■電気ナマズVSサカナカミナリ
さて。
魚雷は、遠距離攻撃兵器としては驚異的に速度が遅い、
という妙な特徴があります(笑)。
この結果、その照準に「時間」が強く絡んで来るという、
20世紀前半の兵器としては珍しい特徴が生じるのです。
空間と時間の情報が照準に必要となるわけですが、
時間は速度から計算で導き出すことになります。
例えば、今回のお題、日本海軍の酸素魚雷はそれなりに高速、とされるんですが、
最初の量産型である93式でも最大時速は48ノット、約88.9km/hほど。
これでもかなり高速な部類ですし、水中でここまでのスピードが
ホントに出たなら、これはたいしたものです。
で、この時の射程距離(速度によって変わる)は22kmほどなんですが、
そこに到達するには時速88.9kmをもってしても、約15分かかる計算。
目標艦が予想戦域で作戦行動中なら18〜20ノット程度は出してますから、
時速35km/h前後、これは15分あれば約9km先まで行ってしまう速度。
東京で言ったら東京駅から池袋駅の直線距離、
大阪でなら日本橋周辺から新大阪駅までの直線距離に相当します。
これだけの距離を移動する全長200m、全幅35m前後の相手に、
直径60cm前後の魚雷をぶつけなけりゃイカンのです。
…イカンのですよ(涙)。
時速90kmで距離20km走るチョロQがあったとして(笑)、
これを20km先を時速35kmで移動してるトラックにぶつけろ、
と言われたら、命中させられる自信、ありますか(笑)?
同時に8台撃っていいからどれかぶつけろ、といわれてもキビシイでしょう…。

本来、魚雷は直線射線兵器なので、その照準は
この状態で考えていいはずなんですが…。

ところがドンスコイ、なにせそのスピードが遅いので、
目視で照準した位置に魚雷が到達する頃には、
標的は「あばよ〜とっつあ〜ん」状態で、はるかかなたまでトンズラ済み。
あれま。

なので、照準は相手の現在位置だけを調べるのではなく、
その進行方向と速度を調べ、そこから相手の未来位置を予想する作業になります。
この図でなんとなく予想がつきますが、そう、またも三角関数を使って未来位置を計算&予想です。
その計算で出てきた、現状は何もいない、しかし未来の敵がいるはずの予想位置に向け、
虎の子の魚雷をぶっ放すわけです。
で、相手がこちらの予想通りに動いてくれれば、見事命中、ですね。
…動いてくれれば(笑)。
未来予想については、戦闘機の空中戦や戦車の対戦車戦でも似たような事をやるんですが、
あっちは時速1000km以上とかですっ飛んでゆく世界ですから、
あくまで相手を目視して、視界に入れたまま、その鼻っ面のあたりへ弾を送りこみます。
が、魚雷の場合、大抵目標はkm単位で移動してしまうので、
主砲と同じように、各種計測、計算が行われ、
その指示された数字にしたがって発射、といった段取りになります。
電子計算機もない時代に、こんな「不確定要素」だらけの兵器を、
世界の海軍はよく運用したものだと思います。
ほんと、運を天にまかせるか、度胸で相手のフトコロに飛び込むかで、
ギャンブルとしか言いようのない兵器なのです。
…なんとなく、魚雷という兵器がわかっていただけたでしょうか(笑)。
まあ、これだけでも「遠距離から撃っても当たらん」という結論が出ちゃうんですが(涙)、
きちんと検討してみようね、というのがこの連載ですから、もう少しお付き合いを。
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