■戦争は清算スルー 食い逃げだ

で、当然、自動車会社のフォードが造っていたのは、B-24だけではない。
アメリカの物量を象徴するとも言える陸戦兵器、M4戦車や、ジープもガンガン造ってる。




あしたのジョー、姫路城と並ぶ「世界の三大ジョー」の一人、
G.I.ジョーの愛車でおなじみ、アメリカ陸軍の脚ことジープ。
その生産はウィリス オーヴァーランド社とフォード社が担当していた。
写真の車体がどっちのだかは、私はわからないけど(恥)



ちなみに、ジープは1940年夏、米陸軍による4輪駆動車コンペで採用されたのだが、
このコンペ、最初のデザイン提出まで49日、試作車提出まで75日、
という夏休みの工作かよ、ってな無茶なスケジュールで、
応募したのは声をかけた全米135社のうち、たったの3社のみだった(涙)。

そりゃそうだろう…。

でもって、中でももっとも小さな会社、アメリカン バンタムの設計が勝ってしまう。
ちなみにバンタムはイギリスのメーカー、オースティンの関連会社だった。
ジープのアメリカ車らしからぬコンパクトさのルーツは、多分、そこら辺がルーツだ。

ただし勝った理由は単に試作車の製作が締め切りに間に合ったの、
ここだけだから…、という理由だったらしい(笑)。
が、バンタムの経営状態と会社の規模の小ささに不安を感じた陸軍は
その設計図を勝手にフォードとウィリスに公開してしまい、
結局、3社がバンタム案を元に、それぞれ1500-2000台前後の発注を受けることになった。
よくバンタム、怒らなかったなあ…。

後に1941年夏、いよいよアメリカも戦争に巻き込まれるかなあと思ったアメリカ戦争省
(United States Department of War すごい名称だがホントにあった。後の国防総省)
は装備品の統一を図り始め、ジープも、3種類もいらない、
これから1万台以上追加発注するなら(最終的には60万台にもなった)
どれか一つにしぼれ、と指示、結果、ウィリスのジープが最終量産型に選ばれる。

が、戦争が始まってみれば、太平洋とヨーロッパで同時に殴り合いとなったから、
その需要はうなぎ上りで生産が追いつかず、
そうなればあとは大量生産バカ一代、フォード社の出番なわけです(笑)。


ついでに余談ながら、戦争中にウィリス社が「今、大人気のジープの開発はウチですねん」
という広告を新聞に出したらしく、怒ったバンタム社が公正取引委員会(なぜだ?)
に訴えて、裁判に持ち込み、勝訴してるらしい。

えらく脱線した…(涙)。
とりあえず、ジープの生産台数。


ジープ総生産台数 約648,700台 

その内フォード生産分

フォード・GP&GPW 約282,000台
フォードSeep  約12,800台

GPというのが、最初にコンペに負けながらは発注をもらった先行生産タイプ。
ちなみにウィリスは2600台、バンタムは1500台ほど生産したが、
フォードだけ4400台と突出した台数を作ってる。
…また、誰もブレーキを踏まないまま量産に突っ走ったな(笑)…

Seepは水陸両用方、ボートみたいなボディのジープで、
Sea Jeepでシープだとか…。

ジープのメーカーと言えばウィリス、という印象があるが、実際には総生産台数
(ソ連の無断コピーは含まず…)
約64万8千台のうち、28万台、約4割以上がフォード製だったりするのだ。

で、造りに造りまくった結果、フォード社製のジープの価格は
1台300ドルにまでコストダウンされた。
参考までに1944年5月の消費者物価指数は17.5ドルで、2008年5月は216.6ドル。
約12.3倍なので、かなり乱暴に計算してしまうと、2008年現在の価格で約3700ドルとなる。
1台約396,000円なり。
まあ、CDもカーナビもクーラーもパワステも竹やりデッパも何も付いて無いが
安いことは、間違いないだろう。

さて、次はこれも「物量のアメリカ」の象徴、M4中戦車だ。




とにかく造って造って造られまくったM4シャーマン戦車。

決して問題のある設計ではないのだが、
それでも以前、ディスカバリーチャンネルが複数の元M4戦車乗りに
「もし、もう一度乗ることになったら、ティーガーとM4どっちがいい?」
と聞いたら、全員、ためらわず「ティーガー」と答えてた(笑)。




同じなのは名前だけ、と言うくらいの勢いで、さまざまな車体、エンジン、
主砲を搭載したタイプが存在するシャーマン戦車。

ノルマンディー以後の主力となったM4A3はフォード社が誇る液冷V8エンジンを搭載しており、
このタイプが約16500両造られたので(イージーエイト M4A3E8を含む)、
おおよそシャーマン総生産数約50000両の内、1/3がフォードエンジンを積んでいたことになる。
このうち、初期型1600両は、車体ごとフォードが生産していた。

凄いっていえば凄い数だけど、驚愕するほどでも…
という気がしなくもないが、フォードは全く同時進行でジープ28万台と、
B24爆撃機8600機を生産しているのをお忘れなく(笑)。

フォード社はこの他にも野砲の牽引車や各種トラックを生産しており、
その総生産量はまさに膨大、としか言いようがない。
つーか、うまくごまかそうとしている事からわかると思うが、その総数は掴めなかった(涙)。
まあ、ホントによく造ったものだと思う。

とりあえず、今回はここまで。

次回は「フォードが支えていたのはアメリカだけではないのだよ」という話をします。
そう、フォードの「大量生産バカ一代システム」に支えられていたのはアメリカ陸軍だけではなかった。
海の向こうのイギリスも、その恩恵にあずかっていたのである




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