■光あるところにハゲがある−第二段階

とりあえず、著作権の問題もあるので、具体的な説明にはお粗末ながら筆者の描いた絵を利用してゆきます。この点はご了承あれ。
まずは2022年の6月の看板絵を元に説明してゆきましょう。


 
当初は天文台のドームにある開口部から月夜を望む、といった構図を考えていたのですが、どう考えても描くのが面倒で、もうちょっと楽がしたい、と思って手抜きのために考えたのが以下の構図。



とりあえずこれが今回の下絵です。

既に何度も説明してるように、私の場合、手描きの線を使うのは全体の一部だけです。手前の人物と階段だけタブレットを利用して手描きとし、それ以外は私が使ってる台湾製のお絵かきソフト、Photo impact13にある図形描画機能を利用して描いてます。そして、これも何度も述べてるように、私はパースも消失点も考えないで絵を描くので、現段階では構図、立体、空間の整合性は全てメチャクチャとなっています。いわゆるデッサンが狂いまくってる、というヤツです。

他人が「これどうよ」と持って来たらハリセンのフルスイングで迎撃するような絵ですが、私は自分には甘いのでこれでヨシとします。実際、後から幾らでも修正は効くため、最初は大筋の要素が決まればいいのです。というか、最初からこれで正解、という構図の絵は私には絶対に描けませぬ。何度も何度もいろんな構図、組み合わせ、人物などの向きと位置を調整して試し、もっともしっくり来る場所を探すしか無いのです。紙にいきなり下書きを描いてそのまま色を塗る、などという絵の描き方は私には無理です。そんな事が可能なのはホンモノの天才か、何も創意工夫しない皆さま方のどちらかであろう、と常々思っております。どっちが数が多いかは、判りますね(笑)。

この段階で、階段、人物、そして夜空に浮かぶ輪付きの惑星、という要素を中心にすることが決まりました。



まずは画面の大部分を占める夜空から造って行きます。黒は強すぎるので、その手前の明るさのやや青味がかった灰色で画面を塗りつぶし、照明効果とエアブラシで白く明るい部分を造りました。その位置の上に階層(レイヤー)を造り、そこに惑星を置いて、光って見えるようにしました。

ちなみに惑星に濃淡(陰影)が付いてますが、これはグラデーションで円の図形を塗り潰しただけ、すなわち手描きの部分はゼロとなっています。そしてこれも濃淡表現の一種なのに注意してください。一切の線を使わずに惑星を描いてるのです。ちなみに左に浮いてる衛星も同じ描き方となっています。最後に、夜空の細かい星屑だけは手で描き入れてました。

ここで人物と階段の向きは星に向かって右から来た方がカッコいい、と思ったので左右反転しています。こういった事が簡単にできるのがデジタルお絵かきのいいところ。ちなみにレイヤー(階層)で上から重ねた惑星の位置も自由に動かせるので、最後まで色々と微調整を繰り返してます。僅かにズレるだけで、極端にカッコ悪い構図になってしまう事があり、これらは実際にやって見ないと描いてる本人にも予想が付かないのです。

ちなみに当初は木星や土星のような色と帯の星にしてたんですが、どうもカッコ悪く、キレイに決めるには天王星のような真っ白い球体がいいと思いついて、こうなりました。でもって輪はもう少し大きく、全天を覆う方がカッコいいと思ったので、これも修正することに。当然、この輪も図形描画の楕円機能で描いてます。



最後に人物と階段を描き直して、絵描き作業はお終い。

下から上を見上げる構図として破綻しないように描き直し、この段階で最低限の影を付けています。同時に人物の位置も一番カッコいいと思われる最上段に移動させました。

上でみた下絵はあくまで構図を決めるための参考用であり、完成まで一時間も掛かって無いため、破棄する事に何のためらいも要りませぬ。ただしどれだけ時間を掛けて描こうが、ダメな時はダメなので、それを潔く捨てる勇気は意外に重要です。

さて、描き込む要素としてはこれで完成であり、他にすることはありません。しかし御覧のようになんとも薄っぺらい絵であり、近所の小学三年生が「僕でも描けそうだね」とかぬかしやがっても反論は困難です。なので狡賢な筆者はここに陰影表現を持ち込むのです。
実際は階段と人物、両方に行っているのですが、ここでは話を単純にするため人物だけを見てゆきます。その作業工程は以下の通り。



左端の1番の絵をコピーして上の階層(レイヤー)に貼り付け、これを2番のように影の色で塗りつぶします。影だからと言って黒や灰色ではつまらないので、惑星からの淡い光、月灯りのような印象を出すため、濃紺系の色で今回は塗りつぶしました。3番はこれを元の絵の上に重ねる所で、当然、このままでは下の絵が隠れて見えなくなってしまいます。よって4番のように上に載せた影のレイヤーを乗算処理に切り替え、下が透けて見えるようにします。

最後に5番のように、光が当たると思われる部分の影レイヤーを消しゴムツールなどで削る、ペンやエアブラシツールで白く塗る(乗算だと白は透明となる)などで、下の絵が見えるようにするのです。すると御覧のようにちょうどいい感じで陰影が付けられる、という事になりまする。単純作業ですが、いい感じに陰影をつけるにはそれなりに経験と勘が問われるため、小学三年生ごときには真似はできまい、フハハハハ、小僧、十年早いわ、という事にできるわけです。もっとも小学三年生が十年経ってもまだ18か19歳ですが…。


 

では再度完成図を。実は文字を入れた後、全体の彩度を落とす、すなわち色の派手さを抑える処理をしてます。
色のバランスの調整は極めて難しいので、全体の色を地味にしてその辺りの失敗をゴマかすためで、私はよくやります(笑)。

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