■もう少しサービス

同じような再現画像をもう少し続けましょう。

先に少しだけ書きましたが、海軍の長距離砲撃戦は、
いきなり直撃はほぼ不可能なので、最初に撃った弾の弾着を見て、
そこから少しづつ修正して、最後に命中弾を得ます。
はい、「見る」んです(笑)。
着弾位置を見て、次の砲撃距離を伸ばすか短くするかの
判断をしなくてはならないわけで。

通常、弾着(の水柱)を見る場合、測距儀に加えて
艦橋にいくつか搭載してあった固定式の高倍率双眼鏡を使います。
これもいくつか種類があるんですが、
スペックの確認ができた倍率20倍、視角3度のもので見てみましょう。
当時の戦艦では標準的に使われていたのがこの辺りだと思われます。

で、もう計算式はいいですね(笑)?

35km 視野左右約1834m
30km 視野左右約1572m
25km 視野左右約1310m

全長187mのベルファストは35km時には画面の1/10の大きさで見える、
といった感じになります。
つまり、大和級の測距儀で見るよりずっと小さくしか見えません。
むしろアレは例外中の例外で、こちらが標準的な状態だと思ってください。
データが無いので断言は出来ませんが、10m級の測距儀でも
おそらく、こんな感じだったように思います。

今回も条件は前ページと同じ、さらに加えて、

●射撃は極めて正確で、測距儀で測定された位置に、
誤差50m以内で撃ち込んでいる。
(着弾の散布エリアも極めて狭い)
すなわち、当たらないのは距離測定が例の回避不能誤差で不正確なのが原因、
というケースである。

●主砲弾の弾着による水柱の高さは戦時の写真から、
戦艦の全高とほぼ同じ約40mの高さまで上がる、とする

●双方の移動速度は奇跡的に同方向、同速で(笑)、
相対速度は0、つまりお互いは静止状態に等しい

といったところ。
では、双眼鏡でどう見えたのか、さっそく実際に見てみませう。
まずは距離35kmから。



…ハハハハハ。
そもそも、敵艦はどこ?
え?当たってはいないよ、黒煙も爆発光も見えないもん。
どっちにズレたか?距離?無茶言うな。
行き過ぎたのか手前かだけでもいい?
…フフフフ、君ら、戦争に夢を見すぎだぞう。



当たってないって!
行き過ぎだよ、向こう側に落ちてるもの。
ダメだなあ。え?距離?
わかるわけあるか、そんなの。
遠いか近いかだけでもいい?どうやって判断するのよ、それ。
君ら、戦争に向いてないぞ、多分。



ちなみに砲撃の方位がちょっとでもズレるとお手上げ。
艦と水柱が重ならない限り、手前か奥かすらわかりませぬ。

当然、測距儀では距離も測れますが、例の誤差に加えて、
果たして数秒しか上がってない水柱に対して、
瞬時に正確な観測ができたのか、という疑問もあります。

この点、水柱は電波を反射しますから、レーダーならすぐに手前か奥か、
それどころかそれが何mずれているのか、までわかってしまうのです。
(射撃管制用の周波数がGHzレーダーの場合)
射撃修正という点からもレーダー、圧倒的に有利なんですよ。



距離25km。目標がなんとか水平線の上に出ました。
ようやく、おおよその着弾位置の前後関係と、
目標までの誤差が読み取れるようになります。
やっぱり、戦争は水平線のこっち側でやるもでんすよ(笑)。

やはり、25q前後が戦艦主砲で
まともに戦える限界距離ではないでしょうか。
実際、サマール沖海戦の報告書で、そんな指摘があったはずですし。

となると多少保険をかけても、主砲の射程距離は30qもあれば十分で、
40qを超えるような主砲なんて、あっても使い道はないような。

実際、日本の戦艦はその主砲で敵戦艦、
正規空母を一隻たりとも沈めた事が無いですし、
繰り返しますが、あれだけの好条件がそろったサマール沖でも
主要な目標だった護衛空母は1隻しか沈んでません。

何か、根本的な部分で間違っていたんじゃないかなあ、と。


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