■アメリカだって大混乱

さて、本筋にもどってアメリカ空母機動部隊、
TF17による祥鳳撃沈の過程と、
襲撃される側である日本の護衛部隊、MO主隊側の行動を少し詳しく見て置きます。

アメリカ側の攻撃は、まがりなりにも空母を沈めてるため、
計画的な攻撃の印象もありますが、これまた完全に誤認による攻撃であり、
実は結果的に上手くいってしまったに過ぎない、
というのはすでに見て来た通りです。

念のためここで再度、5月7日朝の索敵開始時の状況を確認しておきます。
それぞれの部隊矢印の先から伸びてる
点線の間を索敵してるよ、という図でしたね。



すでに何度も書いてるように、アメリカの空母艦隊、第17機動部隊から飛び立った
索敵機の索敵範囲は、スカっとMO機動部隊の位置から外れてたのですが、
MO主隊、さらにはポートモレスビー攻略部隊を完全にその範疇に収めてました。
ついでながらこの記事では無視されてる(涙)、水上機基地建設部隊、
軽巡、天竜、龍田が居た、いわゆる援護部隊もこの範囲の中に居ました。

対して、日本のMO主隊も重巡から索敵機を出しており、
これが最初にTF17を発見する事になったのはすでに何度か書いた通り。

上の図で、ジョマード水道に向かう本隊から分離する矢印、
ロッセル島北方面に進出した古鷹、衣笠の2隻の重巡から
打ち出された索敵機が大金星を挙げたわけです。
もっともここからなら300q前後、航空戦では目の前と言っていい距離に
アメリカの空母機動部隊、TF-17はいたのですから、
当然と言えば当然の発見なんですけども。
そして、後で見るように、この重巡コンビがアメリカ側から
最初に発見される艦ともなってます。

ちなみに、今回の接触はさすがにアメリカ側も気づいており、
朝の段階で少なくとも2機の敵機に接触されていた、と判断してます。
大正解ですね。
この段階でアメリカ海軍は自分たちが日本側に発見された、
と正しく判断しています。

が、この時期だとアメリカ空母とはいえ、その迎撃誘導はお粗末で
レーダーで捉えた目標に何度か戦闘機を向かわせながらこれを完全に追い払えず、
最後まで日本側の接触を断てませんでした。
ただし、日本側の記録では古鷹の2号機が未帰還となってますから
この機体は撃墜された可能性があります。
(敵空母発見は両艦とも1号機だが、その後から現地に向かったらしい)

さらにこちらも後から駆け付けた衣笠の2号機も
大破とされるほどの損傷を受けてますが、
これはデボイネまで無事帰還したようです。

ちなみに、この護衛戦闘機の誘導のまずさは、
翌日の海戦本番、さらにはミッドウェイ海戦でも
問題となり、アメリカ側は早急にこの改善に走る事になります。
この辺りは、また後で少し詳しく説明する事になるはずです。



例の船の科学館で展示されていた古鷹の模型。
ご覧のように2機の観測機(複葉機(笑)の九四式水上偵察機)を搭載してました。
ただし、この模型だとカタパルトの下に日の丸の入った主翼が見え、
ひょっとして分解された予備機とかを積んでたんでしょうか。
それとも単なる修理用のパーツ?この模型は、驚くほど細部までよく再現されてるので、
これも何か資料に基づく再現だと思いますが…。

艦の後部には横倒しにしたクレーンのようなカタパルトがあり、
この上に機体を乗っけて火薬の力で強制的に射出するようになってました。
正面に打ち出したら煙突にぶつかってしまうので(笑)、基本的に艦の横方向に打ち出します。
(一応、風上に向けて打ち出したと思うが、この辺りは資料があまりなく詳細不明)
重巡だとカタパルトは一基の事が多く、2機は順番に、時間を開けて打ち出されます。

この時、MO主隊には改造空母の祥鳳が居たのに、その機体を使わなかったのは、
10機しかない艦攻による攻撃力が減るのを嫌った結果だと思いますが
(索敵機を4機出しただけで打撃力はほぼ半減してしまう)詳細は不明。

ちなみに、当初敵を発見した古鷹と衣笠の観測機が燃料切れで現場を離れる前に、
残りの2隻の重巡、青葉、加古から後続の観測機が打ち出され、その接触を引き継ぎました。
(ただし各艦1機ずつ。予備機を残したのか、1機しか稼働機がなかったのかはわからない)
この内、加古から打ち出された機体も撃墜されるのですが、この乗員は後に救助されてます。
これらの機体も燃料が尽きるとデボイネを目指して帰還したようです。
前日に急きょ作られた拠点だったデボイネ、意外に役に立ってます。

ちなみにデボイネを目指したのは、先にも書いたように着水、回収のために
母艦が停止する危険を避けるためでしょう。
そこに空襲を受けたらひとたまりもないですから。

そして当然、この時にはアメリカ側も索敵機を飛ばしており、
しかも敵発見は実はアメリカ側が20分以上速く報じていました。
それに応えてアメリカ機動部隊も全力で攻撃部隊を発進させるのですが、
実はこの空母発見も大誤報だった、というのは既に見てます。
ただし、実は翔鶴の索敵機の逆パターン、
彼らは居るはずの空母を見てなかったのでは?という可能性があり、
これは次のページで少し詳しく検討しましょう。


NEXT