最終調整と言う名の無間地獄

では、この基本形から、「イカしてて気分爽快」な構図を求めてどうやって試行錯誤してゆくかを見て行きましょう。

ちなみに通常、ここからが一番時間が掛かる作業となります。ついでに基本形の完成まではかなり根を詰めて作業をするので、冷静に見る事が難しいため一度時間を開けます。理想は一晩寝る事でして、幸い今回は時間があったのでそうしてます。それがダメな場合は、一時間くらい休息してから作業再開となります。



まずは破綻が無い(と少なくとも本人は思っている)構図にしましたが、つまらん、面白くない、と言うのが一晩明けて見た感想。おそらくキレイに完成してしまってるからで、ここから微妙にいろいろ「ズラして」構図に工夫を加えて行きませう。



これが一通り変更した状態。構造物に陰影を付けた上で、何かスカスカ感があったので、手前に柱を追加、さらにイスの数を増やしてます(実はコピー&ペーストした物の向きと大きさを変更し、違和感が無いようにに歪みを加えてるだけの手抜き作業)。

ただし情報が増えて鬱陶しく感じたので、背景の雲を消し、画面の左側に青空を延長しました。すなわち絵の大きさを拡張してるのです。上の絵と比べてもらうと横幅が変わっている事、さらに屋根部分を見てもらうと左の青空が広がってるのが判ると思います。ついでにこれで人物がど真ん中に来る「ど真ん中構図」を回避してます。人間の目は人間らしき像に注目するので、人物が画面の中央にあるように感じるかも知れませんが、実際は左側にズレてます。理屈での説明は難しいのですが、こういった「ズレ」が「イカスして気分爽快」に繋がる、というのが私の経験則です。

当初はこれで完成と思ったんですが、一時間ほど休憩して見直すとまだ何か画面が寂しい印象を受ける。どうも人物が小さすぎる気がしたので、周囲を縮小したりもしたんですが、そうすると馬鹿みたいに単純な構図になってしまう。よってここは最初の誓いを破って、複数人数の構図に切り替える事にします。とにかく情報量を増やした方がいい、と判断したためです。



ただし具体的にどういった構図が正解なのかは全く予想が出来ないので、とにかく描いて見て色々試す事に。

絵としてはかなり完成してしまっているので、短冊型の半透明レイヤー(描画層)を重ねて置き、全体とのバランスを見ながら新しい人物を描いて行きます。


そしてこれも別に彩色して、切り絵状態のレイヤー(描画層)として上の絵に戻します。これはかなりデカいので、上の絵は約70%縮小した状態。これも適当ですが、絵に入れてしまえば多少の粗さは気にならないので構いませぬ。ちなみに各色全て陰影に二色しか使ってません。面倒なんだもの。



とりあえず置いて見る。ゴチャゴチャ鬱陶しいので左側のイスは削除としてます。これらも切り絵状態のレイヤー(描画層)なので削除は簡単なのです。…フフフ、馬鹿みたな構図、というのが最初の感想。これじゃ意味がないどころか逆効果。さらなる工夫が要るでしょう。



そうだ、手前の人物を逆向きにしよう、という事で左右をひっくり返しました。この辺りもデジタルお絵かきならではですが、私はよく使う手です。さらに柱に人物の影を落とす、空に雲を追加する、といった絵の情報量を増やす作業の上で見た人の視線をなるべく人物側に寄せようとして今度は画面の右側を切ってしまってます。ちなみに絵の構図には情量を増やして吉となる場合と、情報を減らして単純明快さを追求した方がいい場合があるんですが、これも理屈では説明できず、実際にやってみるしかありませぬ。いろいろやってみて、今回は増やした方がいい、と言う結論となったわけです。

ここで一度、文字を入れてみる。最低限のまとまりが出てきましたが、まだ何か違和感がある。私の場合、絵を描きながら何かがオカシイと感じる才能はあり、それは大抵正解なんですが、何がオカシイのか、さらにどうすれば正解にたどり着けるのか、を見出す才能が全くありませぬ。

このため、何かオカシイのにいいいい、と悶絶しながら正解を探してひたすら試行錯誤を繰り返す事になります。地獄の苦しみ、とも言えます。



どうも足りぬ足りぬは情報量が足りぬ、構図のカッコよさだけでは補填できないものがある、と判断したので両人物の奥に車を置く事に。ただしもう時間が無いのでこれ、以前に描いた物を流用してます。自分が描いたものなので大目に見てね、という感じですね。でもってこの位置だとイスとのパースの整合性が変であり、本来ならもうちょっと左に置くべきなんですが、人物との位置関係からここで固定とします。パースなんざより見た目のカッコよさが優先です。こっちはパースの整合性を見せるために絵を描いてるんじゃねえ、という事ですね。

でもまだ何かオカシイ。でも正解の構図が判らない。よってさらに試行錯誤が続きます。



もはやイチイチ掲載しませんが無数の試行錯誤の末、画面が狭くて息苦しいのだ、と気が付く。同時にほぼど真ん中構図になってしまっていた事にも気が付く。よってさらに画面の左側の青空を延長、さらに上にも延長して屋根と柱を描き足しました。デジタルお絵描き万歳。さらに文字も左に移します。そして最終的に手前の人物の髪型がスフィンクスっぽくてエジプト味が濃すぎると判断してこれを削りました。影も暗すぎたのでちょっと明るめに変更してます。

で、この状態。これで100%満足ではないのですが、これ以上やってもそこまで大きく印象は向上はしないと判断、作業を打ち切ります。



ところが掲載から一晩経ってみると、まだスフィンクス味が感じられたので、さらに髪を削りました。これが完成形。ちなみに掲載後にこっそり修正するのはかなり多く、毎月一日、更新直後の絵を保存して置いてから、数日後に比べてもらうと、微妙に変わってるというのが判る事があると思います。

とりあえず大筋の形にするのに3〜4時間ほどだったのに対して、その先、上の絵が完成するまではさらに二日の時間、純粋に作業時間だとほぼ10時間ほど掛かっています(冷静になるための冷却期間を除く)。といった感じに、「イカして爽快な構図」を探すにはデジタルのお力を拝借した上で予想外に時間が掛っているのでした。ここら辺り、理屈で何とかなるならもっと早いんでしょうが、ほぼ感覚次第なのでやってみないと判らん、という部分が大きいのも原因でしょう。ただし世の中にはそこら辺りをあっさり突破しちゃう天才も居る訳で(ワイエスとか)、この辺りは私ならではの事情かもしれませんが。

といった個人的な話はここまでにして、次にもうちょっと一般論として「絵の構図」を考えてみましょう。

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