあ。
「付け。付くんだジョー。だから、手っ取り早く揚力を稼ぐには、速度を上げるのが効率がいい」
上げたまえ、チミ。
「ははー。するとですな、だんな、機体は軽くする必要がございます」
したまえ、チミ。
「ついでに、空気抵抗も減らさねばなりません」
したまえ、チミ。
「ははー。するとですな、電荷、否、殿下。主翼は小さくて軽くて、
しかも揚力係数を上げる要素である表面の曲がり(キャンバー)を下げる必要がございます」
…どういういこと?
「すなわち、速度以外の揚力の計算要素である、翼面積、揚力係数を可能な限り、下げる必要があります」
すると?
「速度で揚力を稼いでるわけですから、速度を落とすとあっという間に墜落します。
2乗で増える、ということは、速度が落ちれば、同じ勢いで揚力は減ってゆくわけです」
困るかな、それ?
「まあ、いろいろいありますが、とりあえず、あのデコボコのある原っぱに、機体を時速250kmで着陸させてください」
…えーと、それは?
「路面電車の線路に新幹線を走らせるくらい、
あるいはフェラーリでダートコースをフルアクセルで走るくらい、チャレンジャーです」
やなチャレンジャーだなあ…。
「そこで、フラップの出番なんでやんすよ、ゲシシシシシシ…
高速化された機体には必須のアイテムなんでヤンス、ウシシシ…」
…とりあえず、その笑い、今後禁止ね。腹が立つから。
「あれま」
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