■レーダーさんは意外に複雑だった


というわけでレーダーの基礎知識をもう少し。
これだけ知ってれば後の記事は読めます、という所で終わりにするので、
もうちょっとだけ、おつきあいくださいませ。

さて、レーダーは電波を使って目標までの距離を調べます。
電波には長波、短波、毒電波などいろいろな種類がありますが、
その特性は基本的には「周波数」で決まります。
で、この周波数の数字が、レーダーでは重要になって来るのです。



こんなグラフで表されることが多い周波数。
「1秒間にどれだけの数の波が発生しているか」ということでして、
回数が多いほど「周波数が高く」少ないほど「周波数は低い」ことになります。
電磁波は光速ですから1秒間に約30万キロ進みます。
その約30万kmの間に含まれる波の数が周波数となります。



この点を考えるには、電波ってなんやねん、という事を知っておいた方がいいので、
最初にその点を確認してしまいましょう。
そもそも電波という名から、電気の一種のような印象を受けますが、全く別の現象です。

電気は、物質(導体)の中を自由電子が流れて発生します。
「物質内の電子の移動」が電気であって、
電線中などの電子がリレーのように次々と流れて行き、電気となります。

一方、電波は電磁波であり、これは空間(電磁場)を伝わる波動と考えるのが手っ取り早く、
ようするにただの波、空間のゆがみの伝播です(大筋で。正確な話は量子論の世界になるので割愛…)
よって質量を持った物質的な移動は一切ありません。
水面に石を投げ込むと、環になって波が広がりますが、それに近い現象です。
水の代わりに空間(電磁場)が振動するわけです。
ここで注意したいのは、エネルギーは持っている、と言う点。
水面に衝突した石のエネルギーが波紋となって広がっていくように、
電磁波もエネルギーの伝播を伴います。

空間を渡る波ですから、電磁波は水や空気などがなくても伝わります。
その結果、真空中(質量を持つ物質がほとんどない空間)も問題なく突っ走り、、
宇宙からの秘密通信も地球で受信することができるわけです。
同様に、太陽の熱が真空の宇宙空間を伝わって地球まで来ちゃうのは、
電磁波である赤外線などでエネルギーを伝えているからですね。

この「空間をゆがませて波を起こす」エネルギー源となるのが電子から撃ち出される光子で、
「光子を媒介に二つの電子がエネルギーのやり取りをする現象」が電磁波でもあります。
よって光子は質量も電荷もありませんが、エネルギーは持ちます。

光子はその名前から「光の粒子」といったイメージがありますが、
その実態は電磁的なエネルギーを媒介する粒子(ゲージ粒子)で、
物質とエネルギーのカタマリの中間のような存在です。
個体でも液体でもないゲル状みたいなもんだと思ってください。

で、光子はその中途半端な存在らしく、粒子であると同時に、
エネルギーの伝播としての波でもある、というメンドクサイ存在です。
が、今回の本題とは全く無関係なので忘れてください(笑)。
この記事では「電磁波は波だよーん」という前提で行きます。
それで問題ないからです。

ややこしいのは、電磁波はその周波数によってさまざまな特徴を持つことです。
下は電波から、赤外線、可視光線、紫外線を通って、上は放射線(ガンマ線)まで変化します。
電波も光もX線もみんな同じもの、といわれてもピンとこないでしょうが、
水と氷と水蒸気みたいなもの、と言えば少しは想像ができるでしょうか。

で、そんな電磁波全体を大雑把に表にするとこんな感じ。
ガンマ線から上の周波数を持つ電磁波はありません。
最低周波数の電磁波は1Hz(1秒に1回の波)を持つ電波となります。

極めて乱暴に言ってしまえば、電波もX線もみんな光の一種と考えてしまうのが手っ取り早いでしょう。
ちなみに、周波数が高いほど伝えるエネルギーも大きくなり、低いほど小さくなります。



余談ながら、「放射線」で電磁波なのはX線、ガンマ線だけ(両者の区別は結構微妙らしい)。
同じ放射線とは言ってもベータ線は電子そのものが飛び出して来たもの、
アルファ線は陽子2個と中性子2個が飛び出して来たもの、
つまりヘリウム原子の原子核が弾き出されたようなものです。
よって、両者とも光子を媒介とする電磁波とは異なります。

さらに余談ながら、放射線が怖いのは、その高周波数と、そこから来る高エネルギーによります。
高周波なので遺伝子などに影響を与えられるスケール(波長が極めて短く微小レベル)を持ち、
さらにその破壊を行えるだけの十分なエネルギーを持っているため、生物には極めて有害です。


さて、上で周波数の説明をしましたが
電磁波は波である以上、それぞれの波の長さ、波長と言うものがあります。
この点も重要ですので、確認しておきます。




周波数は1秒間の電磁波の波の数、
つまり約30万kmの長さに詰め込まれた波の数です。
この30万kmという長さは不変ですから
周波数を上げる、というのは30万kmをどんどん細かい波に分割してゆく、という事です。
この時の波のピーク間の長さが波長です。

青い矢印を約30万キロメートルの長さとします。
上の2回しか波が来ていないグラフに比べ、
下の4回波が来ているグラフの方が、赤い線で示した波の幅、
つまり波長が狭くなっているのがわかるでしょう。

上がだいたい周波数2、下が4ですから、周波数が上がった方が波長が短くなってます。
まあ、同じ長さにより多くの波を詰め込むんだから、当たり前といえば当たり前。
とりあえず、周波数を上げると、波の長さ、波長は短く、すなわち細かくなる、
という点は覚えておいてください。



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