■地球が丸いから、戦争は大変だ

2009年4月 初版
2015年2月 改訂


地球は丸い。
だからどうした、というと、近代の戦争においては、
結構面倒な問題が起きるアルヨ、というのが今回のお話。
大丈夫、なんかつまらなそうだ、と思ってるのは私も一緒ですが(笑)
それなりに興味深い話になりますから。…多分。



上で見てきた連中に言わせると地球は丸いらしい。
えー、そうなの?と高度8000mから見てみると丸いような気もするし、
そんなわけあるか、どう見ても平らじゃん、という気もする。
でもって、ここから見えるあの地平線までの距離はざっと320kmなんだよ、
というような話が、今回は展開されると思ってくださいませ。
そして、そこからなぜか戦艦の砲撃戦の話になってゆくのです(笑)。


地球が丸いと何が困るのというと、
水平線の影に隠れて遠くが見えない、という点です。
下の図のように、光は直進しかしない以上、
地平線の向こうは地球の影になって見えませぬ。
(厳密には光は空気中の屈折で少し曲がる)



意味も無く親切をモットーとする当サイトですので、図解してみました。
オレンジの線が彼の視線を示します。
だいたい1m70cm前後の身長だと、4〜5q前後が水平線までの距離となります。

そして水平線までの距離を伸ばすには、彼がそのまま後退するしかなく
それはすなわち、地面からどんどん離れてゆく、
つまり視点の高度を上げることになるのだ、
という点もこの図から理解していただけると幸いです。
主に私が。




さて。
投射兵器、すなわち弓矢や石、さらに砲弾を撃ち出す兵器の
射程距離を伸ばす、というのは人類登場以来、
常に兵器開発における最大の目的の一つでした。

相手より遠くから弾を撃ち込めれば、敵が手も足も出ないうちに、
一方的に叩きのめしてしまうことができる可能性が高くなるからです。
よって、19世紀以降、製鉄技術の発展に伴い、鋼鉄の剛性が増し、
より強力な炸薬の使用が可能になると、
大砲の射程距離は、どんどん伸びて行きました。

第一次世界大戦時に登場したドイツ謹製のパリ砲なんて
射程距離で120km近いですから
もはや地平線がどうこうって距離ではないですね(笑)。
新幹線でも30分近くかかる遠距離から砲撃してくるわけで、
対抗手段はちょっとないでしょう。
その代わり、砲弾重量はせいぜい100kg程度だったらしいので、
いやがらせ、精神的なプレッシャーといった面以外、
兵器としては、ほとんど意味がありませんけども。

この場合、パリの場合、ローマ人が植民都市として建設して以降、
一度も自力で移動した事がないので照準はなんとかなったわけです。
相手の位置が固定なら、自分の射撃位置が決まれば、後は幾何学的な計算で、
どちらの方向に、どの角度で、どれだけの強さ(炸薬の量)で
撃てばいいかは、計算で(作図でもいい)わかりました。
このように数学が戦争を支配する、というのは近代戦の大きな特徴の一つですね。
(パリの北緯でこの距離だとコリオリの力も絡んで来るがここでは触れないで置く)

とりあえず20世紀に世界が突入したあたりから、
地平線までの5qなんて軽く超える射程距離を持つ大砲が
次々に登場してきます。
となると地平線の向こうの見えない相手に
どうやって照準をつけるのか、という問題が出てきます。
見えない相手を狙うことはできませんから。

それに対する回答は高いとこに登る、であり、
陸戦兵器では気球や航空機による目標と着弾状況の観測、
艦船ではそれに加えて艦橋の高層化、という結果を生んでゆくのです。



ほんの10m程度の高さに登っただけでも、
その最大視距離は格段に延びます。
高度2mではせいぜい5km前後だったのが、
高度10mだと10km以上先まで見えます。



それが100mとかの高になると、さらに遠くまで、
30q以上向こうまで見えてしまいます。
やりたい放題って感じですね。


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