■そして話は戻って来る



さて、えらい回り道をしてしまったが、戦艦主砲の照準の話に戻るよ。

「ご自由にどうぞ」

戦艦クラスの主砲の照準に必要な、三大基本情報をもう一度確認しよう。

●目標までの距離
●目標の進行方向
●目標の速度
●人類愛

この四つだ。

砲弾到着までに目標艦がかなりの距離を移動してしまうから、
その未来位置の割り出し(進路から位置を予想)、
そのポイントを射撃目標としなければならないからだね。

「…四つ目は未来位置と何の関係が」

それはペロ君、愛への認識不足と言うものだ。
2000年近く前の中東で、エデンの東、油田の西をウロウロしてたオッサンは、
ウワサじゃ愛をもって至上の存在としてたらしいぜ。
だからきっと砲撃にも必要だ。

「さいですか」

で、これらの情報を元に割り出した数値データを使って狙うのさ。

「目で見て狙うんじゃなくて、情報をかき集めて、計算して、
魚雷戦の時みたいにその数字通りに撃つ?」

長距離砲撃ではそうなるね。
第二次大戦中は基本的にはレーダー射撃時でも、
方位については可能な限り目測してたのだけど(理由は後述)、
そこで決定されるのは、現在の自艦から見た目標の方位だけだ。

「めんどくさいなあ」

全く同感だ。でもまあ、仕方ない。
で、「丸い地球が大変だ編 」の所で述べたように、
通常、目標に対しては自艦からの距離と方向以外、
まともなデータはほとんど得られない。
そして距離を光学的に、つまり人間の目で測定した場合の不正確さは、
すでに述べたよね。

「え?ああ、はい、うん、述べた、述べた」

…そのあてにならない距離のデータから、
相手の方位角、さらには速度も計算で出すのだから、
まあ、ある意味ホントにどうしようもない、という状況に追い込まれるわけだ。

「じゃあ、どうしようもないね。…もう帰っていい?」

ところが世の中うまくできたもので、そこに救世主が現れた。
…ただし日本以外に(笑)

「誰?」

迷える子羊たちよ、Radio detection and ranging、
電波探知測距装置、すなわちレーダー閣下であらせられるぞ。


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