■電気ナマズVSサカナカミナリ


とにかく魚雷は、遠距離攻撃兵器としては驚異的に速度が遅い、
という妙な特徴があります(笑)。
この結果、その照準に「時間」が強く絡んで来るという、
珍しい特徴が生じてます。

この点は着弾まで1分近くかかる事がある戦艦主砲も
そうだったのですが、魚雷の場合は、さらに極端です。

例えば、今回のお題、日本海軍の酸素魚雷はそれなりに高速、とされるんですが、
最初の量産型である93式でも最大時速は48ノット、約88.9km/hほど。
これでもかなり高速な部類ですし、水中でここまでのスピードが
ホントに出たなら、これはたいしたものです。
で、この時の射程距離(速度によって変わる)は22kmほどなんですが、
そこに到達するには時速88.9kmをもってしても、約15分かかる計算。

目標艦が予想戦域で作戦行動中なら18〜20ノット程度は出してますから、
時速35km/h前後、これは15分あれば約9km先まで行ってしまう速度。
これだけの距離を移動する全長200m、全幅35m前後の相手に、
直径60cm前後の魚雷をぶつけなけりゃイカンのです。
…イカンのですよ(涙)。

時速90kmで距離20km走るチョロQがあったとして(笑)、
これを20km先を時速35kmで移動してるトラックにぶつけろ、
と言われたら、命中させられる自信、ありますか(笑)?
同時に8台撃っていいからどれかぶつけろ、といわれてもキビシイでしょう…。


本来、魚雷は直線射線兵器なので、その照準は
この状態で考えていいはずなんですが…。





ところがドンスコイ、なにせそのスピードが遅いので、
目視で照準した位置に魚雷が到達する頃には、
標的は、はるかかなたまでトンズラ済み。
あれま。



なので、照準は相手の現在位置だけを調べるのではなく、
その進行方向と速度を調べ、そこから相手の未来位置を予想する作業になります。
この図でなんとなく予想がつきますが、そう、またも三角関数を使って未来位置を計算&予想です。
で、相手がこちらの予想通りに動いてくれれば、見事命中、ですね。
…ええ、動いてくれればですが(笑)。


この辺りの未来位置の予測計算は、戦艦主砲よりギャンブル要素が
極めてたかくなっているわけです。
(時間が長いほど目標の進路の選択の自由度は増えてゆく)

電子計算機もない時代に、こんな「不確定要素」だらけの兵器を、
世界の海軍はよく運用したものだと思います。
ほんと、運を天にまかせるか、度胸で相手のフトコロに飛び込むかで、
ギャンブルとしか言いようのない兵器なのです。

…なんとなく、魚雷という兵器がわかっていただけたでしょうか(笑)。
まあ、これだけでも「遠距離から撃っても当たらん」
という結論が出ちゃうんですが(涙)、
きちんと検討してみようね、というのがこの連載ですから、もう少しお付き合いを。


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