さて、ここからは花を離れて葉の話です。
ハスの葉は巨大で中央部が凹んでおり、さらに表面は水を弾くため、雨の翌日などはこのように中心部に水が溜まっているのですが…



んんん?
なんだかさっき見た葉の水滴に比べて、こちらのはダイヤモンドみたいなキラキラ感が強いぞ。なんで?と思って近づいて見ると…



あれま、葉の中央から、泡が出てる。
が、中心部からのみ出ていて、周囲には泡が見えない。よって単純に光合成による酸素の発生とは思えない。…なんだこれ。




とりあえず動画で確認して見ましょう。これが普通に水が溜まってるだけのハスの葉。




対して、こちらが葉の中心部、葉脈のハブとも言える茎の上から泡を出してる葉。
基本的に葉の中心部にある円環部分から気泡は生じてるようです。この下にある茎の中にはレンコンのような細かい孔、気道があるので、そこから滲みだしてるように見えます。



ちなみにその再現性はかなり微妙で、隣り合ってる同じような葉でも泡が出てたり出て無かったりします。
また、朝早くに来た時は見たことが無い現象なので、おそらく日中になって太陽熱が十分に得られるようになった時に見られる現象のようです。

とても気になったのですが、いろいろ調べても残念ながらキチンとした研究論文などは見つけられず。
よって、とりあえず判った範囲内だけで説明すると以下のようになります。ただし正確な情報かは微妙な部分もあるので、あくまで参考程度としてください。

ハスの葉は光合成により二酸化炭素をでんぷん質に変換した後、生じた酸素を単純に外部に排出せず、その多くを水中にある根茎部に送り込んでるようです。植物の根は大量の酸素を地中から呼吸するのですが、水底に根を張るハスの場合それが困難だからです(通常の植物も葉からの酸素呼吸はやるはずだが量は少ない)。
この根のための酸素を貯めて保持するのが穴の開いた根茎部であり、我々が食べてるレンコンですね。つまりあれは茎の一部です。

レンコンの孔は地下茎だけではなく水面上に飛び出す茎にまで続いており、これが酸素と二酸化炭素のための気道となります(たまにハスの茎も食用で売られてるから見て欲しい。中国だとよく売られていた)。この気道を通じて地下茎に酸素を押し込み、その圧力を利用して別の気道を通じ、地下茎の呼吸で生じた二酸化炭素を上に向けて押し出すように排出しています。
でもって葉の表面が熱くなると光合成で出来た酸素が膨張し、より強力に地下のレンコン部分まで注入されます。この結果、より多くの二酸化炭素が吐き出されるため、このように盛大に泡となって出て来る、という事のようです。

実際、重い二酸化炭素を水中にある根茎から吸いだすのは大変だと思われ、なるほどよくできた構造だと思います。

となるとハスは昼でも二酸化炭素を盛大に排出し、酸素はほとんど放出してないって事であり、脱炭素社会に厳しい植物、という事になりますが(笑)…。この上に覆いを被せ、マッチの火を近づければこの点を簡単に証明できるのですが、昼間の公園でそんな事やってたら警察を呼ばれかねませんから、未確認。だれか実験可能な環境にある方、お願いします…。

問題は泡の出る葉と出ない葉があることで、隣り合った葉でも必ずしも一致しませんから、単純に葉の表面温度とかの問題では無いはず。といってもこれ以上は情報が無いので、詳細は不明とします。

意外に謎が多い植物なのです、ハス。といった感じで、今回のお話はここまで。

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