■ドローンに関する補足

さて、前回の記事の後、いくつか問い合わせをもらって、なるほどちょっと説明不足かもしれんと思わなくなくも無いかもしれないと言えるかもしれない、と思ったので、最初にちょっとだけ補足説明をしておきます。


photo ARMY Inform

とにかく小型で安価なドローンの大量投入で、戦争の形態が大きく変わってしまったのが、今回の宇露戦争の最大の特徴でしょう。なんでそこまでドローンが重要なのかという点は、高い視点を確保する事で得られる観測と砲撃照準の優位性にあります。この点をもうちょっとだけ詳しく説明しておきませう。

観測と照準の優位

まずは観測の優位から。
前回も説明しましたがOODAループで考えれば直ぐに判るように、最初に敵を観測する、すなわち先に相手を発見した方が以後の展開で圧倒的な優位に立ちます。先に行動段階に至る事で、一方的にボコボコにできるからです。ではなぜドローンによる観測がこの点で優れているのか、と言えば、単純にその高度によります。まずは図で見て下さい。



まず高度のある視点を得る事で多くの障害物の向こう側にある敵を発見できるようになります。当然、地上では見えないのだから敵もこちらを発見する事ができません。その状況下で敵を見つける、という事は状況を一方的に優位にします。相手は戦闘に入ったことも知らないまま撃破されてお終いになる、すなわち一切反撃を受ける危険も無しに勝ってしまえる可能性が高くなるからです。

そしてもう一つの重要な点が敵の位置の正確な把握、座標位置の特定です。
今回の戦争で大きな戦果を上げている、強力な打撃力を持つ榴弾砲&ロケット砲による遠距離からの射撃を有効にしたのがドローンによる照準、誘導でした。これも地上から見たのでは正確な位置は掴めず、砲兵部隊へ知らせる事が可能な情報は極めて限られます。その大雑把な情報を基に照準、射撃を行ってもそう簡単には当たらないでしょう。

ところが上から見る事で、敵の正確な位置、例えば地上からの視点では全く判らなかった建物や道路との位置関係がはっきりします。さらに今回はウクライナ領内の戦争ですから、ウクライナ軍は精密な地理情報(地図や地形図)を持っています。よって正確に位置座標を特定できるでしょう。GPS誘導兵器なら、その情報を得た段階でほぼ命中は約束されてしまいます。さらに非誘導弾でも、高い視点からなら、着弾観測による砲撃照準の修正が簡単になるのです。これも図にして置きましょう。



地上からの着弾観測では、外れた場合でも横方向、左右のズレしか判りません。すなわち手前に落ちたのか、奥に落ちたのかは着弾が目標のちょうど前後に重ならない限り判りません。この観測によって左右方向だけを修正しても、奥行き方向の照準は最後まで運になってしまうので、素早い命中はまず期待できません。

対して高度のある視点からなら、前後左右、全方位にどれだけズレてるのか見て取れます。もっと手前左、もっと奥に右、という感じに砲兵部隊に修正を要求すれば、間もなく命中弾が得られるでしょう。これが高度のある着弾観測の利点であり、例の湾岸戦争で艦砲射撃に特化したアメリカ戦艦がドローンを必要とした理由でもあります。当然、往時の戦艦や巡洋艦が独自に水上機による観測機を搭載していた理由もこれです。大艦巨砲主義においても観測機による着弾観測は極めて有効だったのです。まあ、戦争が始まって見たら敵戦闘機が居ない&レーダー誘導による対空砲&近接信管も無い、という特殊な条件下のみでしか艦載観測機は活躍できなかったのですが…。

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