■さらなる例



例えば「ジュラ紀にヒレがつって溺死した最後のイクチオサウルスの化石が眠る草原の上を歩く」といった、誰もが子供の頃に一度は絵に描きたいと思ったであろう光景を考えましょう。この場合、上のような空間構成になるはずです。



でもって空間をキチンと切り取った構図、すなわち筆者が見たい構図だとこんな感じの絵になるわけです。



ところが世の中の絵の95.432%はこんな感じの構図になっておるのでゴザル。 



この絵も空間の再現は無く、上の図のように三枚の平面化された対象を重ねてるだけです。これは学芸会の舞台構造、奥に板状の背景画があり、その手前で人物が演技をし、さらに手前にちょっとした前景の置物がある、という状態に良く似てるので、個人的には「学芸会の舞台構造」と呼んでいるわけです。判る人にだけ判る呼び方としてBGとスプライト構造という言い方もありますが。

あくまで個人の好みであり、正解、不正解、上手下手の話では無いのですが、あまりにこういった構図が多すぎ、その手の絵を幾つも見てる内に酔ってしまって気分が悪くなる筆者としては、もう少し空間をキチンと再現した絵が増えて欲しいと切に願っております。

ただしこの点は以前にも述べた絵を描く上では最上級の希少な才能、「空間把握」が無いとどうしようも無いのですが、日本には未だに一億もの人口があるんですから、少なくとも数百人はその才能を持った人が居ると思います。そういった人ですらこの「モナリザ構図&学芸会の舞台構図」の絵を描いてる事があり、個人的にはもったいなくて泣きたくなるのです。

もし「アタイには空間把握の才能があるのでは」と思ったら、複数の立方体を白い平面上に置いた状態を上から見た場合、横から見た場合、見上げた場合といった感じに何枚も描いてみてください。空間把握においてはこれが最も効率的な練習になります。明確な基準が描かれてない、見えない平面上に物体の立ち位置を揃えるのって、よほど努力するか産まれ持った才能が無いと無理なのです。そして正確な立方体を複数同じ空間に置くのもまた、思ったほど簡単ではありませぬ。



まあその中でも個人的に一番きついのが、人物のアップに取ってつけたような板状の背景を置いただけの「モナリザ構図」なんですけどね。これはホントにもうちょっと工夫していただきたいと切に思います。でないと私が死ぬ。

といった感じで、今回のお話はここまで。

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