■どんどんワキ道にそれて行く

スピットファイアのとこで使った1/144食玩による、サイズ比較写真を地球環境にやさしく再利用してみました。
右隅のMe109、ご覧のように、スピットファイアはおろか、ゼロ戦と比べても、あきらかに主翼は一回り小さいですね。
つーか、ゼロ戦の水平尾翼、なんでこんなにデカイんだ…。
Me109の主翼は、同時代の他の機体に比べると非常に小さい。
あきらかに高速性を狙ったモノで、高速で飛べば揚力は速度で稼げるから
翼は小さくて問題なかったし、逆に高速を出すための軽量化と、
空気抵抗の削減にのためには、小さい翼でなければならなかった。
また、そもそもその設計思想は、偉大なるゲルマンの領土に、恐れ多くも爆弾なんぞを落としに来た
トンチキ野郎な爆撃機をケチョンケチョンにしたれ、であったから、
レーダーが実用化になるかどうか、という時代に設計されたMe109は、
とにかくチョッパヤで高度を稼げて(上昇力重視)、
すぐさま間抜野郎の爆撃機に追いつく(速度重視)必要があった。
軽量、小型化は必然で、まさかアメリカとかいう海の向こうの田舎モンが、
20mm機関砲を数発当てたくらいじゃビクともしないなんつー、
悪夢のような爆撃機を本気で作ってくるとは夢にも思わなかった。
よって、武装は犠牲となって、最後まで貧弱なまま終わる。
また、飛んでくる敵爆撃機を自国上空で迎撃するのだし、
軽量化もしたいので、搭載燃料も少なく、その結果、航続距離も犠牲となっていく。
ちなみに長大な航続距離を持って、敵地に進入する戦闘機、
という発想がなかったわけでなく、それは双発の大型戦闘機の仕事と考えられていた。
ドイツのMe110はまさにそういう機体だったわけだが、
何かが根本的に間違ってたことは、バトル オブ ブリテンで完全に立証されてしまうわけでした。
かてて加えて、この機体の設計時には、エンジンパワーなんて
1000馬力程度までしか望めなかったのだから、自然と、そのデザインはシビアになってゆく。
後の機体の発展性を犠牲にすることになるのが、何よりもその主翼の小ささなのだが、
この点は時代を考えれば、いたしかたない、ある意味気の毒な部分でもある。
しかし、離着陸の時だけは、どうしても低速になる。これはどんな飛行機でも避けられない。
そこで離着陸時に十分な揚力を確保し、安全性を維持するため、
Me109の主翼には他にあまり例を見ないほど、さまざまなギミックが満載されている。
ある意味、後の超音速戦闘機のそれを先取りしてたような感さえある。
ただし、結局、離着陸、特に着陸は、最後までMe109の欠点として残り続けるのだが…。
ここでは、それらを見て行くことにしたい。
揚力を稼ぐための高揚力装置、というと前回説明した「フラップ」を最初に思い浮かべるが、
先に書いたように、主なフラップの仕組みはアメリカで発明されたものだ。
1920年代から30年代前半のヨーロッパでは、むしろ主翼の前縁部に小さな隙間を造り、
主翼が大きな迎え角をとっても失速しにくくする、という前縁スラットが主流だった。
スラットはイギリスのハンドレイ・ペイジ社とドイツのユンカースがほぼ同時に開発に成功してるのだが、
タッチの差でハンドレイ・ペイジが特許を押さえているようだ。
でもって、Me109の主翼(外側)にもこれは搭載されている。
Me109のものはイマイチいい写真がなかったので、Fi156シュトルヒのものを。
主翼の前部に付いてる小さな翼のようなものが前縁スラット。
この小さな翼と主翼の間の空間に空気の流れを導くわけです。

というわけで、主翼前縁スラットの大ざっぱな仕組みを。図は主翼の断面図だと思ってください。
赤い部分がスラット。普通に主翼の上下を空気が流れてゆく場合、つまり通常飛行時は畳まれてます。
単純に前方からの風圧で押さえつけられてる、と考えていいです。

ここで、離着陸時などに迎角を取った状態を考えます。
こうなると、正面から来る空気の流れの大半は、主翼下面が壁となり、そのまま下方向に流されます。
主翼上面の気流は主翼に表面に貼りつかなくなり、主翼表面には空気が流れなくなります。
こうなると、主翼の揚力は失われてしまうので失速となり、あわれ、墜落です。

