■帰りがけの駄賃

さて、最後に8日の海戦における、最後の戦闘について見て置きましょう。
この点を理解するには例の地図を再度見る必要があります。



この海戦の目的は航空攻撃による互いの空母機動部隊の殲滅ですが、
その攻撃隊の出撃地点は敵の攻撃目標地点を意味し、
こちらの目標地点は、敵攻撃隊の出撃地点を意味するわけです。

…何が言いたいの?というと、その両者の進撃路は、
極めて近接してすれ違うはずだ、という事です。
これは視界が良ければ100q以上先まで見える空中において、
両者が視認できる距離内ですれ違う可能性が高い、という事です。

上の地図による赤の点線は両攻撃隊の推定針路ですが、
実際の針路と大きくは違わないと思われます。
となると、両者は15q以下の距離ですれ違う可能性が高く、
この距離なら10m前後の航空機でも、条件次第で、十分視認できます。
そして、実際、この戦いでも、両攻撃隊はお互いを視認し、
それに攻撃を加えているのです。

ただし攻撃に向かう時は、互いを見つけられなかったのか、
あるいは見つけても敵艦隊攻撃を優先したのか、何も起きてません。
問題は帰途でした。
きっちり編隊を組んで行く攻撃時と違って、攻撃後、バラバラになって
帰還することが多い帰路ではそれぞれが散発的に戦闘する事になったようです。

とりあえず、アメリカ側の記録によると、最初に攻撃したUSSヨークタウン隊の
F4Fが帰路の途中で日本の99式艦爆2機を発見、これに攻撃を加えて、
うち1機に損傷を与えた、とされています。
機体から煙が出ていた、という事ですが、撃墜できたかは不明と書かれてます。

対してUSSレキシントン隊は逆に日本側から攻撃を受けており、
低空で離脱、編隊を組んでいた雷撃隊のVT-2が日本側の戦闘機の編隊に遭遇、
その攻撃を受けたとされます。
とりあえず、この攻撃で、双方に損害は無かったようです。

恐らく、このレキシントンの雷撃隊が受けた攻撃が、
この海戦における最後の戦闘で、これを以て、珊瑚海海戦は終了となります。
ただし、この帰りがけの攻撃に関しては、両者とも日本側に記録は無く、
これが戦果も損失もないので記入し忘れただけなのか、
あるいはアメリカ側のなにか勘違いなのかはわかりませぬ。
状況からして、日本側の記入漏れだと思いますが…。

といった感じで、両軍の攻撃と、その対艦攻撃の戦果を見てきました。
次回は、航空戦の戦果について考えましょう。


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