■秩序ある因果律なき世界へ

今回、夕撃旅団の「株式の話」では、初めて「実戦」までの話をします。
具体的には、ある時点の株価が高いのか(売り時か)安いのか(買い時か)を
判断する指標と、その計算方法を説明します。
さらに、どうしてその考え方が成立するのか、
それがどの程度信頼をしていい数字なのか、まで見ていくつもりです。
で、だいたいお気づきでしょうが(笑)、これは確率に基づく、純粋に算数の世界です。
ファンダメンタルな要素、社会の好不況、金利、原材料の高騰、といった、
現実世界の現象には一切注意を払いません。
考えるだけ、無駄だからです。
それらは瞬間、瞬間で、株価等に影響を与えますが、そこまでなのです。
サイコロで6の目を出させるのは、投げた腕の筋肉の動き、部屋の空気の流れ、
投げた瞬間の指のかかり方、などが原因として考えられます。
が、それらをいくら研究したところで、サイコロ賭博にはなんの役にも立たないでしょう。
私たちが知りたいのは、「数字の、全体としての流れ」なのです。

その前に少し脱線しますよ(笑)。
当サイトでは、株式投資に関しては、今まで理論的な話ばかりしてきました。
具体的な話を一切避けて来た理由はただ一つで、
おそらく誰もきちんと理解してくれないから、です。
多分、今回も完全に理解してもらうのは不可能だと思っています。
話そのものは単純で、中学レベルの数学の記憶がまだ残ってるなら、なんの問題もありません。
でも、きっと理解されないだろうなあ、と思ってます。
その理由は簡単。
人は「自分が見たい現実しか見ない」(by頭髪後退症のローマ執政官)からです。
何を言い出すんだ、って感じかもしれませんが、ちょっとだけ説明を(笑)。
例えば、巨人は昨日は負けたが、今日は勝った、という話をします。
この時、巨人ファンは今日は勝ったんだ、という部分だけを記憶し、
アンチ巨人の人は昨日負けたんだ、という点だけに注目します。
結局、1勝1負けで五分五分なんだよ、とは両者とも考えもしないでしょう。
人は、自分にとって「都合がよい」情報のみ、記憶に蓄積してゆきます。
これは、科学論文などでも起こる現象で、昔、ソ連の学者が人間の予知能力実験をして、
「みんな!ご覧のように超能力は存在するんだよ!」
と自信満々に発表したことがありました。
が、それを読んだイギリスの別の学者が、論文中の同じデータを使い、
実験の数字は「確率論で説明できる誤差の一種」に過ぎないことを、数学的に説明してしまいました。
同じ「実験結果」から、両者とも「自分が見たい現実」をそこに見たわけです。
「実験結果」すなわち現実は一つしかないのですが、そこから導き出される結論は
人によって異なり、むしろそれが普通だったりします。

で、巨人の勝ち負けや超能力くらいなら害はありませんが、金銭がからむとなると、
その危険度は大きく跳ね上がり、細心の注意が必要となります。
例えば、今回の記事の中で、後ほど出てくる「平均への回帰」という概念。
これは、大きく平均から外れたデータは、その後、平均値にもどろうとする現象を指します。
投資家やギャンブラーにとって、これほど魅力的な考え方はなく、
「これだけ負けが続いたんだから、そろそろ平均への回帰で、勝ちが出てくるはず」
という使い方をされてるケースが多い概念です。
が、その考え方は間違えています。彼らは、自分が見たい現実にあわせ
「負けが続けば、いつかは反対に回復して勝ちが来る」
といった意味で「平均への回帰」を理解してますが
実際に平均への回帰が起きるには、重要な必要条件が一つあります。
私の知る限り、この点をきちんと解説してる本やサイトはほとんどありません。
誰も「自分が見たい現実」だけを見て、そこで満足してしまってるんでしょうね。
平均への回帰が期待できるのは、
「対象となる数値の集合が、正規乱数である」場合のみです。
つまり正規分布グラフを描き出すデータでなければ平均への回帰は発生すらしません。
(正規乱数と正規分布はこの後で説明します)
たとえ正規分布だとしても、平均への回帰が起きるには
最低でも100単位のサンプルが必要で、株式投資で考えた場合、それは100営業日、約4カ月も先の話。
競馬で考えたら何日先だ?
それに通常、それはゆるやかに進行するので、気が付いたら終わってたりします。
本来、「平均への回帰」を根拠に投資やギャンブルを行うのは、大変危険なんです。
そのまんまで使える概念じゃないんですよ、これ。
この「物事を自分に都合良く解釈する」というのは人類の本能の一種ですから、
この傾向について文句を言う気はありません(笑)。
ただ、注意はして欲しい、と思うわけで。
自分の興味ある部分以外を勝手に端折ったりしないで、人の話はちゃんと読むこと。
簡単だと思うんですが、そうでもないんですよ、これ。

私が恐れている事が、だいたいおわかりいただけたでしょうか(笑)。
これから書く話が基本的に正しいことは、ここ半年以上、
さらには最近の暴落を通しても、私自身が確認してます。
誤差の範囲を超えるズレは、まだ発生してません。
が、それには理屈をちゃんと理解してもらうのが最低条件で、
「なんとなくわかった気がする」
レベルで使うと、上で書いた平均への回帰の誤用と同じように、とても危険です。
おそらく、曲解されるだろうというのは覚悟の上で、
今回の記事をあえて書くわけですが、最後に一点だけ確認させていただきます。
この後の説明を読んで、さらに実際に自分で計算してみて、わかった!
と確信できるまで、この「方法」は絶対に使わないこと。
また、これを使ってどのような結果になったとしても、
私は一切責任を負いません。すべて自己責任でお願いします。
この点を理解していただけたら、さあ、始めましょう。
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