そこで!スラットオープンですよ、ダンナ!
主翼下面にぶつかった空気の流れは隙間を通じて主翼表面へとぬけてゆきます。
でもって、スラットの隙間は主翼後方に向けて風が流れるような形状になってますから、
そのまま主翼表面に貼りつく気流の流れとなり、揚力復活、みんなハッピーなわけです。
通常、スラットはフラップとは異なり、パイロットが操作しなくても、自動的に開くように造られています。
原理は単純。上のシュトルヒの写真でわかると思いますが、スラットは翼断面形をしています。
高速飛行時には正面からの風圧で、これは押さえつけられてしまいます。
しかし、速度を落として、迎角を大きくすると、上の図のように真正面からの空気圧は無くなり、
さらにスラットの翼面形に対して、正面から気流がぶつかることになります。
これにより、スラット自身が生み出す揚力によって、自動的に上に浮き上がり、隙間が開くわけです。
余談ながら、Me109の地上駐機状態では開いたのと閉じたのと、両状態の写真が見られますが、
閉じてるのは、単に手で押して折りたたんだだけです。
折りたたみ機構に、ホコリやごみが入らないよう、畳むのが正しい駐機状態。
ついでに、降りたたたみ機構はいくつかのアームの単純な組み合わせだけで、
E型のMe109のマニュアルに載った写真を見る限り、モーターもなければ、バネもありません。
よって、飛行時の風圧がかかった状態、あるいは地上で誰かが畳んでやらないと開きっぱなしになります。
その構造から、空戦時とかに「狙って」使うのは困難でしょう。
ちなみに、ドイツ(つーか世界)第3位のエースパイロット、275機撃墜のギュンター・ラルは戦後、
スラットについて、「無用の長物。それなら翼面積を広げりゃいいんだよ」と証言してます。
さらについでに、Me109でもE,F,Gの各型で構造は異なり、さらに同じタイプ内でもいくつかの種類があります。
ここら辺はつっこむと泥沼なので、今回はパス(チキン野郎)。
スラットの解説は以上ですが、Me109には主翼後部にフラップも付いていますから、
スラットとフラップをダブル装備、という当時の単発戦闘機としては異例に豪華な高揚力装置満載ぶりです。
逆に言うと、それだけ主翼が発生する揚力は不足気味だったわけですね(涙)。
特に機体重量がどんどん増えて行った後期タイプにとっては、切実な問題だったでしょう。
主翼面積そのものはG型にいたるまで、ほとんど変わってないのです。
離着陸時の速度が下げられない、高い、ということはそれだけ事故の危険性は上昇して行きます。
Me109の事故率の高さは有名ですが、よく指摘される主脚の間隔が狭いことによる安定性の無さより、
多分、主翼の揚力が足りないことからくる不安定性の方が主な理由です。
脚の間隔でいえば、スピットファイアだって、脚を折りたたむ油圧装置が薄い主翼に入らず、
胴体側にとりつける、というMe109と同じ構造になってますが、
離着陸時の事故はずっと少ないのです。
スピットファイアは、大きな主翼と、楕円翼による低速時の誘導抵抗の低下のおかげで、
離着陸ははるかに楽だったからでしょう。
では、Me109の主翼を見て行きます。
白い翼端部のすぐ横から、黒十字の手前まで、主翼前部にあるのが先に書いたスラットで、
この機体では正しい駐機状態を再現、ちゃんと畳んであります(笑)。
次に、主翼後部を見て見ましょう。
まず一番外、写真では手前にあるのが、エルロン、つまり補助翼ですな。面積的には一番でかいです。
その内側にあるのが、フラップで…あれ、さらにその内側になんかありますよ(笑)。
これが最初のスミソニアンの機体解説でちょこっと触れた、ラジエターフラップを兼ねる、
という豪快な内側フラップです。Me109ではF型以降、フラップは2枚に分かれてるのです。
(正確には3枚なのだ…)

そういや、前回、Me109の通常フラップの説明を忘れてました。
ただし、これはE型までの話で、F型以降は、上の写真でわかるように外側が単純フラップで、
内側がチョードイツの科学力フラップ(次ページで説明)に変わってます。
Me109はファウラーフラップ発明前の段階(この機体の設計開始時直前にようやくファウラーは完成してた)
では最新鋭だったスロテッド(隙間)フラップを採用してました。
それはなんぞや、というと、折り曲げたフラップ部に隙間をつくり、その上に主翼下面の気流を流しこんで、
主翼後部では、ほとんど剥離してしまってる上面の気流を補ってやる、というもの。
これによって得られる揚力を、より増加させてます。前縁スラットのフラップ版、みたいなもですね。
この点で、後からデビューしたスピットファイアやFw190、ゼロ戦などより一歩先を行っていたと見ていいと思います。
というわけで、ようやくメインイベントにたどり着きました(笑)。
意外に知られてないような気がする、F型以降の「ドイツ的3枚フラップメカニズム」の説明が、今回の目的でもあります。
いや、実際、なんでこんなこと思いつくねん、というギミックだったりするのですよ、これ。
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